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コラムNo.5 働き方改革

2022.08.02

コロナ禍で、薬局の運営は感染対策とともに業務遂行に苦労されたのではないだろうか。さらに、この間、診療報酬改定、薬価改定も行われ、経営的にも影響が大きく、さらには、ジェネリック医薬品の品質不正問題の影響も続いている。また、コロナ禍対応においては、かかりつけ医の機能を含め、日本における医療体制の課題も大きく取り上げられ、医療のデジタル化の必要性も大きく取り上げられてきている。

 

 一方、医療の外に目を転じてみると、社会の外出自粛とともに、企業におけるテレワークもあり、2021年には医療機関においての患者数減少、薬局においての処方箋枚数減少といった影響が出てきたわけである。

 

 ここで注目すべきは、日本社会の仕事に関する話題である。コロナ禍の影響により移動を伴わないテレワークが増加し、その結果、日本人の仕事における行動様式や生活様式に変化が起きてきたのである。

 

 美学者の伊藤亜紗氏によると、『人類は今「共に集まる」共生の場を失っている。「他人の体は生命を脅かすリスクだ」という認識は新しい生活様式を生み出した。』と語っている。併せて、『社会的動物としての根幹に関わる営為が大幅に制限されたと考えて良い』とも表現している。

 

 このような状況においては、仕事における他者との関係性構築が必要な作業、すなわち働き方を制限あるいは変更せざるを得ない。日本社会における働き方改革は、将来的な高齢化かつ少子化による人口減も相俟って、強制的にせざるを得ない現実を付きつけたわけである。

 

医療における働き方改革

 

 医療は、患者のためにある。したがい、患者にとっての最善の医療を行う必要がある。しかしながら、現在の医療は急性期よりも生活習慣病を中心とした慢性期医療とがん治療に比重が高く、医療費も同様に消費されている。加えて超高齢社会の中で、効率的で質の高い医療と高齢者介護を行うには、医療提供者側、医療提供施設側の“医療提供のあり方”も再検討すべき時期が到来しているといえる。

 

先日の業界ニュースで、四病院団体協議会が「医師のタスクシフティング・タスクシェアリング」に関した提案書を厚生労働省へ提出した記事が掲載されていた。が、これはあくまでも医師の労働時間短縮のための方策であるということ。

もちろん、地方や救命救急医療における医師不足は顕著で、医療の継続性が危ぶまられている分野ではあるわけで、薬剤師、看護師、臨床工学技士、救急救命士、麻酔業務に関して、タスクシフトにより医師の本来業務が遂行しやすい環境が生まれることは否定するわけではない。

一方で、前記のタスクシフトされる側、特に看護師不足は顕著となってきており、各職種が病院の中に潤沢に存在しているか、あるいは供給されているか、は別課題であろう。

一般社団法人 薬学教育協議会の薬系学科生の就職動向調査では、平成27年に26.9%が病院・診療所に就職したが、平成30年の調査では22.2%まで低下している。その理由は様々推測されていているものの明確ではないが、医師のタスクシフトを行うにあたり、薬学生の増加が必ずしもプラスになっているとはいえない。現に、病院に勤務している薬剤師は52,145人(厚生労働省 平成28年 医師・歯科医師・薬剤師調査)で、一施設平均3.2名である。病院の規模や診療内容により違いはあるし、タスクシフトして行うべき分野のカテゴライズは必要であろう。

当然、現場薬剤師の不断の努力は欠かせないが、病院経営陣の薬剤師採用に向けての環境整備、その他の努力も重要であることは間違いない。

 

薬剤師の働き方改革

 

 薬局薬剤師においては、国の進める「患者のためお薬局ビジョン」において、「モノからヒトへ」の政策が進められている。薬局内に閉じた窓口のみの調剤から、薬局外に出て行う在宅、そして、デジタルを利用した場所を選ばないオンラインによる調剤へと変化していく移行過程の段階だといえる。そして、2025年に予測されている薬機法改定の時期には、一包化の外部委託が遡上に上がっている。

 一包化に限らず、現場での狭義の調剤業務は、機械化が進んでいる。それらができるのは投資能力が高い薬局から進んでいっているのは自明の理である。そして、機械化は単独ではなく、デジタルで連携するシステムで構成され、より効率的でコントロールできるものである。加え、ヒトの介在を極力排し、事後の検証や評価を可能とする仕組みであることに注目すべきである。

 このように狭義の調剤は、トレーサビリティを含めた質の向上はもちろんのこと、患者サービスの向上に寄与すると言えよう。

 一方で、服薬指導やフォローアップ、在宅を含めた対人業務の重要性は、高まりはすれども軽減されることはない。むしろ、患者個々の生活環境を考慮した最適な薬物治療への支援の必要性はさらに高まり、デジタルを利用した個別最適化が行われるはずである。

 結果、薬剤師の働き方改革は、機械化とデジタル化を武器とした、対人業務の充実へと変革することではないだろうか。