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クリニックDX~オペレーション②~

2022.08.03

 クリニックDXは、「タスクシフティング」と「デジタルツールの活用」の2つの視点が必要です。この両輪がうまく組み合わさって初めて、クリニックDXは成功するのです。そこで、今回はクリニックでいま導入すべきデジタルツールおよび、その効果について解説します。

 クリニックDXにおいて、医師の業務を誰に移行することが効率的かと考えたときに、真っ先に想い浮かぶのがクリニックで最も人数が多い「受付スタッフ」です。しかしながら、いざ受付スタッフにお願いすると、「今の業務でいっぱい」「これ以上仕事を増やさないで欲しい」と言われてしまいます。そこで、受付スタッフにタスクシフトするためには、受付の余力を作り出す必要があるのです。

受付スタッフが行っている業務の中で、「デジタルツールに移管できる業務がないか」を考えてみましょう。具体的には、①受付②問診③会計(精算)④レセプト請求等の受付業務の中から、コンピュータが得意とする「定型的で単純な業務」を考えることとなります。

この検討は、クリニックの運営スタイルやデジタル化の状況によって、多少異なる部分は当然あります。例えば、電子カルテが未導入であれば、これにカルテの作成・整理やレセプト入力の業務が加わりますし、予約制であれば予約対応の業務が加わります。今回は電子カルテが導入されているケースを考えてみます。

受付業務(電話自動応答/再来受付機/オンライン資格確認)

 受付業務は、患者の受付、保険証の入力・確認、電話対応などが挙げられます。この業務は比較的、定型業務が多いため業務削減や自動化を検討しやすいと言えるでしょう。それを実現するデジタルツールとしては、「再来受付機」や「保険証リーダー」、「オンライン資格確認」、「電話自動応答システム(IVR)」などが挙げられます。最終的には、受付の無人化までが視野に入ります。

残念ながら現時点では、これらのシステムを操作するにはヒトが必要であり、システムに対応できない患者へのフォローもヒトが行う必要があります。これらのシステムが一気通貫でつながるまでは少し時間がかかりそうですし、それらのシステムを使うための患者のITリテラシーの向上も必要となります。無人化に向けては、今後のオンライン資格確認と再来受付機の連携に期待するところです。

問診業務(Web問診)

 近年、スマートフォンやクラウド技術の普及が急速に進んだこともあり、「Web問診」の導入が進んでいます。Web問診とは、従来の紙の問診票を患者が持参するスマホやタブレットを介して入力を可能にしたものです。同システムを導入することで、受付スタッフは電子カルテに問診内容を転記する作業がなくなります。また問診内容の不足を確認する作業もなくなっていきます。スマホなどの操作に不慣れな方だけを、スタッフがサポートする形になり、大幅な業務効率化が図れます。また、事前に問診票が入力されていることで、先回りして準備を行うことが可能となり、患者対応がスピードアップします。

会計・精算業務(自動精算機/キャッシュレス)

コロナ禍で非接触の観点(現金を触らない)から、自動精算機など「精算業務の効率化」がクリニックでも進んでいます。その背景には、これまで大病院を中心に導入が進められた自動精算機がクリニックからの要望を受けて、省スペース化と価格低下が進められたこと、クリニックにおいても人手不足が顕在化してきていることなどが挙げられます。

また、「キャッシュレス決済」についても、自動精算機に併せて導入が進められようとしています。これは2019年10月の消費税引き上げに合わせて、政府が「キャッシュレス還元事業」を行ったことで、世の中がキャッシュレスの流れに変わったこと、コロナ禍での感染症対策として注目が集まったことが大きく影響していると思われます。

自動精算機の導入は、患者とスタッフ間での現金のやり取りがなくなるだけでなく、クリニックの「締め作業」についても効率化が図れます。レジ内の紙幣・硬貨を数える作業やレジデータと電子カルテの日計表を突合する作業が自動化され、残業時間が大幅に減少すると効果が報告されています。

レセプト業務(レセプトチェック)

 受付スタッフは、毎月レセプト請求業務を行っています。この業務の中で特に大きな時間を割いているのが「レセプト点検」です。受付スタッフは毎月、レセプトを全件印刷してチェックを行っており、この作業に3日間以上費やしているのです。

このレセプト点検業務についても効率化を図るために、「レセプトチェック」システムが開発され導入が進んでいます。このシステムは、事前に用意されている一般的なチェック項目と、医療機関オリジナルのチェック項目を設定することができます。システムを利用することで、システムチェックではじかれたものだけチェックする形になるため、1/3程度のチェックで済むとされています。大幅な業務効率化につながります。