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薬剤師のキャリアデザイン~No.1 転職市場とキャリアデザイン

2022.08.19

薬剤師の需給予測

20214月に開催された第8回薬剤師の養成及び資質向上等に関する検討会にて、薬剤師の需給推計(案)が報告され業界をざわつかせたことは、記憶に新しいことと思います。最悪のシナリオだと2047年には最大126,000人の薬剤師が余るという予測です。ただし、このシミュレーションにはIT化・デジタル化、ネットオーダーの薬局の登場、調剤の外注化などの外部要因は加味されていません。したがって、この結果をもっと悲観的に見る必要があるかもしれません。

一方で、IT化・デジタル化の進歩は薬剤師に新しい活躍の場をもたらすかもしれません。ヘルステックや医療ITという成長産業への転職を選択する人を見かけるようになってきました。

いずれにしても日本の人口動態の変化、規制緩和、テクノロジーの進歩などによって、薬剤師を取り巻く環境は今後大きく変わっていき、それに伴って職業選択や働き方も変わっていくことは容易に想像できます。

 

8回薬剤師の養成及び資質向上等に関する検討会、薬剤師の需給推計(案)より

https://www.mhlw.go.jp/content/11121000/000772130.pdf

 

転職市場

コロナの影響もあり医療機関の受診控えから患者が減少し、薬局の人手不足が解消されることによって、いわゆる派遣切りが起きたり、パートの求人が減ったりといった、これまでにない変化が生じました。都心部では「40代パート希望」というだけで面接にすら進めないなんてことも起こっています。求人企業がより若い人材や夕方・土日に勤務可能な正社員を求めているからです。地域格差はありますが、これまでの“売り手市場”から“買い手市場”に変わったといえます。薬剤師免許があれば“食いっぱぐれない”という考えは改めたほうがよさそうです。

 

【予測される転職市場の変化】

  • ミドル層、シニア層の転職は今後ますます難しくなる。
  • 都心部や人口密集地は求人募集が減る。
  • パートは勤務日数を増やしにくくなる。育児休暇明けの時短正社員は、希望勤務地を選びにくくなる。
  • 夜間・土日勤務、店舗異動など雇用側のニーズに応える必要がある。
  • 専門性、マネジメント能力、ITスキルなど、求められる人材要件が変わる。
  • ヘルステック、コンサルティング、マーケティング、メディアなど、薬剤師の新しい労働市場が生まれる。

 

キャリアデザインとは

キャリアデザインとは「自分の職業人生を自らの手で主体的に構想・設計すること」です。すなわち、①自分の経験やスキル、性格、ライフスタイルなどを考慮した上で、②実際の労働市場の状況なども勘案しながら、③仕事を通じて実現したい将来像やそれに近づくプロセスを明確にすること、と説明できます。

特に重要なのが①の自己分析です。私はこれまで多くの薬剤師のキャリアカウンセリングを行ってきましたが、ほとんどの人が、自己分析が不十分で自分自身を理解できていませんでした。自己分析に関しては、次の回で詳しく触れたいと思います。

 

自分を理解し、労働市場を理解し、自己実現を果たせるプロセスを描く、まさにキャリアデザインとは人生の地図を描くようなものです。もちろん描いた地図通りにうまくいかないことも多いでしょう。

5年、10年先までの地図を描き、毎年それをアップデートします。時々偶発的な出来事に左右され、描いた通りにならないことがあっても、地図があれば元の道に戻ってくることができます。仮に偶発的な道に進んだとしても、同じゴールを目指すこともできるでしょう。

しかし、地図を持たずに歩けば、すぐに迷子になります。糸の切れた凧のように、あっちふらふら、こっちふらふら。場当たり的なキャリアを歩むことになります。ミドル層の転職ではこれが致命的な問題をもたらします。一貫性のないキャリアは採用面接での説明に苦しむことでしょう。将来ビジョンを描けない人材は気分次第で辞めてしまうと面接官に思われてしまうでしょう。単に転職回数が多いというだけで採用面接を断られることもあります。

過去の経歴を変えることはできません。場当たり的な転職ではなく、将来のキャリアゴールから逆算してキャリアを積み上げることが大事です。

 

マネープランも同時に

「今よりもいい待遇で転職」というのが一般的な考え方だと思いますが、目先の給与アップよりももっと大事なことがあります。ところで、みなさんは「年収はいくら必要か?」との問いになんて答えますか?「高ければ高いほどいい」という答えは当然だと思いますが、ここでの質問は希望年収ではなく、「必要な年収」です。生命保険などに加入する際に、ファイナンシャルプランナーとの面談でマネープランを設計した経験をお持ちの人も多いかと思いますが、将来、何にいくらの出費があって、希望する生活レベルを維持するにはどれだけの収入が必要か、というシミュレーションをしないと必要な年収を答えることは難しいでしょう。

 

すなわち、少なくとも労働の対価としてどのぐらい稼ぐ必要があるということを把握できていれば、それを下回らない年収の求人も選択肢になりうるわけです。また、転職によって一時的に年収がダウンしても、将来大きくアップする可能性がある求人ならトライする価値があります。「年収は階段状に上がるもの」「年収が下がる転職はありえない」という固定観念では、貴重な選択肢を逃すことになります。

キャリアを考える際は、ぜひマネープランも同時にやってみてください。

 

 

キャリアデザインとは、いわば人生設計です。国家資格があるから、薬学部を出たんだから、自分には調剤しかできない、なんて思いこまずに視野や価値観を広げて、目線を上げて、あなただけの地図を描いてみてください。

 

第二回 自己分析と面接対策

 

(著者紹介)

富澤 崇 株式会社ツールポックス代表取締役

1998年東京薬科大学卒、千葉大学博士課程修了(薬学博士) 山梨大学医学部附属病院、クリニック、複数の薬局で勤務。2001年から城西国際大学薬学部の教員として約20年勤務。大手チェーン薬局にて人事・教育・採用部門に従事。2017年に株式会社ツールポックスを設立。経営コンサルティング、キャリア支援、従業員研修などのサービスを展開。北里大学客員准教授兼務。