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薬剤師のキャリアデザイン ~No.2 自己分析と面接対策~
2022.09.12
前回の「薬剤師のキャリアデザイン~No.1 転職市場とキャリアデザイン」にて、キャリアデザインとは「自分の職業人生を自らの手で主体的に構想・設計すること」であり、①自分の経験やスキル、性格、ライフスタイルなどを考慮した上で、②実際の労働市場の状況なども勘案しながら、③仕事を通じて実現したい将来像やそれに近づくプロセスを明確にすることであるとお話しました。
ここで最も重要なのが①の自己分析です。自分のスキルや経験といったスペック、仕事や労働の価値観や志向性といった内面、そしてライフイベントを加味した将来の生活、こういったものを自分自身が理解し、描くことが重要です。自分はどんな仕事に向いているのか、どんな働き方が性に合っているのか、どんな生活を送りたいか、そのためにどの程度の収入が必要か・・・ということをみなさんは自分で説明できますか?
そして、自分と求人企業の相性が良いことをアピールするのが採用選考です。そのためにも自分で自分のことを語れる必要がありますし、求人企業の何が自分と合っているのかを説明できる必要があります。
今回は、就職や転職活動における自己分析の大切さとやり方、そして採用選考の注意点についてご紹介します。
何のために自己分析をするのか?
就職や転職の際に決めなければならないことは、以下の3つです。
- 業界:製薬メーカー、病院、ドラッグストア、薬局など
- 職種:研究、開発、製造、人事、総務、経理、営業、マーケティング、接客販売など
- 判断軸:給与・待遇、通勤時間、会社規模、事業内容、社風など
業界は「どこで働くか?」、職種は「何で飯を食うか?」、判断軸は「求人選びの際に何を重視するか?」ということです。これらを決めてから求人募集を探します。では、どうやってこれらを決めるかというと、業界は興味関心から、職種は適性やスキルセット(これまでの経験)から、判断軸は性格や価値観、ライフデザインから選び、決めることになります。
したがって、自己分析の目的は業界、職種、判断軸を検討するためであり、そのために自己分析結果という素材が必要になるわけです。
自己分析の進め方とは?
インターネットで検索すると無料で試せるもの、有料のもの、性格診断に近いもの、ずばり職業適性を診るものなど様々なツールが紹介されています。
私はキャリアカウンセリングの際に、「ビジネスモデルYOU(翔泳社)」の中で紹介されている「パーソナルキャンバス」や「資質リスト」を多用します。時間とお金をかけてもいいという人には「クリフトンストレングス」を紹介しています。
どんな手段でもいいので、まずは試しにやってみることです。自分のことをよく知る家族や友人、同僚などから他者評価をもらうという方法もいいでしょう。「私の強みって何だと思う?」「私ってどんな性格に見えている?」といった質問をします。その際、ネガティブな評価も遠慮なく言ってもらうことが大事です。
1点注意があります。自己分析の結果をどう解釈し、業界や職種の選択、判断軸にどう生かすかを考えるのが難しいということです。望ましいのはキャリアコンサルタントやカウンセラーの力を借りることです。費用が発生しますが、自分の大事な人生の分岐点(キャリア・トランジション)を正しく乗り越えるための費用としては決して高くない投資だと思います。
大事なのは、自己分析の結果を自分一人で解釈しないで、誰かの意見を聞くことです。自分の思い込みによる勝手な解釈が生まれやすく、自分の可能性に気づけないことがありますので、第三者と一緒に結果を眺めて、あぁでもない、こうでもないと議論してください。自分を再発見するこの過程を楽しむ!という気持ちを持てるといいですね。
自己分析の効能効果とは?
自分に合った業界、職種、働き方が見つかり、求人選びの判断軸が明確になります。さらに自分のことを言語化できるので、自分を他者に説明することができます。すなわちエントリーシートや履歴書作成、選考面接で自分を表現する際に役立ちます。
何よりも自分の将来のキャリアデザインに自信を持てるようになります。将来の選択を自己分析という根拠に基づいて設計するわけですから、自分に適さない選択を取ることを避けることができますし、希望を持って前に進めるようになります。
自己分析をもとに面接では何を伝えればいいのか?
冒頭で申し上げましたが、選考はお互いの相性を確認する機会です。自分の職歴や希望待遇を伝えるだけではないですし、相手企業のスペックや募集要項を確認するだけではありません。
求人企業としては、あなたの仕事に対する考え方や価値観、キャリアデザイン、仕事上の貢献などを知りたいと考えています。言い方を換えれば、面接官に自分がこの会社で働いているビジョンを浮かべてもらえるように自分のことを説明する必要があります。
1. 職務経歴 これまでの業界・会社、部署、ポジションや責任範囲、ミッションやタスクを説明します。特に達成したことや成果を伝えましょう。 例:20店舗を経営するX社にて、薬局長として5年間勤務しました。調剤業務だけでなく、スタッフの人事評価、周辺地域のマーケティング、実務実習生の指導などに携わりました。直近では、処方せん受付回数は昨年対比で10%増、加算の新規獲得、残業時間の20%減を達成しました。
2. スキルセット 上記の職歴から習得したスキル、業界知見、経験、資格や人脈などを説明します。職務経歴書の「スキルや経験」の項に書く内容です。 例:処方元やステークホルダーとの交渉力、問題解決のための提案力、PCスキル(WordやExcel)
3. マインドセット 仕事の哲学や価値観、すなわちどんなことを大切にして仕事をしてきたかを説明します。職務経歴書の「自己PR」の項に書く内容です。 例:職場のリーダーとして軸をブラさずに意思決定することを大切にしてきました。仕事を円滑に進めるために職場の心理的安全性を確保することが大事だと考えています。
4. キャリアデザイン マインドセットと同じく「自己PR」に書きます。「このような職務経験を有し、スキルセットを生かして、こういうことを大切に仕事をしてきた私は、こんな将来のキャリアを描いています。」という説明をします。 例:いずれ新製品開発や新規事業立ち上げなどの新しいことに挑戦したいと考えています。マネジメント職より専門職として技術を高めていきたいと考えています。 |
面接でどんなことを質問すればいいのか?
こうしてみてみるといかに自己分析が大事かお分かりいただけると思います。自分のことがわかっていないと相手に説明することができないということです。
一方で、質問も大事です。良質な質問をすることが求職者であるあなたの評価につながります。
求人要件、待遇、雇用形態や働き方、勤務時間、就業規則、社内規程、福利厚生などに関しては、自分の疑問を解決する、いわば自分志向の質問です。これらの質問をするのは構わないのですが、それだけでは求人企業側の印象を悪くしかねません。相手のことをもっと知りたいという想いが相手へのアピールになるわけですから、求人企業のことについてもっと質問するべきです。では、どのような視点から質問を繰り出せばいいか?
肝心の業務内容、会社の方向性や価値観などを質問するとよいでしょう。薬局の場合を例にあげます。
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求人企業が強みと思っていることを質問のネタにすることで、自社のことを事前によく調べてくれているという好印象を与えることができますし、業務に関する深い質問をすることで仕事へのモチベーションの高さを示すことができます。
このように相手志向の良質な質問をすることで自分の印象を良くしたり、相手企業への意欲を示したりすることができますので、質問をしっかり練って面接に臨むことが求められます。
2回にわたり薬剤師のキャリアデザインについてお話をさせていただきました。
キャリアデザインは転職ありきではなく、職業人生を豊かにし、仕事を通じた自己実現を果たすために必要な考え方です。2、3年ごとに自分のキャリアを棚卸して、将来設計に想いを馳せる時間を取るようにしてみてはいかがでしょうか。
著者紹介
富澤 崇 株式会社ツールポックス代表取締役
1998年東京薬科大学卒、千葉大学博士課程修了(薬学博士) 山梨大学医学部附属病院、クリニック、複数の薬局で勤務。2001年から城西国際大学薬学部の教員として約20年勤務。大手チェーン薬局にて人事・教育・採用部門に従事。2017年に株式会社ツールポックスを設立。経営コンサルティング、キャリア支援、従業員研修などのサービスを展開。北里大学客員准教授兼務。