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コラムNo.10 薬局DX(その2)

2022.10.17

 前回は、本来のDXの意味や意義、そして、薬局薬剤師のDXのあり方について概要を説明した。今回は、オンライン資格確認(以降「オン資」という)、電子処方箋、そして、オンライン服薬指導について、DXの視点から述べる。

 

薬局・薬剤師の活動におけるDX

「薬局DX」が、デジタル化のみならず、薬局活動の変革を意味しているとすれば、それは「医薬品の販売と授与(供給)」という法令上の機能を、デジタル技術を活用して変革するということである。その意味を薬局で活動する薬剤師にまで広げると、薬局薬剤師は、「調剤」、「医薬品の供給」、「公衆衛生の向上と増進」といった任務を、デジタル技術を活用して変革する、ということになる。

 従って、「オン資(オンライン資格確認)、電子処方箋、オンライン服薬指導は、必ず行なえること」、ということになる。しかしながら、現時点の目の前の仕事は、従来の調剤の域を脱しておらず、薬局で働く薬剤師、その他のスタッフの認識も行動も大きく変わっていない。 もちろん、オン資は始まったかりで、未だ対応できていない医療機関や薬局も多い。さらに電子処方箋も20231月開始とはいうものの202210月からのモデル地域での運用開始を待つ状況であるが故に、現実感が薄いのも頷ける。しかしながら、時は待たないし、対応できるだけの準備は必須である。

 

オンライン資格確認

現時点では、患者にとって、マイナンバーカード所持の有無、そして保険証との紐付けの有無は問われない。むしろ、クリニックを中心とした医療機関においては、助成があるにも関わらず、導入率は緩やかに上昇しているため、日常的な利活用には至っていない。しかし、医療機関で、いざ電子処方箋を発行する場合は、保険証あるいは保険証に紐付けされたマイナンバーカードの所持は必須となる。

また、電子処方箋は、必ず患者の意思による発行が原則であるため、医療機関や薬局では、その意義だけではなく、患者にとってのメリットが理解され、説明できなければならない。つまり、利用者である患者への啓蒙活動が必須であると言えよう。

 

現在、DXDigital Transformation)は、企業を先達として官公庁や企業活動の変革のために必要なこととして進められてきている。経済産業省では、ガイドラインの作成、研究会、DXレポート等など、各種取り組みを推進している。

薬局業界においては、これまで明確に説明がなされていなかった「薬局におけるDX」ではあるが、2022年7月に厚労省より発表された「薬局薬剤師の業務及び薬局の機能に関するワーキンググループ」報告書の中で薬局薬剤師DXについて述べられて、業界内でも目にする機会が増えている。これとは別に。202111月の社会保障審議会医療部会(厚生労働省)においては、「業務の効率化に資するICTの利活用」「医療におけるICTの利活用・デジタル化への対応」が示されており、これを含めて今後の薬局の方向性が示されているものと理解してよい。

 

本来のDXの意味と意義と薬局薬剤師に求められるもの

 

DX推進ガイドライン(経済産業省)によると、「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズをもとに、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。」と示されている。

これに対して、前述の報告書においては、薬局薬剤師のDXにおける課題として、令和5年(2023年)1月に導入予定の電子処方箋制度は、リアルタイムでの処方・調剤情報の閲覧を可能にするものであり、薬局薬剤師の役割を大きく変えるもの、さらに、オンライン服薬指導の普及及びデータヘルス改革・電子処方箋の導入を通じた各種医療情報の共有が進む中で、薬局薬剤師のこうしたデジタル技術への対応は必須であることが述べられている。加えて、こうしたデジタル技術を活かして、患者・国民サービスの質および利便性の向上を図る取り組みを積極的に進めることも求められている。

この課題に対する具体策としては、(1)デジタルに係る知識・技術の習得、(2)薬局薬剤師DXに向けた活用事例の共有、(3)オンライン服薬指導、(4)調剤後のフォローアップ、(5)データ連携基盤、(6)薬歴の活用等 、(7)薬局内・薬局間情報連携のための標準的データ交換形式などが示されている。この中で、(3)(4)については、すでに現在あるか、推進されているものであり、(2)(5)(7)は地域あるいは所属する組織・団体で対応する必要がある。特に(1)(6)については、個々の薬剤師の操作技術の問題から、多様な各種システムの利活用といった課題が生じる。

 

薬局薬剤師のDXの取り組み

 

これまで記した周辺情報と、現在進められている政策を総合し俯瞰してみると、薬局と薬剤師のデジタル技術の利活用は待ったなしの状況であること、そしてこの30年で急速に進展した医薬分業は新たな時代に入ったといって間違いない。加えて、電子マネーの普及による調剤医療費の支払い方法の多様化、そして治療アプリへの対応も無視できないものであろう。

今後、ICTリテラシーを保持しない薬局薬剤師は、業務上の必要最小限の利用方法のみならず、基礎的なICT素養を高め、薬局DXにより積極的に関わるには、どのような知識や訓練が必要なのだろうか?

一方で、薬学生に対するICT教育ではあるが、薬学教育 第6巻(2022)の「Pharma Tech活用に向けた薬学におけるICTリテラシー教育の現状と今後の展望(土井 信幸, 富澤 崇)」に示されているカリキュラム案がある。これは現場の薬剤師にも参考となるので一読しておくことを勧めたい。

しかしながら、残念なことに、薬学教育においても、ICTリテラシーに関する教育は不十分であり、また、現場の薬局薬剤師についても、学習する機会は乏しい。個々の薬剤師の努力に期待するしかないが、自らの研鑽で現状を打開する必要があると言えよう。