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~薬剤師がおさえておきたいサプリメント事情~ 第5回「健康食品と医薬品の相互作用(2)サプリメントと医薬品との相互作用」

2022.10.28

今回は、手軽に利用できる「栄養素サプリメント」と医薬品との相互作用について、抗てんかん薬を事例に「葉酸」と「ビタミンD」に注目して解説します。

■抗てんかん薬と葉酸との相互作用

葉酸は脳梗塞や心筋梗塞を起こす動脈硬化症の原因物質の一つであるホモシステインの血中濃度を低下させ、その発症予防に効果があるとされるビタミンです。

抗てんかん薬のフェニトイン、フェノバルビタール、プリミドン、バルプロ酸、カルマゼピンなどは、服用患者の血中葉酸レベルを低下させます。他方で、葉酸の積極的な摂取で抗てんかん薬の血中濃度が低下し、薬効が減弱することも知られています。とくに、フェニトイン投与では内因性葉酸レベルが著しく低下し、血中フェニトイン濃度が高値であるほど、葉酸レベルの減少も大きいことが報告されています。

このメカニズムについて、①食物に含まれる結合型葉酸(食品中では葉酸は蛋白質と結合して存在)の消化に関与する葉酸コンジュガーゼ(γ-グルタミルヒドラーゼ)を抗てんかん薬が阻害することによる、②葉酸が抗てんかん薬の代謝補助因子として利用されることによる、という説があり、いまだ不明点も多くあります。

サプリメントに利用される遊離型葉酸を摂取するとフェニトインによる吸収低下は起きず、フェニトインによる内因性葉酸レベルの低下には遊離型葉酸の補給が有効であることが確認されています。しかし、葉酸を薬として高用量投与すると、逆にフェニトインの薬効減弱が起こります。ヒトを対象とした試験研究では比較的高用量の補給(1~30mg)による研究が多く、サプリメントとして補給される400μg程度での研究例は無いのが現状ですが、投与量1mgで血中葉酸レベルがほぼ維持された例が報告されていることから、フェニトイン服用者の日常的な葉酸サプリメントの利用(200~1000μg)は、フェニトイン濃度を低下させずに葉酸血中レベルを維持するのに有効であると考えられます。

■抗てんかん薬とビタミンDとの相互作用

 ビタミンDは骨粗鬆症の予防など骨代謝の維持に必要なビタミンです。免疫能の維持や遺伝子の発現調節などにも関与しています。近年のウイルス性疾患の重症化予防においても、ビタミンDの適量摂取の効果が期待されています。

しかし、抗てんかん薬の投与により、ビタミンDの作用が無効化する例があります。抗てんかん薬には肝薬物代謝酵素を誘導するものが多く、他の薬物の代謝を亢進するとともに、ビタミンDの分解を促進することも明らかになっています。フェニトイン長期投与で些細なことから容易に骨折することがあり、血清アルカリフォズファターゼ(ALP)の上昇、副甲状腺ホルモン濃度(PTH)の上昇、血清カルシウム濃度の低下、血清25-ヒドロキシビタミンD濃度の低下など、ビタミンD欠乏症状や、骨ミネラル代謝障害に起因した骨障害を呈することが報告されています。

抗てんかん薬の長期投与の影響を調査した研究では、フェニトイン、フェノバルビタールの単剤投与、複数剤併用患者において、抗てんかん薬非投与対象被験者と比較して、血清カルシウムレベルの低下、25-ヒドロキシビタミンDレベルの低下、肝臓ならびに骨由来のALPレベルの増加が見出されています。25-ヒドロキシビタミンDレベルの低下は肝臓代謝酵素の誘導を示し、ALPレベルの増加はビタミンD代謝障害による骨軟化症を示すものと考えられます。

通常、ビタミンDは、肝臓において25-ヒドロキシビタミンDに代謝され、腎臓においてさらに活性型ビタミンDである1.25-ジヒドロキシビタミンDに代謝されて、ビタミンD活性が発揮されますが、抗てんかん薬の代謝で誘導された肝臓代謝酵素(25-ヒドロキシビタミンD-24-水酸化酵素)により、ビタミンD活性をもたない代謝物(24.25-ジヒドロキシビタミンD)に変換されてしまうためと考えられています。

フェニトインなどの抗てんかん薬の長期投与により、この酵素の誘導が亢進し、25-ヒドロキシビタミンDの不活性代謝物への変換量が増大し、血中25-ヒドロキシビタミンD濃度の低下と、活性型ビタミンD供給量の低下、小腸でのカルシウム吸収なども低下させて、医薬品による代謝的なビタミンD欠乏症状を呈したと考えられます。

抗てんかん薬の長期投与による症状に対しては活性型ビタミンD製剤の投与が有効です。抗てんかん薬の投与においては定期的な血清25-ヒドロキシビタミンD濃度や、カルシウム濃度の測定が必要でしょう。

(筆者)

城西大学薬学部教授

一般社団法人日本健康食品サプリメント情報センター(Jahfic) 理事

和田政裕