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コラムNo.12 計画と数値管理(2)

2022.12.05

前回に引き続き、ベンチマークについて述べてみる。なお、ベンチマークを行うための外部情報については、費用を出せば入手できるものもあるが、公的な情報も利用可能である。

 今回は、以下に示す2つの公的調査について概要と利活用について述べる。

 

医療経済実態調査(医療機関等調査)結果の活用

 

 医療経済実態調査(厚生労働省)は、病院、一般診療所、歯科診療所及び保険薬局における医業経営等の実態を明らかにし、社会保険診療報酬に関する基礎資料を整備することを目的として、2年に1回サンプリングにて実施されている。

 保険薬局においては、一か月の調剤報酬明細書の取り扱い件数が300件以上の薬局から抽出されており、令和3年の調査では、全体の4%にあたる保険薬局(対象:1,892施設、回答:1,133施設)が対象となっている。

 

 表1:調査項目(除 一部項目)

Ⅰ 収益

 

 Ⅰ' (参考)新型コロナウイルス感染症関連の補助金

                (従業員向け慰労金を除く)を除いた収益

 (-3'

  1.保険調剤収益

 調剤に係る収益(医療保険、公費負担医療)

  2.公害等調剤収益

 調剤に係る収益(公害医療、労災保険、自賠責等)

  3.その他の薬局事業収益

 ・自費診療による調剤収益

 ・一般用医薬品、化粧品等の販売収益

 ・受取利息、配当金等

Ⅱ 介護収益

 

  1.居宅サービス収益

 居宅サービスに係る収益

  2.その他の介護収益

 前記の科目に属さない介護収益

Ⅲ 費用

 

  1.給与費

 職員の給料、賞与、退職金(退職給付引当金制度がある場合は退職給付引当金繰入額、  退職給付引当金制度がない場合は退職金支払額)、法定福利費

 (注) 個人立の保険薬局においては、開設者の報酬に相当する部分は含まれていない。

  2.医薬品等費

 調剤用医薬品、一般用医薬品、材料費、その他品目(煙草、化粧品、雑貨等)の費消額

   (再掲)調剤用医薬品費

 保険調剤で費消した医薬品費

   (再掲)一般用医薬品費

 処方箋を必要としない市販薬等の医薬品費

  3.委託費

 医療事務等の委託費

  4.減価償却費

 建物、建物附属設備、調剤用機器、車両船舶等の減価償却費

   (再掲)建物減価償却費

 建物の減価償却費

   (再掲)調剤用機器減価償却費

 調剤用機器の減価償却費

  5.その他の経費

 ・経費(福利厚生費、消耗品費、光熱水費、賃借料、事業税、固定資産税等)

 ・広告宣伝費

 ・その他(支払利息、雑費等)

   (再掲)設備機器賃借料

 固定資産に計上を要しない設備、機器の使用料(リース、レンタル料)

   (再掲)調剤用機器賃借料

 調剤用機器の使用料(リース、レンタル料)

Ⅳ 損益差額

 (

 (注) 個人立の保険薬局の損益差額からは、開設者の報酬となる部分以外に、建物、設備について現存物の価値以上の改善を行うための内部資金に充てられることが考えられる。

Ⅴ 税金

 法人税、住民税

 (注) 個人立の保険薬局については集計していない。

Ⅵ 税引後の総損益差額

(出典:厚生労働省、第23回医療経済実態調査票より)

 

 この調査では、経営形態を「個人」「法人」「全体」とそれぞれ分けて集計されている。機能別集計においては、上記種別に、それぞれ「調剤割合(収益に対する割合)」「後発医薬品備蓄割合(全体に対する品目数)」「在宅患者薬剤管理指導料算定回数」「居宅療養管理指導料(介護保険)算定回数」「調剤基本料区分別損益状況」「立地別損益状況」「特定の保険医療機関との不動産の賃貸借関係状況」が集計されている。加えて、「法人」のみ、同一グループの保険調剤を行っている店舗数ごとに、集計されている。

 

社会医療診療行為別統計調査結果の活用

 

社会医療診療行為別統計は、医療保険制度における医療の給付の受給者に係る診療行為の内容、調剤行為の内容、薬剤の使用状況等を明らかにし、医療保険行政に必要な基礎資料を得ることを目的として、毎年、6月審査分の状況が公表されている。具体的には、調剤技術料の明細、薬剤料等が、複数の表(令和3年分は「表:1」参照)に分けて集計されている。

表:1 社会医療診療行為別統計(令和3年6月分)

No.

内容

第1表

件数・処方箋受付回数・算定回数・点数,調剤行為、一般医療-後期医療・年齢階級別

第2表

件数・処方箋受付回数・算定回数・点数,調剤行為、一般医療-後期医療、処方箋発行医療機関・調剤基本料区分別

第3表

件数・処方箋受付回数・算定回数・点数,調剤行為、保険種別別

第4表

件数,一般医療-後期医療・年齢階級、処方箋受付回数階級別

第5表

件数,一般医療-後期医療、処方箋発行医療機関、処方箋受付回数階級別

第6表

件数,一般医療-後期医療、調剤基本料区分、処方箋受付回数階級別

これらの調査項目は、毎回、中医協の調査実施小委員会にて検討され厚生労働省にて実施されている。これらは、調剤報酬改定に向けて、毎回項目の追加変更があり、その結果が調剤報酬に反映されることも考慮して、ベンチマークとして利用することも必要であろう。

 

このような公的数値と比較してみると、自分の店舗あるいは自分たちのグループがどの程度のレベルなのか、運営上の強み・弱みを把握でき、改善点を見出すことができる。