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~薬剤師がおさえておきたいサプリメント事情~ 第6回「実務に活かすエビデンス情報 ナチュラルメディシン・データベース」
2022.11.30
■健康食品・サプリメントについての消費者の意識
ちまたに溢れる健康食品・サプリメントには、特保や機能性表示食品、栄養機能食品といった保健機能食品以外にも、数多くの「いわゆる健康食品」が流通しています(第1回コラム参照)。
消費者は、それらの製品の有効性を信じ、安全性を疑わない傾向にあるように思います。
しかし、第2回コラムでもお伝えしたとおり、保健機能食品の有効性の科学的根拠となる臨床試験の対象は健常者に限られていることから、その表現は限定的です。また、機能性表示食品については、科学的根拠の評価方法にばらつきが生じています。
消費者の中には、健康食品が病気に効くという医薬品との混同や、多く摂ればそれだけ効果があるという思い込みもあるようです。
安全性については、天然物であるからといって安全であるという誤解があったり(第3回コラム)、第4回・第5回コラムで詳述した医薬品との相互作用については、そもそもあまり知られていないのが実情です。
■医療現場で活用される「ナチュラルメディシン・データベース」
一般の方々から健康食品についての相談があった場合、限られた時間の中でわかりやすく、適切に答えるためにも、備えておきたい一冊が『健康食品・サプリ[成分]のすべて〈第7版〉 ナチュラルメディシン・データベース日本対応版(以下、NMDB)』(総監修:日本医師会、日本歯科医師会、日本薬剤師会)です。
NMDBは1冊の中に、健康食品やサプリメントの素材・成分、ハーブ、野菜、果物等を含む約1,200種について、有効性、安全性、医薬品との相互作用等の科学的根拠に基づく情報が網羅されています。有効性の情報は6段階(第2回コラム参照)、医薬品との相互作用の情報は3段階と、それぞれレベルが付されています。
NMDBは多くの医療現場で活用されており、主に患者からの相談応需や、薬剤の効能に影響する健康食品・サプリメントの確認、手術時に影響のある健康食品の事前確認等に使われています。
また、NMDBは厚生労働省のHPやパンフレットで「信頼できる健康食品情報源」として紹介されており、公的な機関や大学・研究所などや、機能性表示食品届出の根拠情報としても活用されています。
■医薬品との相互作用情報の具体的な活用例
NMDBの医薬品との相互作用については、以下の3段階の危険度レベルで示されています。レベルに応じて、健康食品等の使用中止または慎重に併用する等、患者に対する指導内容が変わってきます。それぞれの医薬品との相互作用の情報は、患者に対して端的に答えられる内容になっています。
危険度 |
注意喚起 |
指導内容 |
高 |
この医薬品と併用してはいけません |
極めて重大な有害症状が起こる可能性があります。患者様には、現在使用中の健康食品・サプリメントを中止するよう伝えてください。 |
中 |
この医薬品とは慎重に併用するか併用しないでください |
重大な有害症状が起こる可能性があります。患者様には健康食品・サプリメントを慎重に使用するか、使用を中止するよう伝えてください。ただし、ハイリスク薬の場合は健康食品・サプリメントの使用を中止した方がよいでしょう。 |
低 |
この医薬品との併用には注意が必要です |
相互作用が生じる可能性があります。患者様には体調の変化に注意するよう伝えてください。 |
全6回にわたり「薬剤師がおさえておきたいサプリメント事情」をお伝えしてきましたが、科学的根拠に基づくNMDBを薬局に備えておくことで、患者に安心・安全をお届けし、薬剤師の皆様のお役に立つことを願っています。
第4回「健康食品と医薬品の相互作用(1)医薬品食品相互作用とは」記事はこちら←
第5回「健康食品と医薬品の相互作用(2)サプリメントと医薬品との相互作用」記事はこちら←
(筆者)
一般社団法人日本健康食品・サプリメント情報センター(Jahfic) 理事 宇野文博