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面接官の訓練
2022.12.12
3回にわけて薬剤師の採用をテーマに、採用戦略の描き方、採用手法のご紹介、面接官訓練(本コラム)についてお話ししていますが、今回は、正しい選考面接を行うための面接官訓練についてです。
訓練というと難しい研修を受けるようなイメージを持たれるかもしれませんが、面接の注意点や面接官としての正しい立ち振る舞いについてご紹介しますので、ご自身の普段の面接を振り返ることにお役立てください。
面接の目的
改めて選考面接の目的について確認してみましょう。
面接は一言でいうと「お見合い」です。お互いを知ることを目的に行います。ゴールは採用または入社の「あり/なし」を判断することです。
すなわち、互いのスペックや価値観、目指す方向性、ニーズなどを確認しつつ、一緒に働くための条件をすり合わせ、最終的に求人側は採否を判断すること、求職者側は入社するかどうかを判断することがゴールとなります。
そのためにお互いがどんなことを面接時に確認するべきか、下表にあげてみました。
【面接での確認事項】
求人側 |
求職者側 |
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相手に何を伝えるか、何を質問するかという自分側の準備だけでなく、相手からどんなことを質問・確認されるかについても準備が必要です。自社の説明や雇用条件の確認に終始せず、求職者のことを掘り下げる質問をすることで、求職者にこちらの関心を伝えます。求職者も自分に興味関心を持ってくれる会社には好印象をいだきます。
大事なのは、いずれか一方が相手を選別することではありません。互いをよく知ることです。なぜなら、ミスマッチを防ぎたいからです。求人側も求職者側も「こんなはずじゃなかった」と思い、早期離職につながることはお互いにとって損害です。
このような入社後の視点を持つことで、面接は互いが精査されているということをご理解いただけると思います。
面接官のNG行為
求職者に嫌われる面接官の行為については、ネット上でいろいろ目にすることができます。
どの面接官も故意にやっているわけではなく、ついうっかりだったり、知らなかったりということが多いかもしれません。ですから、自分にも当てはまるかもしれないという視点が大事です。
では、具体的にどんな行為がNGなのか見てみましょう。
厚生労働省のHPに「公正採用選考特設サイト」があり、採用選考時に配慮すべき事項が書かれていますのでそちらも参考にしてください。
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結婚や妊活の予定、介護の予定、健康状態などを質問していいのかという声をよく耳にしますが、決してNGではありません。ただし、選考の基本的な考え方として「公正な選考」に配慮するということが大事です。採否の判断のために聞くのではなく、求職者の働き易さや業務配分、勤務シフトなどを検討するためというスタンスで質問する分には問題となりません。
また最近ではオンラインで会社説明や選考面接を行うことが増えていますので、その運用にも注意が必要です。
周囲の雑音が入らないようにマイク付きイヤホンを使う、逆光で顔が暗くならないように照明を当てる、画面に映り込む背景に注意するなど、細かな配慮が必要です。
求職者にとって面接官は求人企業の代表者です。面接官のNG行為によって、その会社の印象が左右されます。SNSでネタにでもされたら、求職者の心象だけでなく、多くの人のイメージダウンにつながりかねません。
リスクマネジメントやブランディングという観点からも面接官の立ち振る舞いは重要だということです。
求職者に対して自社の選考を受けてくれたことへの感謝の気持ちがあれば、NG行為の多くは防げると思います。
正しい面接のために
特別な訓練をしましょうという話ではありません。まずはここまでの話をしっかり受け止めることです。「自分は大丈夫」「うちは小さな会社だから」と高をくくっていては、よい人材は採用できません。
次にやるべきは、社内で共有することです。面接官を担う人たちと、NG行為をしていないか、そもそもの面接の目的認識はできているか、といった相互確認をしてください。その時は社内の上下関係を無視してください。上司が率先垂範の態度で自分の行為を振り返り、部下からの指摘に寛容であることを示す必要があります。
面接官を務める人は、必ずしも人事採用担当者だけではないでしょう。薬局長やエリアマネジャーは面接に慣れていないかもしれませんし、経営層の場合は、人事採用担当者が経営層にNG行為を指摘できないかもしれません。
面接官同士でロールプレイをやってみてもいいでしょう。NG行為を頭で理解するだけでなく、ロールプレイで試してみて、相互に注意し合う。面接官の態度や進め方だけではなく、人事採用担当者、現場の監督者、経営層のそれぞれの説明に齟齬がないか、一貫性があるかという確認もできます。
とはいえ、求職者に気を遣いすぎたり、型にはめたりすると、求人側の特徴やカラー、独創性を失うことにもなりかねません。選考面接の基本のキを抑えつつ、“自社らしさ”を足して魅力的な面接となるよう工夫してみてください。
これまで3回にわたり、人材採用をテーマにお話してきました。
誰もが特別な訓練や知識の上で採用に当たっているわけではありませんので、採用担当者は試行錯誤していることと思います。まずは自分たちの採用活動を棚卸し、課題を見つけ、見直し、実行し、振り返るというPDCAサイクルを回すことを意識してみてください。
著者紹介
1998年東京薬科大学卒、千葉大学博士課程修了(薬学博士) 山梨大学医学部附属病院、クリニック、複数の薬局で勤務。2001年から城西国際大学薬学部の教員として約20年勤務。大手チェーン薬局にて人事・教育・採用部門に従事。2017年に株式会社ツールポックスを設立。経営コンサルティング、キャリア支援、従業員研修などのサービスを展開。北里大学客員准教授兼務。