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「電子処方箋と医療DX」(前編)

2022.12.19

電子処方箋についての詳しいサイトを作りました。

20231月から「電子処方箋」が開始されます。20234月にはオンライン資格確認の義務化を控えており、その準備が急ピッチで進められています。電子処方箋は、医療現場にとってどのような影響をもたらすのか。これからの医療サービスはどんな変更が必要なのかを2回に分けて解説します。

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医療DXとは

 最近よく耳にする「医療DX」。DXとはDigital Transformationの略で、デジタル化による社会変革を意味します。医療は電子カルテなど院内のデジタル化を進めるステージから、デジタルを活用して業務改革を進めるステージに入っているのです。

 20231月から始まる「電子処方箋」も政府が進める医療DX政策のひとつで、これまで紙で発行していた処方箋を電子化すること自体が目的ではなく、処方データがデジタル化されたことで、医師、薬剤師、患者が薬の情報をリアルタイムに共有し、医療の質向上につなげようとする試みです。複数の医療機関・薬局をまたいだ処方薬の一元管理が可能となり、さらには重複投与や相互禁忌などが行われるようになります。

 

コロナ禍における医療DXの推進

 20201月から始まった新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)の感染拡大は、わが国の医療サービスに大きな変革をもたらそうとしています。新型コロナの感染に対する「恐怖」から、一時的な受診抑制が生まれ、国民は長引く行動規制を余儀なくされ、その間に、オンラインショッピングなどデジタル社会が一気に進みました。

 そのような中、政府は矢継ぎ早に「医療DX」を進めるプランを提示しています。オンライン診療の時限的な規制緩和に始まり、その後の恒常化によって、オンライン診療、オンライン服薬指導、薬の配送とすべてオンラインで完結する仕組みが確立しました。

また、医療機関・薬局・患者を結ぶネットワークを構築するため、オンライン資格確認による電子認証の仕組みが構築され、処方データを皮切りに、最終的にはカルテデータにいたるまで共有できる社会システムを構築しようとしています。

この急速な医療DX政策の背景には、コロナ禍で露呈したデジタル化の遅れに対する危機感があります。新型コロナという未知のウイルスによる恐怖が、遅々として進まなかった医療サービスのデジタル化による変革を加速させるきっかけとなっているのです。

 

 図 新型コロナと医療DX政策

 

政府が進める医療DXの狙い

 政府がここまで医療DXの推進にこだわる意図はどこにあるのでしょうか。我が国は、世界でも例を見ない少子高齢社会が到来しています。高齢化率は上昇を続け、団塊の世代が75歳以上になる2025年を境に2030年まで、都心部でも一気に高齢化が進むことが予想されています(地方部ではすでに高齢化が高い状態です)。少子高齢化の影響は、医療費並びに介護費を増加させます。また、わが国は2010年をピークに年々人口が減少しており、しかも若者が少ない社会が到来しているため「人手不足」が深刻な問題になりつつあるのです。

 その解決策として、「デジタルを活用した社会構造の変革」いわゆる医療DXの推進が喫緊の課題として考えられているのです。医療DXによって、「医療費(介護費)の増加」「深刻な人手不足」といったわが国が抱える2つの課題を解決しようと考えているのです。

 2023年1月に始まる「電子処方箋」も、処方データをデジタル化し情報共有が進むことで重複投与が減少し、医療費削減につながると期待されています。また、人手不足に対しては業務効率化の観点で考えられており、「オンライン資格確認」では保険情報をリアルタイムで確認でき電子カルテに自動的に取り込めるようになること、「電子処方箋」では処方箋データをリアルタイムに確認でき薬局のシステムに自動的に取り込めるようになります。その結果、大幅な業務効率化につながると目論んでいるのです。

 

電子処方箋の準備事項

 電子処方箋を開始するには、電子署名を行うための準備(HPKIカードの発行申請等)とシステム事業者(電子カルテシステム等の事業者)への発注が必要となります。医師であることを電子的に証明するHPKIカードの申請については、日本医師会か・一般財団法人医療情報システム開発センター(MEDIS)に発行申請を行います。現時点では、申請から取得までに約3、4か月を要する可能性があるため早急な申請が必要となります。

(参考)

日本医師会電子認証センターhttps://www.jmaca.med.or.jp/application/

一般財団法人医療情報システム開発センターhttp://www.medis.or.jp/8_hpki/index.html

 

また、システムに関する準備としては、HPKIカードのICチップを読み取るためのカードリーダを用意し、電子カルテ等に「電子処方箋対応ソフト」のアップデートを行う必要があります。これは原則システム事業者から提供されることとなります。このソフトウェアのアップデート作業は、システム事業者によって対応が異なりますので、現在利用している電子カルテメーカー等に確認して準備を進めることとなります。

(次回に続く)