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開業時のタスクシフティング(委員会活動)

2022.12.23

 開業する際に院長の仕事はたくさんあります。そんな時、タスクシフティングの考え方を取り入れるかどうかで、院長の負担は大きく変わります。今回は、開業時のタスクシフティングについて解説したいと思います。

 

開業時はやることがたくさんある

開業の際、皆さんは全部自分でやらなくてはならないと思ってはいませんか。この考え方では、体がいくつあっても足りません。業者(医薬品・材料、医療機器、医療システム、外注検査会社、金融機関、税理士など)とのやり取りから、ホームページの開設・更新、備品の発注など、本当に大変です。開業時は開業コンサルや医薬品卸の担当者が、ある程度対応してくれますが、開業後もずっといてくれるわけではありません。契約が切れると、顧問契約を再度結ばない限り、対応はすべて先生に集まります。この業務を開業時に一人で抱え込んでいると、開業後も結局、院長が全部をしなくてはならなくなるのです。

 

スタッフに仕事をタスクシフティング

「最初が肝心」ですから、オープニングスタッフに割り振る「タスクシフティング」を実践してみてはいかがでしょうか。全部の業務をスタッフに完全に触れるわけではありません。当然、スタッフに振れるもの、振れないものはありますが、振れるものの方が多いと思われます。

おすすめなのは、「委員会」あるいは「係」の設置です。基本は2人1組でリスクを分散すると、スタッフも嫌がらないと思います。以下に委員会の例を提示しておきます。なお、人数が少ないうちは、兼務するのは問題ありません。開業して人数が増えれば、振り分け直しをすればよいのです。

 

委員会の実践例

 クリニックが開業する際に、最低限あった方が良い委員は、「美化委員」「標準化委員」「機器・システム委員」「広報委員」などです。以下に詳細な業務内容を例示します。

美化委員(整理整頓係)

備品の管理や清掃などを整理・整頓・清掃・清潔・しつけの「5S」の観点から行います。特におすすめなのが「定位置管理」です。置く場所をあらかじめ決め、必ずそこに戻す習慣をつけることです。モノが増えてくるとどうしても、どこにしまえばよいかが重要になります。そこを美化委員に任せれば、いちいち先生に聞かれることはありませんし、モノを探すときは美化委員に聞けばよくなります。診療側・事務側で1名ずつ選ぶと良いでしょう。

 

標準化委員

マニュアル整備やワークフローの作成を担当します。機器やシステム、施錠、清掃など、ヒトが動けばそこには、マニュアルが必要になります。標準化委員会は、マニュアルを作成したり、更新したりする仕事になります。これを先生がやっていると、時間がなくてマニュアルができずに、後回しになってしまいます。マニュアルがないと新しい人の受入れ時に混乱のもとですから、是非設置を考えてみてください。診療側・事務側で1名ずつ選ぶと良いでしょう。

 

機器・システム委員(業者対応係)

医療機器や医療システムの窓口を設置します。機器・システム委員は、医療機器や医療システムの不具合が起きた際に、まずこの委員に情報が集まり、業者に問い合わせを行います。これを設置することで、診療中に業者の対応をしなくてはいけないなんてことはなくなります。できればパソコンが得意な方を選ぶと良いでしょう。診療側・事務側で1名ずつ選ぶと良いでしょう。

 

広報委員

ホームページやSNS、院内掲示、リーフレットなどの作成・運営を担当します。日々のホームページやSNSの更新から、院内の掲示物の作成・管理、患者向けのリーフレットの作成などを行います。先生は、更新内容やアイデアを伝えるだけで構いません。この委員は、写真係も兼ねています。いまは画像で判断することが多くなっていますので、写真を日ごろから撮る係を決めていくことは重要です。できれば感性の若いスタッフを選ぶと良いでしょう。開業後は、この委員が重要な役割を担います。

 

これ以外にも「レクリエーション委員」を作っているところもあります。新年会や忘年会、クリスマス会などのイベントを担当します。基本的には看護師を中心とした診療チームと受付を中心とした事務チームはもともとありますので、そのバランスを見極めて委員会を設置すると良いでしょう。委員会活動は、セクショナリズムの解消にも有効なので、是非開業時ご検討いただければと思います。

最後に委員会のメンバーが決まったら、必ず院内の患者から見えないところに掲示しておきましょう。これがあるのとないのでは、実行レベルが変わります。委員会が立ち消えにならないように掲示することは忘れないで実践してください。