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人材育成手法-1

2023.01.16

今回からは2回にわけて、企業内人材育成をテーマにお話しします。

教育担当者の役割、人材育成戦略の考え方、研修デザイン手法、研修以外の育成手法など、企業内で行われる人材育成を幅広く解説いたします。

教育者としての訓練を受けていない

おそらく薬局やドラッグストアに勤務する教育担当者の多くは、現場で薬剤師経験を積んだのちに本社に異動となり、または現場と兼務する形で教育担当者の任に就いていることと思います。

したがって、教育学部を出たわけでもないし、教育者としての訓練を受けたわけでもない薬剤師が手探りで人材育成を行っているのではないでしょうか。

なんでグループワークが盛り上がらないのだろう?自分の説明をちゃんと理解してくれただろうか?教育後の評価ってどうしたらいいのだろう?そんな疑問を抱えていたりしませんか。

 

自信をもって職務に当たってほしい

私は、企業から教育担当者のための教育を依頼されます。教育担当者のレベルを高めることが組織力向上や業務改善につながると考えている会社さんからの依頼です。その考えにはとても共感します。

プレゼンが上手になるとか、半日の研修プログラムを作れるようになるといった目的ではなく、正しい考え方や手法で教育をデザインし、担当者としての心構えを身につけることで、自信をもって教育業務に当たれるようになってほしい。

教育担当者が会社の成長のカギを握っている、私はそう思います。医療は人で成り立っているから、人の成長こそが組織の成長であると考えています。

 

教育業務における悩みを解決し、組織の成長を担える担当者として活躍してもらうための2回連載です。


教育担当者の役割

担当者の職務範囲や責任範囲は会社によって異なりますが、一般的に教育担当者には大きく3つの役割があります。

 

1.     プランナー

・人材育成戦略の立案

・育成施策の立案

・カリキュラムの立案

・問題解決の立案

2.     インストラクター

・当日の運営、進捗管理

・講義・ファシリテーション

・資料作成などの準備

・効果測定・評価・フォローアップ

3.     プロデューサー

・企画提案・申請

・ヒト・モノ・カネの調達

・社内広報

・社内外の折衝

 

1.プランナーとしての役割

事業推進のためにどんな人材をどう育てるのかという、組織としての大きな育成戦略を描きます。したがって、経営戦略や事業戦略、中期経営計画などからブレイクダウンして考える必要があります。

そしてその育成戦略に則って年単位でのカリキュラムを作成します。何を、どうやって学習させるかという計画です。さらに一つ一つの研修や教育施策を企画します。

このようにデザイン、プランニングするのが教育担当者の大きな役割であり、ここにかなりの時間を割くことになります。育成戦略の描き方と問題解決の立案は特に重要な役割ですので、このあと詳しく解説します。

 

2.インストラクターとしての役割

教育担当者=集合研修の講師役というイメージを持たれることが多いと思います。

事前の準備から当日の運営、終了後のフォローといった講師の役割がこれに当たります。

 

3.プロデューサーとしての役割

見落としがちな役割ですが、これをしないとせっかくの企画を実現できません。

担当者の権限で企画を実行できることは少ないと思いますので、上長や経営層への企画提案が必要になりますし、それを実行するためのリソースを工面しなければなりません。受講対象者へのアナウンスや現場のマネジャークラスとの調整なども大事な役割です。

 

担当者として自分の守備範囲を知ることはとても重要です。

社内の職務分掌で定められていることはまれだと思いますので、自ら職務範囲や内容を定義し、社内でコンセンサスを得る必要があります。

自分の役割が明確になることで、社内での立ち回りもしやすくなるでしょう。

 

人材育成戦略の考え方

人材育成や教育は目的ではなく、手段です。何かを実現するために人を育てるという順番でなければなりません。では、何を目的とするのでしょうか?いわずもがな事業の成長です。事業を推進するために人材育成があります。

したがって、プランナーとしての役割のところで触れましたが、人材育成戦略はそれ単独で設計できるものではなく、上位戦略からブレイクダウンして考える必要があります。上位戦略を目的とし、下位戦略である人材育成戦略が手段という関係になっていなければなりません。決して経営者の思い付きや教育担当者の好みで教育が設計されるものではありません。

事業計画や目標を達成するために設計された育成戦略だからこそ、従業員に教育を受けてもらう理由を説明できるのです。

 

 

人材育成戦略とは

人材育成の戦略とは、自社として育てたい人材像、どうやってその像に近づけさせるかという方針、育成対象者、スケジュール、大まかな施策などのことです。

在宅医療に力を入れるという事業方針があった場合、どの程度の知識やスキルをもった人材を育てるのか、育成費用をかけて短期間で大量に育てるのか、屋根瓦式のOJTで時間をかけて少数精鋭を育てるのか、といったことを設計します。

 

問題解決のための人材育成

たとえばエリアマネジャーから「現場のヒヤリハットが増えているから研修をしてほしい」と依頼されたらどう対応しますか?

「全店の薬局長を対象に医療安全に関する集合研修を開催しよう」と研修ありきで考えてはいけません。

「ヒヤリハットが増えている」という問題の解決策として、本当に集合研修が適しているのか?そもそも本当にヒヤリハットが増えているのか?原因は何か?ということに目を向けて、問題解決を進めなければなりません。

仮にヒヤリハットが増えていることが事実だとして、大事なのはその原因です。

職場の緊張感が薄いことが原因なら研修を実施するよりも上長からそのことを現場に指摘して、当事者たちの意識を高めることが解決策となるでしょう。

または作業動線が悪いことが原因なら、やはりこれも教育担当者の出番ではなく、現場で解決してもう必要があります。

業務手順がそろっていないことが原因の場合はどうでしょう?業務手順書を作成するといった解決策が浮かびます。それが教育担当者の職務範囲かどうかを判断することになります。

知識不足が原因なら、ようやく教育担当者の出番です。

このように問題発生の原因をつきとめないと正しい解決策は導けません。

原因次第で解決策は変わるので、研修ありきで考えてはならないということがお分かりいただけると思います。

上位戦略と紐づけて人材育成戦略を立案する一方で、このように現場からのリクエストで人材育成を考えるケースもあります。教育担当者は問題解決のプロセスコンサルタントでなければならないのです。

 

今回は教育担当者の役割を中心にお話ししながら、その中でも特に重要な人材育成戦略の考え方と問題解決の視点について解説しました。

次回は研修の設計方法、教育効果測定、研修以外の育成手法についてご紹介いたします。

 

著者紹介

富澤 崇 株式会社ツールポックス代表取締役

1998年東京薬科大学卒、千葉大学博士課程修了(薬学博士) 山梨大学医学部附属病院、クリニック、複数の薬局で勤務。2001年から城西国際大学薬学部の教員として約20年勤務。大手チェーン薬局にて人事・教育・採用部門に従事。2017年に株式会社ツールポックスを設立。経営コンサルティング、キャリア支援、従業員研修などのサービスを展開。北里大学客員准教授兼務。