• 調剤
  • #薬局経営

コラムNo.13 業務の標準化

2023.01.31

 

薬局においては、直接的な調剤行為以外に事務作業が多く、それが対患者サービスに割く時間を圧迫している。今回は、事務作業を中心とした業務の標準化の手法を紹介する。なお、薬局の規模や患者サービスの種類や頻度によって必ずしも当てはまらないことも考慮する必要がある。

【コラム目次】

  1. 業務の標準化
  2. 属人化のデメリット
  3. なぜ業務標準化が必要か
  4. 標準化の具体的な手法


業務の標準化

 業務の標準化がされていないと、属人化や品質のばらつきが起こってしまうなどの危険性がある。標準化をおこなうことで、業務品質の安定や業務効率化につながる。

特に、オンライン資格確認や電子処方箋の導入期である20222023年においては、一時期、受付業務においては、従来業務と新たな業務と2系統の業務が存在することで複雑になる。従い、この時期に標準化を推し進めることは患者サービスの質の低下や遅延による待ち時間増加を防止するには重要な要素である。

 

属人化のデメリット

属人化とは、業務についての進め方や進捗状況などの情報を、担当しているスタッフしか把握していない状況を指す。もちろん、ここでは薬剤師による患者対応など専門性の高い業務を対象としていない。

 

業務標準化の原則は、経験値・知識を最小限にした誰にでもできる仕組みと手順を確立することとなるが、小規模あるいは個店経営の薬局であれば、従業員の勤務期間が長くなるにつれ、属人化され、業務の効率化や質の向上への取り組みへの阻害要因となる。

 

なぜ業務標準化が必要か

 複数のスタッフが働いている薬局では、個々人の能力や経験値の差異があることが多い。そのため、知識やノウハウの平準化と蓄積により、スタッフの異動や休職などに対応できる必要がある。さらに、管理者(経営者)が業務の進捗を把握するためにも、「誰が、いつ、何を、どうするか」がわかるようにする可視化は必要だ。さらに、標準化に取り組むには、スタッフ全員がその意義と取り組んだ結果(成果)について、チームとしての共通の認識を持つ必要がある。

 

標準化のメリット

 標準化による業務の可視化で、情報の共有化ができ、業務そのものの効率化が進む。結果として、従業員の負担が軽減され、業務の意義や成果も客観的になり明確化できる。

 

標準化のリスク

 標準化された業務は、機械的に継続され、改善するきっかけを失う恐れがある。単一化したルールに固執すると、発展を妨げる可能性があることに注意が必要である。

標準化の具体的な手法

 

1.現状の確認と課題の抽出

標準化のための課題とは、主に以下の3点を中心に業務を抽出する。

標準化の課題

ポイント

業務で滞りがあること

「ムリ」、「ムダ」、「ムラ」のあるものを抽出する

業務効率が下がっていること

属人化している業務

 

2.標準化を優先すべき業務を決める

 属人化している業務ばかりに注目するのではなく、標準化による改善効果が高く、時間を要しない業務を優先する(右図)。

標準化には、当然、ICTを利用する方法もあり、コストも要することも十分考慮する必要がある。

ただし、慣れていない場合は、一度に複数の業務改善を目指さず、一定の成果が出た後に着手する。

 

3.業務フローを整理・分析

 業務の標準化に向けて、法令遵守や優先すべき事項など、業務遂行に必須の条件を盛り込み、検討する。

業務フローを整理・分析するために、担当者とともに詳細を明確にする。フローチャートなどを活用し、つぶさに「見える化」するのがポイント。できる限り、作業工程や作業頻度、難易度などを定量化し、問題点を洗い出す。

 

4.業務フローや手順を設計(マニュアル・手順書化)

 業務フローの改善も加味し、具体的な手順を設計する。マニュアルや手順書は、ポイントを明示し、詳細な作業レベルまで記載する。同時にSOP(標準作業手順書)を作成する。

また、記載内容は提携フォーマットとし、目的・禁止事項・手順をそれぞれ箇条書きを中心に記載する。内容により、図または写真を組み込む。

  

5.テスト運用とPDCA

 作成したマニュアル・手順書に従って、「標準化」のテストを進める。担当者だけでなく、その他のスタッフからもフィードバックを受け、改善点があれば修正し、マニュアルをブラッシュアップしていく。必ずしも完成形にこだわる必要はなく、調整を行いながら進める必要がある。また、マニュアルはPDCAを回しながら、より効率の良い、汎用性のあるフローに改善していかく必要がある。