• 医科
  • #電子カルテ
  • #経営

非増患時代のリピート戦略

2023.04.10

 

長引く新型コロナウイルスの感染拡大は、クリニック経営に大きな影響をもたらしました。感染対策として、マスク着用、手指消毒、3密(密集・密閉・密接)を避ける行動などの新常態が一般化し、その結果、インフルエンザやかぜ症状など季節性疾患の患者が大幅に減少しています。いま、患者の受診数がなかなか増えない「非増患時代」が到来しており、患者獲得のための戦略に対する変更が必要になっています。

【目次】

  1. 非増患時代の到来
  2. 再来患者に注目する必要性
  3. CRM、ロイヤルカスタマー
  4. 患者をリピートさせるためには
  5. 患者は不満・不安があるからリピートしない
  6. 定期的に患者が受診する仕組みづくり


1.非増患時代の到来

ビフォアコロナの時代、冬になるとかぜ症候群やインフルエンザなどの季節性疾患は、程度の差さえあれ、一定の流行が発生していました。その流行を見越して、多くのクリニックは、冬は患者が増えると予想してきました。つまり、クリニックは、「新規患者の獲得」を重視した戦略をとっていたと言えるでしょう。

コロナ禍では徹底した感染予防による季節性疾患が減少し、感染を恐れる患者の受診控えなどの影響もあり、新規患者の増加に期待できない状況が生まれています。季節性疾患を当てにできない「非増患時代」が到来しているのです。

 

2.再来患者に注目する必要性

長引くコロナ禍は、ワクチン接種などの効果で徐々に収束の方向に進んでいます。しかしながら、「アフターコロナ」となっても、しばらく感染意識が高い状況が続くと予想されます。このような状況においては、新規患者ではなく再来患者に注目する必要があるのです。

クリニックが、一定の患者数を確保し続けるためには、「患者のリピート率」が大切な指標となるのです。再来患者をいかに循環させるかを戦略の柱とする必要が出てきています。

 

3.CRM、ロイヤルカスタマー

さて、再来患者はどのようにしたら増えるのでしょうか。一般の業界では近年、CRM(カスタマー・リレーションシップ・マネジメント)やロイヤルカスタマーという考え方に注目が集まっています。顧客と企業の関係を見直し、何度もリピートする顧客や口コミ、紹介などを生み出す顧客を重点的にフォローする考え方です。この考えは、医療にも応用できると考えます。顧客を患者に置き換え、PRM(ペイシェント・リレーションシップ・マネジメント)という考え方が必要です。

 

 

4.患者をリピートさせるためには

患者をリピートさせるためには、「なぜ次回来院する必要があるのか」を説明する必要があります。通常、患者は次回来院する必要性分かりません。医師から具体的に「1週間後に来てください」と言われればまだしも、「次回来てください」という言葉では強制力もほとんど働かず、もし状態が良ければ、自己判断で「治った」と思って来院しないかもしれません。このままではリピートは生まれないのです。

そこで、次回来院の「目安となる日時」をしっかり伝える必要があるのです。また、最近導入が増えてきている「予約システム」を活用して、次回の予約を取ることで、再受診率を向上させることが可能です。日本人はまじめですから、医師と約束した時間には、よほどのことがない限り、患者は来院しようとするものです。本当に次回来て欲しい患者には、しっかりと「次回の受診の必要性を伝える必要」があるのです。

 

5.患者は不満・不安があるからリピートしない

患者はクリニックに対して「不満」があれば再び来院しようとは思いません。患者アンケートを行うと、クリニックに対する不満の上位は、「待ち時間」と「接遇・対応」という結果です。例えば、過去に長く待たされた経験があったり、医師やスタッフの対応に不満があったりすれば、自然とクリニック・病院への足は遠のいてしまうものです。その結果、他のクリニック・病院を受診してしまっているかもしれません。まずは、患者の「不満」の声を満足度調査などから集め、ひとつひとつ解消していくことが大切です。サービス向上なくしてリピート率は向上しません。

 また、感染症はクリニックに受診することへの「不安」を増大させています。患者の中には、クリニックは感染リスクが高い場所と考えている人もいるでしょう。このこともクリニックへ足を遠のかせる原因となっています。クリニック・病院はホームページなどで、感染対策の取り組みをしっかり伝え、「安全な場所である」ことをPRをし続ける必要があるのです。

 

6.定期的に患者が受診する仕組みづくり

また、患者が定期的に受診する仕組みづくりも大切です。コロナ禍で急激に冷え込んだ健康診断を例に考えてみましょう。健康診断で病気の可能性を指摘され、クリニックを受診し、精密検査の結果、慢性疾患が発見されたとします。慢性疾患とは、高血圧症や糖尿病、脂質異常症などのことです。この場合、定期的な受診が必要になり、定期的な検査や指導、処方などが必要になります。

このように、「健康診断」は慢性疾患を発見するための入り口となるのです。再来患者を増やすためには、「慢性疾患の患者を発見できる体制づくり」が必要なのです。たとえ精密検査の結果、大きな疾患が見つからなかったとしても、年1回の健康診断を受診いただくことで、患者との定期的な継続関係が結べることになるのです。

この定期的な継続関係は、今風の言葉でいえば「エンゲージメント」となります。エンゲージメントとは思い入れ、愛着と訳されますが、患者が愛着を持って定期的にクリニック・病院に来院する仕組みを構築する必要があるのです。