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「『医療DX令和ビジョン2030』の実現に向けて」(2)

2023.06.05

2023年4月13日に「『医療DX令和ビジョン2030』の実現に向けて」という提言書が自民党より公表されました。その中で、多くの医療機関にとって影響が大きいであろう「電子カルテ情報の標準化」について解説します。

【目次】

  1. 電子カルテ情報の標準化等
  2. 電子カルテの普及
  3. 標準型電子カルテの開発
  4. 部門別システムの標準化の検討

前回のコラム


「医療DX令和ビジョン2030」において、医療DX政策の3つの柱として、全国医療情報プラットフォーム電子カルテ情報の標準化等診療報酬改定DXーを示しています。今後政府は、オンライン資格確認で構築されるネットワークを「全国医療情報プラットフォーム」として拡充整備を図り、そのインフラ上で、資格情報、薬剤情報、特定健診情報、そして電子カルテ情報と順次拡大していくことで、全国の医療機関が情報共有できる社会の構築を目指しています。

 

電子カルテ情報の標準化等

 国内に40社を超える電子カルテベンダーが存在しており、ベンダーごとに異なる情報の出入力方式が採用されており、医療機関間での情報共有を困難にする原因となっています。電子カルテの入れ替えが難しいことも、このことに起因していました。

これまでも、政府はデータヘルス改革において、電子カルテ情報の標準化を進める施策は順次行われており、20223月にまずは「3文書6情報1」を厚労省標準規格として採択し、情報共有にあたっての標準規格を決定するとしています。

 

1 3文書:診療情報提供書、退院時サマリー、健診結果報告書

6情報:傷病名、アレルギー情報、感染症情報、薬剤禁忌情報、検査情報、処方情報

 

そのような状況を受けて、「医療DX令和ビジョン2030」においては、「既に電子カルテが導入されている医療機関の電子カルテ情報の標準化については、『全国医療情報プラットフォーム』における情報の共有・交換及びPHRの推進の前提となるものであり、期間を定めて、集中的に取り組みを進める」としています。

また、標準化に関する交換方式としては、「HL7 FIHR※2」を交換規格として、交換する標準的なデータの項目および電子的な使用を定め、それらの仕様を国として標準規格とする方向性が示されています。

 

2 HL7 FIHR:コンピュータ間での医療⽂書情報のデータ連携を標準化するための国際規格。HL7 version 2.5は策定されてから16年が経過し、後継として2005年にversion 3XML)が標準として確立された。現在は、オープンなWeb技術を採用し、相互運用性を確保できる実装しやすい規格としてHL7 FIHRが注目されている。

(出典)第1回医療DX推進本部幹事会2022.11.24(内閣府)

電子カルテの普及

また、「(電子カルテの)普及率が未だ5割弱にとどまる中小規模の医療機関等について、その負担が最小限になるよう考慮しつつ、メリットの享受と電子カルテの普及が実効的になるよう、すべての医療機関への導入及び普及を目指し、その実現は国が責任をもって取り組む」としています。このことからも、近い将来、電子カルテに係る補助金などが地域の自治体を通じて小規模病院および診療所に対して準備されることが予想されます。

 

標準型電子カルテの開発

また、電子カルテの普及に当たり官民一体となって「クラウドベースの標準型電子カルテ」を開発するとしており、「医療DX令和ビジョン2030」のもう一つの柱である「診療報酬改定DX」で検討が進められている「共通算定モジュール」と連携できるものが想定されています。電子カルテとレセコンがセットで導入されることを想定して開発を進めようとしているのです。

また、開発に当たっては「現行の電子カルテを標準化型電子カルテに入れ替えていく等により、レガシーな技術から早急に脱却し、モダンな技術による電子カルテシステムの構築を推進する」としています。この言葉からも、従来の医療機関で多く採用されてきたオンプレミス型電子カルテではなくWebベースのクラウド型の電子カルテ開発がイメージされています。

今後の具体的な流れとしては、令和4(2023)年度に関係者へのヒアリングが行われ、令和5(2024)年度から調査研究事業として開発が始まるスケジュールが示されています。

 

部門別システムの標準化の検討

また、電子カルテと連携する「部門システム」についても、「医療DX令和ビジョン2030」では言及されています。「現状で、診療科別に多数存在する部門別システムについては、現状において標準化やクラウド化が十分進んでいない。このため、まずは医療機関における部門システムの現状を調査するとともに、クラウド化等を優先的に進める部門システムについて、検討を進める」としています。

標準型電子カルテと共にそれと連携する部門システムについても、標準化を進めることが医療機関のDX推進にとって重要であることが認識されています。


出典:「医療DX令和ビジョン2030」の実現に向けて(自民党)

https://storage.jimin.jp/pdf/news/policy/205658_1.pdf