• 調剤
  • 新薬情報

【シリーズ】新薬情報① 2021年に発売された新薬の総括 ~ 新薬ラッシュのアトピー性皮膚炎

2021.12.01

ありふれた慢性の皮膚疾患、アトピー性皮膚炎(AD)に対する新薬の上市が相次いでいる。中でも目立つのがJAK(ヤヌスキナーゼ)阻害薬で、2021年はこのクラスの4成分(経口剤3、小児用外用剤1)がADに承認された。経口剤は、中等症から重症患者で皮膚炎の消失が期待できるほどの有効性が特徴。その一方で、長期使用時の安全性や高薬価が課題となる。

表 2021年にアトピー性皮膚炎に使用可能となった薬剤(いずれもJAK阻害薬)

1月 オルミエント錠 適応追加(既存治療で効果不十分なアトピー性皮膚炎)

6月 コレクチム軟膏0.25% 発売(小児用製剤の追加)

8月 リンヴォック錠 適応追加(既存治療で効果不十分なアトピー性皮膚炎)

11月 リンヴォック錠30mg発売(アトピー性皮膚炎の高用量対応の新規格)

12月 サイバインコ錠 発売(既存治療で効果不十分なアトピー性皮膚炎)

 

■「ステロイドバッシング」を経て… 

ADの治療は1980年代から90年代にかけて、食事制限の必要性やステロイド外用剤の副作用に対する懸念をめぐって混乱したが、2000年に日本皮膚科学会が治療ガイドラインを策定して以降は、ステロイド外用剤による皮膚炎の制御と保湿剤による皮膚バリア機能の補正を基本とする標準治療が周知されている。

半面、ステロイド以外の新たな治療法の開発は免疫抑制剤の外用剤・経口剤などにとどまっていたが、この数年間、新薬が相次いで投入されるようになった。開発段階の新薬候補・適応追加候補なども計10以上あり、多くの小児~思春期~若年成人の患者を悩ませるADの管理が容易になると期待されている。

■有効性・安全性・経済性のバランスいかに 

特に2021年承認のJAK阻害薬・リンヴォックとサイバインコは患者の状態に応じて増量可能で、有効性が高まる。例えば、臨床試験でリンヴォックの高用量を投与した群では、4カ月後に約6割の患者が「皮膚炎がない/ほとんどない」状態を達成していた。

ただ、経口JAK阻害薬をめぐっては、感染症や悪性腫瘍の発現、心血管系事象の発現といった安全性に関する懸念が拭えない状況だ。ADでは、関節リウマチと比べれば若年(12歳以上)の患者に投与されることが多いと見られるが、そのことが有害事象の発現にどう影響するか、今後のデータの蓄積が待たれる。

また、経口JAK阻害薬の1日薬価は5000円弱。前述のように増量した場合は75008000円ほどになる。患者・保護者も、保険者・自治体も、皮膚炎の改善でQOLが向上することと医療費とのバランスが頭をよぎるのではないか。

■新薬を含め 患者ごとに治療を組み立て 

こうした安全性、経済性、それに根本治療ではないことを踏まえた着地点として、「期間限定の使用」が考えられる。厚生労働省が策定した各薬剤の最適使用ガイドラインにも、6カ月程度、寛解が維持された場合には一時中止を検討することが盛り込まれた。さらに短い週単位の使用とする皮膚科医の意見もある。

いずれにせよ、主たる治療薬がステロイドと抗ヒスタミン薬に限られていた時代からすれば、皮膚炎を効果的に抑制できる手段が増えるのは大きな進歩だ。その先に見えるのは、患者ごとの治療ゴールに応じた有効・安全・経済的な治療の組み立てと適宜の軌道修正だと言える。

その実現には、保湿剤の継続を含めたきめ細かな服薬指導やフォローアップが欠かせない。窓口で患者や家族から経口JAK阻害薬の安全性に関する質問や医療費に対する疑問を受ける場面も考えられるし、このクラスに特徴的な副作用である帯状疱疹は速やかな対応が求められる。AD患者と接する調剤薬局の役割も重要性を増すだろう。

 

(筆者)

佐賀 健  メディカルライター