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令和3年介護報酬改定を受けて

2021.02.22

令和3年介護報酬改定を受けて

株式会社スターパートナーズ代表取締役
一般社団法人介護経営フォーラム代表理事
脳梗塞リハビリステーション代表
MPH(公衆衛生学修士)
齋藤直路

 

 

  • 大きな転機となった令和3年の介護報酬改定

令和3年の介護報酬改定は大きな転機となりました。改定の目玉となる科学的介護の推進については、介護ソフト各社の対応や事業所での対応も進み、WAMの「2021 年度(令和 3 年度)介護報酬改定に関するアンケート調査」によると、LIFE の利用状況は特養で 88.2%、通所介護で 78.1%、科学的介護推進体制加算の算定状況は、特養で70.6%、通所介護が 57.9%でした[]。当初は新たに加わる業務負担への不安から、導入には様子を見たいという事業所も多くありましたが、かなり高い割合の事業所が算定している状況で、この取り組みは今後も進んでいくように感じています。

 

一方、そんな中でも「まだ対応の検討を開始できていない」事業所もあります。現在の業務との兼ね合いや人員の関係等、対応に苦慮される理由はあるかと思いますが、LIFEは今後の介護報酬の根幹となるシステムになります。現に令和3年の改定で創設、変更された加算にはLIFEとの連携をしなければ算定できないものがいくつもあります。現在の算定率を加味すると、科学的介護推進体制加算が基本報酬に内包されたり、あるいは上位加算を取得するための算定要件に今後なる可能性もあります。介護報酬全体が抑制方向にある中では、LIFEを活用しながら、しっかりと今後の報酬改定に対応していかなければ売り上げを維持することは難しいでしょう。

 

令和3年介護報酬改定は「科学的介護推進体制加算」や「ADL」「機能訓練」関係、「口腔・栄養」関係、介護老人福祉施設の「褥瘡マネジメント加算」「排せつ支援加算」「自立支援促進加算」等がLIFEとの連動を要件としています。しかし、LIFEに報告する基本事項の1つである「認知症」関係では、まだ加算とLIFEとの連動が結びついているものはありません。

 

これは「認知症」の項目だけ唯一例外として認められたと考えるのではなく、次期改定以降で「認知症」関係の加算も同様の対応となると考えていくべきでしょう。特に「ADL維持等加算」や「褥瘡マネジメント加算」「排せつ支援加算」等、アウトカム評価の概念も取り入れられてきています。「LIFEとの連動を通じたアウトカム」が、評価される流れとなっているといえるでしょう。その根幹となるLIFEとの連携は、ゆくゆくは必ず対応していかなければならないと考えられます。

 

  • アウトカム評価の拡充

令和3年の介護報酬改定での大きな柱のもう1つとして挙げられるのがアウトカム評価の拡充です。その最たるものは「ADL維持等加算」で、単位は限定的ながら引き上げとなり、対象事業所も特定入居者生活介護や介護老人福祉施設へと拡充しています。また、先述の「褥瘡マネジメント加算」「排せつ支援加算」についてもアウトカムの概念が取り入れられています。

 

介護報酬におけるアウトカムの拡充は今後も続いていくものと考えられます。「口腔・栄養」や「認知症」、上記の「自立支援促進加算」等についても、次期改定以降にはアウトカムの概念が導入されるのではないかと考えています。

 

アウトカムを出すためには、総合的な介入が必要となります。例えば「ADL」の改善には個別機能訓練での身体的なリハビリテーションを通じた介入がフォーカスされがちですが、実は「栄養」の観点も重要となります。以下は、弊社でおこなったデイサービス事業所での利用状態の調査結果の一例になります。(栄養状態の評価にはネスレ社の「簡易栄養状態評価表(MNA-SF)」を利用しています)

 

  

「運動特化型半日型デイサービス(登録100名程度)のケース」(スターパートナーズ調べ)

 

機能訓練を目的とした、平均介護度の比較的低い事業所でも、低栄養もしくは低栄養リスクを抱えた利用者が約4割存在しているという結果になりました。適切な機能訓練を実施していたとしても、低栄養に対するスクリーニングと適切な介入ができていなければ身体機能の改善、ひいては基本動作やADLの改善に結び付けることはより困難となります。今回の改定で「栄養」関係の加算が強化された背景の1つであるともいえるのではないでしょうか。褥瘡の発生や改善が栄養と大きく関わることを踏まえ「褥瘡マネジメント加算」の算定要件においても関与する専門職として管理栄養士を明記されました。この様に、単一の介入ではなく総合的な介入で、自立支援を促進しようという試みが介護報酬ではなされているのです。

 

  • 新加算に見えてきた傾向

その他、今回の改定で創設された加算にもいくつかの傾向が見られてきました。

 

介護老人福祉施設の「自立支援促進加算」は、書式に報告するべき項目が多く、一部の事業者からは算定が困難であるという声も聞かれました。事実、提示されている書式には記入すべき項目がかなり多くあります。例えば「離床・基本動作」の項目では離床時間や座位の保持時間、立ち上がりの回数項目についても記録が求められています。「ADL」での基本的な日常動作に加え、「日々の過ごし方」では外出の回数やアクティビティの回数、「訓練時間」では機能訓練の時間などの記録が必要となります。

 

「自立支援促進に関する評価・支援計画書」[ⅱ]

 

一方で、ユニットケアで用いる24時間シートを用いて日々の生活をモニタリングしていた事業者では、概ねその内容を反映することが算定を実現できたという事例もありました。「画一的・集団的な介護又は個別的ではあっても画一的な支援計画による取組を評価するものではないこと」「入所者及びその家族の希望も確認し、入所者の尊厳が支援に当たり十分保持されるように留意すること。」といった加算の趣旨に合致した結果、算定につながったと考えられるでしょう。

 

「栄養マネジメント強化加算」「栄養アセスメント加算」の創設についても反響がありました。加算単独で収支を取ることは難しいが「栄養」関連の加算を取得することで地域のケアマネジャーからの評価が上がり、紹介が増加したという事業所もあるようです。グループ内や併設事業所との連携で算定が可能な事業所では、是非、算定を目指していただきたい加算です。単独での管理栄養士の雇用が難しい場合も、周辺事業所や栄養ケア・ステーション(管理栄養士・栄養士が所属する、日本栄養士会の認定を受けた地域密着型の拠点)との連携を通じて、是非、算定の道筋を探していただければと思います。

 

「入浴介助加算(Ⅱ)」についても運用を開始する事業所が増えています。加算の目的が「自身で又は家族・訪問介護員等の介助によって入浴することができるようになるよう、必要な介護技術の習得に努め、これを用いて行われるものであること」とされていることから、居宅に入浴設備がない、居宅での入浴が望めないケースなど、実質的に加算の算定が困難であるというケースが多く、先述の「2021 年度(令和 3 年度)介護報酬改定に関するアンケート調査」では、算定率は21.6%にとどまっています。基本的にはご家族やケアマネジャーの了承を得ることも考慮すると、可能な範囲での算定に留まるというのが現実的な対応となりそうです。

 

 

 

以上の様に、実際の運用を進めていく中で見えてきたものも多くあります。最新の事例なども収集いただくことで、はじめは検討していなかった加算の対応等についても、その可能性について改めてご検討いただけるのではないかと考えています。

 

業界の動向に合わせながら、随時、最新の情報をお届けして参りますので、是非、引き続きご参考にしていただけますと幸いです。

 

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[ⅰ] https://www.wam.go.jp/hp/wp-content/uploads/211117_No007.pdf

[ⅱ] https://www.wam.go.jp/gyoseiShiryou-files/documents/2021/0317103515238/ksvol.934.pdf

[ⅲ] https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/000773563.pdf