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薬局におけるコロナ検査について

2022.02.21

「薬局におけるコロナ検査について」

 

薬局薬剤師が恐れることといえば、数年前までは「調剤バッシング」だったが、今では「医薬品の出荷調整」へとすっかり様変わりしてしまった感がある。非常事態がひとたび起こると、さまざまなことの本質が顔をのぞかせるもので、薬局業務においては、後発医薬品の一連の品質問題を契機として、「対物業務」を軽視することの危険性が如実に示されている。一方、本稿を執筆している20222月中旬の時点では、医療用抗原検査キットも品薄となっている。

 

現在、「発熱などの自覚症状がある患者が、抗原検査キットを手に入れて使用したところ陽性だった」という場合、PCR検査による確定診断までのタイムラグにおける対応方法は自治体によって分かれるようだ。PCR検査の結果を待たずに保健所と連携し療養を開始する自治体もあれば、確定するまでは通常の風邪として対応する自治体も存在する。

 

薬局による抗原検査キット販売の当初は、抗原検査の偽陰性の問題をどのように使用者に理解してもらうか、どのような条件で使用するか、といった点に細心の注意を払っていた。そのため、購入者には同意書への署名を求めるといった運用で始まった。この運用が問題なければ、薬局から後日フォローアップの連絡を入れて、使用したかどうか、陽性だったかどうか、などの情報を集計するという取り組みにも意義があったかもしれない。しかし、それ以前に検査キット自体が供給できないという状況は、「対物業務なくして対人業務なし」という厳しい現状を象徴している。

 

岸田政権が昨年11月に立ち上げた「経済安全保障法制に関する有識者会議」では、今月に入って「経済安全保障法制に関する提言」を取りまとめたのだが、そこでは「サプライチェーンの強靭化」がテーマとして挙げられている。その脚注として、昨年の夏にアメリカとEU両政府の報告書が「戦略分野」として取り上げた分野・品目が紹介されており、いずれにおいても「半導体」や「電池」などとともに「医薬品」が指定されていることから、我が国の戦略分野としても医薬品が指定されることは確実だろう。

 

薬物治療というものを、原料から患者の体内までのサプライチェーンとして捉えた場合に、薬局薬剤師はその一端をどのように担うべきなのか?グローバル化、企業経営の効率化が今後も進むという方向性が変わることは考えにくい。すると、不確実な事態に対する脆弱性という課題は今後も大きくなっていくと考えられる。おそらく、「どんな医薬品でも発注すればすぐに手に入る」ことを無条件に仮定できる時代ではもはやなくなっており、従来の「対物業務」を新しい環境に適応させていく必要があるのではないだろうか?たとえば、在庫が限られた医薬品を「マンツーマン」や「面分業」の区別なく全ての薬局が在庫することは望ましいのだろうか?あるいはこれらのビジネスモデルの評価をアップデートし、地域全体での薬局の機能分担を検討してもよいのではないかと筆者は考える。

「薬業時事ニュース解説」

薬事政策研究所 代表 田代健