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透析クリニックのシステム化ワークフロー

2022.05.10

透析クリニックのシステム化は、①電子カルテ入力、②透析システムと電子カルテの連携、③検査管理の3点を考える必要があります。透析クリニックの特徴として、外来と入院の中間に位置するようなスタイルのため、外来と入院の特性を考慮したシステム構築が必要となります。

 

電子カルテ入力のスピードアップ

透析では一度に多くの患者を巡回して診察するため、電子カルテはいかに素早くカルテ作成を完了させるかが重要になります。そこで、入力スピードをアップする方法を考えなくてはなりません。スピードアップの秘訣は、「セット化」、「クラーク運用」にあります。前者は電子カルテ操作の「省力化」を意味し、後者は電子カルテ操作の「業務分散」を意味しています。電子カルテの入力業務を減らし、スタッフと業務を分担するのは、業務効率化を行う上で必要となります。

 

診療行為と病名のセット化

「セット化」については、主訴、所見、検査、処置、処方、そして病名のすべてをセット化することで、入力の手間を大幅に削減することが可能です。また、生活習慣病等の「特定疾患療養管理料」の算定のための指導コメントも事前に複数登録しておき、選択制にしておくことで、入力の省力化が可能となります。毎回同じワンパターンなコメントは、監査時に指摘されやすいので、毎回可能な限り異なるコメントが登録できる工夫が必要です。

セットについては、最初に頻出するパターンごとにいくつかセット化しておき、後から追加・変更を繰り返すことで、より良いセットが作られていきます。また、セットは医師やクラークが覚えやすいように名称を付けるとともに、配置についても、疾患ごとにまとめて配置しておくと探しやすくなります。

忘れてはならないのは、セットを更新した際には、必ず情報連携を行うことです。これは電子カルテを入力する誰もが心得て欲しいところです。いつの間にかセットが更新されていたり、配置が変わったりすると、トラブルのもとになります。

 

透析システムの連携

 透析管理を記録する透析システムと電子カルテの連携が最近では進んでいます。この連携を行うことで、記録の効率化が進みます。透析患者の治療の流れから考えてみましょう。

①透析準備

・透析指示・処置指示・透析スケジュールを透析システムに登録

・前体重の測定結果を透析システムに登録

・前体重データをもとに透析条件を計算し、透析システムとコンソールへ送信

・電子カルテで「透析オーダーセット」を登録(透析システムに登録し電子カルテに連携する場合も)

②透析中

・透析中に測定したバイタル情報を記録

・透析に合わせて薬剤投与を実施

・透析中の観察内容を透析システムに記録(後から電子カルテに取り込める)

③透析後

・後体重を測定し、透析システムに登録

・透析記録を完成し、電子カルテにデータ送信

・指導を行った場合、電子カルテで指導内容を登録

この流れからもわかるように、透析システムと電子カルテをシームレスに連携を図ることで大幅な省力化が可能になります。透析の流れの中で、どこが自動化でき、どこが手動となるのかを十分に確認を行ってください。

 

クラークの動き

 「クラーク」については、まず医師とクラークの役割分担を行います。役割分担とは、どの部分の入力を医師が行い、クラークは何を担うかを決めることです。これを決めておくことで、医師とクラークの連携がスムーズに進みます。

具体的には、どんな状況の患者にどのセットを選ぶかを、あらかじめ決めておきます。当然、状況が変われば内容も変わりますので、医師の診察を通して、修正が必要になります。ただし、患者の症状からどのセットを選ぶかを訓練することで、医師の動きに伴奏することが可能になります。これは疾患への理解とともに、経験が必要になりますので、長い目で育成していただくことをお勧めします。

 また、透析は治療時間が長く、患者にストレスがたまります。医師以外にスタッフがいることを患者が好まないことも多くあります。クラークの配置や服装、キーボードの入力音などに最善の注意を払う必要があります。クラークは医師の黒子に徹し、できるだけ存在を消すことがポイントです。また、クラークは電子カルテの入力業務に集中しすぎないように、常に患者に配慮しながら行動してください。

 

検査管理

 透析の「検査」は、X線撮影、血液検査などが考えられます。これらの検査の流れを、医師、看護師、クラークがしっかり理解しておくことでスムーズな運用が可能になります。具体的には、検査の実施や、検査結果のカルテ記載、結果の患者説明などを整理しておくことをお勧めします。

 システム化のポイントは、検査結果の取り込みにあります。画像の結果は画像ファイリングシステムにまとめ、数値の結果は電子カルテで管理するというのが一般的な運用方法です。

 

まとめ

以下に透析のシステム上のポイントを5点まとめましたので、参考になさってください。

①電子カルテはセット化、クラーク運用でスピードアップを図る

②電子カルテと透析システムの連携は、治療の流れの中で細部まで確認

③患者への指導を行った場合は、着実に電子カルテに記載

④検査は、実施、結果取り込み、説明をセットで考える

⑤画像結果は画像ファイリング、数値結果は電子カルテで管理する