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コラムNo.3 AIと電子薬歴
2022.06.20
AI
AI(Artificial Intelligence)の利用が増加している。
「AI技術が発展し、技術的特異点、すなわちシンギュラリティが2045年に到来する」といった話がある。人間の能力を超えたAIの登場ということであろうか。その真偽はともかくも、薬剤師の仕事に、徐々に入り始めている。
ご存知かもしれないが、一概にAIといっても、複数の種類があり、すでに一般的に利活用が進み始めているものは、機械学習の分野であり、ディープラーンニング(深層学習)による利活用は、一部が実用化され、さらに利用が進みつつある段階である。
とある調査では、2020~2025年度におけるAI主要市場の年平均成長率は18.7%で、2025年度には1,200億円に達するとの予測が出ているようである。また、中でも2020年度に最も高い売上金額最も記録したのが機械学習プラットフォーム市場で、前年度比44.0%増だとのこと。
(参照先:https://www.itr.co.jp/report/marketview/M21001600.html)
小売業でのAI利用
小売業でのAI利用においては、客の購買データから「なぜ購入しなかったのか」「どうすれば買ってもらえるか」など仮設と検証が容易になってきている。また、商品の需要も正確に予測されるようになり、飲食業などでは食品の破棄も減り生産性も向上してきている。
医療でのAI適用
医療に活用されるAIは、機械学習、ディープラーニングなどの方法を利用し、パターンやルールを学習することで実行される。規則性のある診断の補助あるいはスクリーニングであれば、機械学習が役立つ。ディープラーニングの場合は、詳細データや高度なハードウェアが必要である。
一般に医療現場で期待されるAIの利活用は、画像診断による疾患の診断、カルテの解析、ゲノム解析、手術支援、問診や事務作業の効率化などが想定される。一方で、個人情報を含むデータの取り扱い、誤作動やバグ、診断に伴う根拠のブラックボックス化などが、課題として取り上げられている。
医療現場においては、慢性的な人材不足が生じている現在、提供される医療の質の低下ではなく、質の向上を目指したAIによる支援を否定することはできない。
薬局現場のAI
薬学分野においては、産学連携によって、AI(機械学習)により薬学的推論を利用し、服薬指導におけるリスク回避の支援を行うといった研究がなされている。この仕組みは、あくまでも「リスク回避の支援」ということであり、判断は薬剤師自身が行うべきこととされている。
さらに、複数のレセコン・電子薬歴メーカーでは、機械学習の成果をシステムに実装する取り組みがなされている。加えて、最近では、紙に印刷された処方箋データをAIを利用したOCRにより電子化するシステムも販売開始されている。
以前であれば、レセコンメーカーごとに独自のシステム構築により優位性をもって販売をしていたものではあるが、AIをはじめとした先進的な技術を取り込むには、自社開発ではなく、技術を持つ会社との提携によりスピード感をもったサービス提供が増えているのも、昨今の特徴である。
これからのAI利用
よくある最近の話題としては、「AIに仕事が奪われる」というもの。今後のAIと薬局の関係性を考えていく上で「仕事」と「業務」に区別することが大切である。
例えば「調剤」という仕事では、「処方入力」「薬品の取り揃え」「分包」などが業務となる。現在、多くの業務は薬局スタッフの手によって行われているが、その中でもレジ打ちや異常検知などの単純な業務はこれからもAIを利用した機器に代替されていく。
したがい、今後は、それぞれの薬剤師がAIや調剤ロボットに対して「業務をどのように行うか」「どのように業務を進めていくか」「患者に寄り添った業務は何か」などの薬局現場のオペレーションの方向性を考えながら指示できるスキルが必要になっていくといえる。