～薬剤師がおさえておきたいサプリメント事情～　第1回「日本の健康食品概要」

■健康食品・サプリメントの定義

健康食品、サプリメントとはほとんどの人が知っている言葉ですが、実は、その用語には行政的定義はありません。一般的に、健康食品とは「健康の保持増進に資する食品全般」、サプリメントとは「特定成分が濃縮された錠剤やカプセル形態の製品」と考えられています。

明確な定義はないため消費者が認識している健康食品やサプリメントとは、通常の食材から、菓子、飲料、医薬品に類似した錠剤、など幅広いことがわかります。

米国は1994年に「ダイエタリーサプリメント健康教育法」を定め「従来の食品でも医薬品でもない異なるカテゴリーの食品でビタミン、ミネラル、アミノ酸、ハーブなどの成分を含み、錠剤やカプセルなどの形状のもの」と定義しています。ヨーロッパでもほぼ同じく「フードサプリメント」と定義しています。

日本ではこのような定義がされておらず、基本的に従来の食品と同じ扱いになっているため、含有成分量などのチェックなど品質において厳しく管理することが難しくなっていることも確かです。

現在わが国では健康食品、サプリメント以外にも機能性食品（一般に試験管内や動物実験で得られた効果をうたった食品が多い）、栄養補助食品、健康補助食品、栄養強化食品、栄養調整食品といった表記の種類がありますが、いずれも現在、行政的に定義のされていない「いわゆる健康食品」と呼ばれる範疇に入ることを覚えておいてください。

健康食品で最も配慮されるべきところは医薬品との違いといえるでしょう。上記で述べたように日本では、わたくしたちが口から摂取するものの内、医薬品（医薬部外品を含む）以外のものはすべて食品に該当し、食品に対して医薬品のような身体の構造や機能に影響する表示をすることは、原則として認められていません。

ただし、特別用途食品、特定保健用食品、栄養機能食品、機能性表示食品について、または一部チェーンドラッグストア協会やヘルスケア協会などの自主基準で、例外的に限られた範囲内で安全性や医薬品との相互作用を併記することで特定の保健機能や栄養機能を表示することが認められていますが、米国と同様、疾病の診断、治療または、予防に関わる表示をしてはならないことが求められています。それ以外の食品に対しては、医薬品のような身体の構造や機能に影響する表示をすることは原則認められていません。

■健康食品の制度

日本では国によって制度化されている食品は保健機能食品のみです。保健機能食品は長らく「特定保健用食品（いわゆるトクホ）」及び「栄養機能食品」の２つだけでしたが、2015年の食品表示法の施行により、食品の機能を表示できる食品として機能性表示食品が加わりました。

トクホとは、生理学的機能などに影響を与える保健機能成分を含む食品のことです。消費者庁長官の許可を得ることにより、特定の保健の用途に適する旨を表示できるようになります。トクホも疾病名の表示や病態の改善に関する表示はできません。しかし2005年に、関与成分の疾病リスク低減効果が医学的・栄養学的に確立されている場合には、疾病名の表示が認められるようになりました（カルシウム、葉酸）。また、規格基準型、条件付き特定保健食品があります。

　二つ目は栄養機能食品です。人の生命・健康の維持に必要な特定の栄養素の補給のために利用されることを目的とした食品で、科学的根拠が充分にある栄養機能について表示することができます。栄養素の名称と機能だけでなく、「日本人の食事摂取基準」に基づいた一日の摂取目安量（上限・下限量）や摂取上の注意事項も表示する義務があります。ただし国が決めた基準に沿っていれば、許可や届け等なくして、食品に含まれている栄養成分の栄養機能を表示することができます。n-3系脂肪酸、亜鉛、カリウム、カルシウム、鉄、銅、マグネシウム、ナイアシン、パントテン酸、ビオチン、ビタミンA、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、葉酸。これらに品質などの検査は全くありません。

　最後に機能性表示食品　機能性を分かりやすく表示した食品の選択肢を増やすことを目的として、2015年に「機能性表示食品」が加わりました。事業者の責任で保健機能を表示するもので、その保健機能の有効性の科学的根拠や安全性などの情報を事業者が消費者庁へ「届出」を行うことが決められています。届け出られた情報については、消費者庁のウェブサイトで確認できます。届出で公開ということで臨床試験などの厳しさは評価されていません。7年目には登録数が5000種を超えました。以上が日本の健康食品の概要です。

（筆者）一般社団法人日本健康食品・サプリメント情報センター(Jahfic)　理事　宇野文博