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電子カルテの安定稼働のポイント

2022.09.20

 電子カルテは購入してすぐに使えるわけではありません。事前にセッティングなど準備が必要です。そこで、電子カルテの安定稼働に向けた準備のポイントを解説します。


診療所の電子カルテは購入してすぐに使えるわけではない

電子カルテは一般的な家電のように、購入してすぐに使用できるものではありません。病院時代に電子カルテを使用していた先生は、診療所でも当然電子カルテを導入することでしょう。病院で電子カルテを使っていたから、診療所でも使えると思われるかもしれませんが、実は病院の電子カルテも導入の時に、電子カルテ委員会がしっかり準備したことでスムーズに使えるようになっているのです。電子カルテは稼働に向けての準備が必要なシステムなのです。

 

病院の電子カルテは「汎用機」、診療所の電子カルテは「専用機」

病院の電子カルテと診療所の電子カルテは大きく異なります。病院は複数のドクターや看護師など多数のスタッフが使用することを目的に作られているために、どうしても「汎用的」なものになりがちです。一方、診療所はひとりの医師と数人のスタッフが使用することを目的に作られているため、その医師それぞれの「専用」のシステムになります。

例えば、「かぜセット」「花粉症セット」「湿疹セット」と薬や検査、処置、病名など先生独自のレシピをまとめてセット化することで、検索して探すよりはるかに素早く楽に入力が行えます。そこで、これを実現するために、先生用にチューンナップする必要があるのです。

 

電子カルテの安定稼働は事前準備が重

したがって、電子カルテが安定的に稼働するかどうかは、事前の準備に大きく左右されます。事前準備が上手くいけば、電子カルテは安定的に稼働しますし、事前準備が上手くいかなければ、安定的な稼働はできないのです。当然、電子カルテが安定的に稼働しなければ、電子カルテが診療の妨げになってしまうかもしれません。電子カルテに振りまわされたくないと考えているならば、是非、事前の準備をしっかり行って欲しいのです。

ここでいう安定稼働とは、「使いやすい状態」と言い換えることができます。それは、自らが使用するツールが整理整頓されている状態のことで、きれいに整理された引き出しをイメージしていただければ良いでしょう。この整理する作業を電子カルテ業界では「セッティング」と呼んでいます。このセッティングを行っているスタッフを「インストラクター」と呼んでいます。

 

電子カルテの役割

診療所における電子カルテの役割はなんでしょうか。診療所向けに発売されている電子カルテの多くは、電子カルテとレセコンの一体型です。そのため、電子カルテにレセコンの機能が含まれていると考えてください。したがって、電子カルテの本質は、カルテに書かれた診療行為とコストを一致させ、レセプト請求を効率化させるシステムと言えるでしょう。

また、電子カルテの範囲はクリニックの業務全般に渡ります。受付、問診、診察、検査・画像撮影、処置、会計、レセプト請求といった流れの中で、電子カルテをスムーズに操作ができることが、安定稼働の上で重要なポイントとなります。

 

受付でのポイント

受付では、電子カルテに患者のプロフィール、保険証情報の登録など、カルテの1号用紙の登録を行います。また、受付で取得した情報を診察室に伝達する「メモ機能」が備わっています。さらに、問診票についても、テンプレートなどを用いて簡単に入力できるようになっています。

安定稼働のポイントは、問診票の入力テンプレートの設定を行うことやメモ機能の決まり事(急患、未収、返金など)をあらかじめ決めておくことです。

 

診察室でのポイント

診察室では、電子カルテに診察内容と診療報酬(コスト)の入力を行います。また、画像ファイリング(PACS)と連動して、撮影画像や検査結果を閲覧できるようになっています。さらに、紹介状や診断書などの書類を作成できるようになっています。

安定稼働のポイントは、カルテのセッティング(セット)を実際の診療の流れをイメージして行うことです。注意点は、事前にはりきってテンプレートやセットをたくさん作ったものの、実際はあまり使われていないということが起きがちなので、最低限必要なものに絞って作成することをお勧めします。

 

会計でのポイント

会計では、診察室で入力されたカルテの内容を確認し、患者の自己負担率に合わせて自己負担額を計算します。最近では、自動精算機やセルフレジなどに連携して会計業務を効率化できるようになっています。

安定稼働のポイントは、会計時のカルテ内容の点検ルールを決めることです。ルールが決まっていれば、間違いを発見する確率も高まります。

 

レセプト請求でのポイント

レセプト請求では、電子カルテの内容をレセプトに変換します。その際、レセプト点検ソフトなどを活用して、レセプトチェックを行い、適切なレセプトにします。レセプト点検については、電子カルテに備わっている機能と専門の点検ソフトが存在します。

安定稼働のポイントは、レセプト点検ソフトとヒトによるチェックの役割範囲を決めることです。レセプト点検ソフトは完全にチェックが行われるわけではなく、一般的には1次チェックとして利用されています。

 

周辺システムとの連携

電子カルテは診療所の業務全般に影響する基幹システムですから、電子カルテにつながる様々なシステムが存在します。そのため、電子カルテにつながるシステムとの調整も、電子カルテのセッティングの一要素と言えます。したがって、電子カルテのレセプト作成の機能はもちろんのこと、電子カルテにつながる周辺システム(予約システム、Web問診、画像ファイリング、自動精算機など)との連携設定もしっかりと事前に行う必要があるのです。

ここで注意点ですが、過去に連動したことがないシステム同士の連携は、システムをつなぐための調整が終わっていませんので、連動調整に時間がかかることを覚えておいてください。また、連携に費用が発生することも多いので、その確認も事前に行ってください。

 

シミュレーション

 最後に、本当に電子カルテが整理された状態になっているかを確認するためには、受付から診察、会計を通したシミュレーションを行う必要があります。スタッフで手分けして、患者を実際に診察する流れを試してみるのです。このシミュレーションを繰り返し行いながら、微調整(セッティング)を行うことで、使いやすい電子カルテに近づいていきます。