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採用手法の紹介

2022.11.11

前回から3回にわけて薬剤師の採用をテーマに、採用戦略の描き方、採用手法のご紹介、面接官訓練についてお話ししていますが、今回は、採用手法のご紹介についてです。

コロナの影響もあり、求職者とのコンタクトポイント(接触場面)やリクルーティングの手段が変わってきました。従来の採用手法を再確認しつつ、知識をアップデートしましょう。

 

  • 前回のおさらい

前回テーマの採用戦略の描き方で、下記のステップをご紹介しました。今回はSTEP3-33-4に焦点を当ててお話します。

 

STEP1:目的・目標設定

STEP1-1:目的の確認

STEP1-2:採用目標人数の算出

STEP2:現状分析

STEP2-1:内部環境分析

STEP2-2:外部環境分析

STEP2-3:問題抽出、課題設定

STEP3:マーケティング

STEP3-1:自社の説明、差別化

STEP3-2:求める人材像の設定

STEP3-3:コンタクトポイントの設計

STEP3-4:メディア選定、メディア作成

STEP4:アクションプラン作成

STEP4-15W1Hの設計

 

求職者とどこで、どうやって出会うかというのは、採用における最大の悩みかと思います。また、採用コストの多くはこのステップで発生しますので、費用対効果の視点も大事になってきます。

まさに採用担当者や経営者の判断が試される場面です。

 

採用手法の種類

まずは採用手法にはどんな種類があるのか抑えておきましょう。

下記の表は、求職者とのコンタクトポイント別に新卒者と中途入社者がどの程度活用しているかについて私見をまとめたものです。薬剤師の採用市場においての見解であり、一般求職者向けではないことにご注意ください。

 

Webサイト系】

①自社サイト

求人企業のホームページの採用サイトのことです。求職者が直接エントリーするために使われます。

学生は、よほど興味関心のある求人でない採用サイトから直接エントリーすることは少ないと思います。一方で中途入社者においては、買い手市場になったことから、自ら直接応募するケースが増えてきました。

 

②求人サイト・ナビサイト

新卒採用のメインストリームでしたが、掲載費用は安くありませんので、従来から中小企業には手が出しづらい手法だったと思います。それに加えて、ここ数年の傾向をみると学生の活用頻度は下がってきたようです。

中途入社者においては、買い手市場の影響で人材紹介会社への紹介手数料の支払いを渋る企業が増えたため、求職者自らが求人サイトを活用して、直接応募するようになってきました。

 

③ハローワーク

読者の皆さんも想像に難くないと思いますが、ハローワークの求人検索サイトは学生に認知されていないためほとんど活用されていないと思いますし、求人側もそれを理解しているので、そもそも新卒向けの求人が掲載されていません。

中途入社者においては、②同様、以前よりも活用されるようになってきました。

 

④ダイレクトリクルーティングサイト

ここ数年、新卒・中途ともに注目されてきたのがこの手法です。中途採用市場では「ビズリーチ」がダイレクトリクルーティングを有名にしました。求職者が自分のプロフィールや希望条件を登録し、求人企業がそのデータベースの中から採りたい人材にオファーを送るという仕組みです。②の求人サイトと逆の動きになるわけです。母集団形成を必要としませんので、高い費用対効果が望めます。

新卒採用においては、弊社が提供する「Agonistがこれに当たります。My AVALONにログインできる方は、「業務紹介アプリ」で詳細を知ることができます.

中途採用のニーズとしては、勤務薬剤師ではなくハイクラス人材や特殊人材向けの活用です。マネジメント経験、営業経験、IT導入経験、新規事業立ち上げ経験など、通常の薬剤師業務以外の経験やスキルを有した人材を採用したい場合に向いている手法です。

 

⑤合同企業説明会、⑥学内説明会、⑦リクルーターの大学訪問

これらは新卒採用の手法です。対面での接触を要したため、コロナの影響をもっとも受けた手法といえます。これらがオンライン化されたのは言うまでもありませんが、オンラインではなかなか互いの熱量が伝わらず、十分な手ごたえを感じにくいコンタクトポイントになってしまったと思います。

合同説明会への出展には高い費用をかかりますし、採用実績のない企業は学内説明会に招かれないことが多く、卒業生といえども採用目的で大学内に立ち入ることを制限している大学も増えてきました。キャリアセンターや就職課への営業訪問も労力の割には成果があまり見込めません。

 

⑧実務実習

中小企業にとっては学生にアピールする絶好の機会です。ただし、実務実習はあくまで教育目的で行われるものですから、受け入れ薬局が実習期間中にリクルーティングするのは好ましくありません。実習指導を通して、自社の魅力を伝えてください。

 

⑨教員からの紹介、⑩リファラル

かつてのような「教授からの推薦」といった話はあまり聞かなくなりましたが、このような“縁故採用”を最近は“リファラル採用”といって、重視している企業が増えてきました。

従業員を介してその友人・知人を口説くというわけです。従業員全員が常にリクルーターとしての役目を担うことになります。従業員側に何らかのインセンティブ(接待交際費を持たせるなど)を設ける場合もあります。

 

⑪人材紹介会社

紹介手数料を支払って、有料職業紹介業社から人材を紹介してもらう、これが薬剤師の中途採用の主流でした。地方や薬剤師が不足しているエリアではまだ主流かもしれませんが、都心部では買い手市場に変わったことで、そのニーズが減り、業績を落とす紹介会社も少なくありません。

新卒採用でも一部利用されていますが、大学側はいい顔をしません。学生には、紹介会社を頼らずに自分で就活するべきという指導をしているからです。自分の将来のキャリアを決めるために多様な手段を使うことを大学が否定するのはどうかと思いますが、求人側は注意が必要です。

 

SNS

「求人企業の社長のTwitterDMを送る」なんていう求職者からのアプローチも散見されるようになりました。ダイレクトメール(DM)で求職者が応募したり、逆に求人企業が一本釣りしたりと、SNSを採用に活用することが増えてきました。

求職者は、日々の投稿からその求人企業の雰囲気や様子を知ることができますので、ブランディングとしての活用も期待できます。

そのためには企業や採用担当者が公式アカウントを作り、常日頃から様々な情報発信をして、多くの人の目に触れるようにする必要がありますので、時間のかかる種まきといえます。

 

採用手法の選択

これらの採用手法を選択する際に、それぞれの性質や費用、トレンドなどを踏まえるのも大事ですが、自社への向き不向きからも考える必要があります。

そのためにコンタクトポイントのその先についても考えてみましょう。下図は、母集団形成から入社に至るまでのステップを図示したものです。

①自社サイト、②求人サイト、③ハローワーク、⑤合同企業説明会、⑥学内説明会、⑦リクルーターの大学訪問は、接触母集団形成のための採用手法です。一方、④ダイレクトリクルーティングサイト、⑩リファラル、⑪人材紹介会社は、確度の高い母集団形成のための手法です。

新卒採用であれば、5名の入社を達成するためには、卒試留年や国試落ちなどを考慮して、倍の10名に内定を出す必要がある。そのためには、15名に選考を受けてもらい、確度の高い募集団が25名必要で、接触母集団としては50名が必要。 といった具合に、過去の経験から歩留まりを算出します。
50名の接触母集団を作るには広く網を張るために、サイトや説明会を一通り活用しなければならないが、ダイレクトリクルーティングなら初めから確度の高い母集団を作ることができる 、という自社の歩留まりや採用プロセスの課題などを考慮して、採用手法を選択します。

 

今回はさまざまな採用手法をご紹介しました。時代の変化とともに採用の仕方も就職・転職活動の仕方も変わってきていますので、それに乗り遅れないことが大事です。前例踏襲ではなく、改めて自社に合ったやり方を検討してみてはいかがでしょうか。

 

著者紹介

富澤 崇 株式会社ツールポックス代表取締役

1998年東京薬科大学卒、千葉大学博士課程修了(薬学博士) 山梨大学医学部附属病院、クリニック、複数の薬局で勤務。2001年から城西国際大学薬学部の教員として約20年勤務。大手チェーン薬局にて人事・教育・採用部門に従事。2017年に株式会社ツールポックスを設立。経営コンサルティング、キャリア支援、従業員研修などのサービスを展開。北里大学客員准教授兼務。