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2024年秋保険証廃止・マイナンバーカード一体化によるクリニックへの影響(前編)
2022.11.28
政府のDX政策が急速に進んでいます。2023年4月から「オンライン資格確認」の原則義務化が決定しました。また、2024年秋には現在の健康保険証を廃止し、マイナンバーカードと一体化する案が示されています。このような状況を受けて、クリニックはどのように準備していけば良いのでしょうか。クリニックへの影響を探ります。
オンライン資格確認の義務化
2023年4月から「オンライン資格確認」の原則義務化が決定されました。具体的な義務化の内容としては、「療養担当規則」が改正され、保険医療機関・薬局が、患者の受給資格を確認する際、患者が「マイナ保険証」を提示した場合、オンライン資格確認によって受給資格の確認を行わなければならないことが定められました。
また、例外としては、現在紙レセプトでの請求が認められている保険医療機関・保険薬局のみ(全国で4%程度)としています。その結果、ほとんどの保険医療機関及・薬局は、マイナ保険証に対応できるよう、あらかじめ必要な体制を2023年3月末までに整備しなければならないことになります。
診療報酬上の加算の取り扱いの見直し
また、義務化を受けて2022年4月改定で新設された「電子的保健医療情報活用加算」が廃止され、新たに2022年10月から「医療情報・システム基盤整備体制充実加算」を新設することとなりました。
(旧)電子的保健医療情報活用加算
〇初診時にオンライン資格確認システムを通じて患者の薬剤情報又は特定健診情報等を取得した場合は7点を加算
〇再診時に患者の薬剤情報又は特定健診情報等を取得し、当該情報を活用して診療等を実施することで、月1回、再診料(外来診療料)に対して4点
〇オンライン資格確認を導入しているが情報を取得困難な場合等については、初診に限り初診料に対して3点を加算(令和6年3月 31 日まで)
<施設基準>
(1)オンライン請求
(2)オンライン資格確認
(3)電子資格確認に関する事項について、保険医療機関の見やすい場所に掲示
(新)医療情報・システム基盤整備体制充実加算
〇初診時に患者の薬剤情報や特定健診情報等の診療情報を活用して質の高い診療を実施する体制を評価するものであり、別に厚生労働大臣が定める施設基準を満たす保険医療機関を受診した患者に対して初診を行った場合に、「医療情報・システム基盤整備体制充実加算1」として、月1回に限り4点を算定する
〇電子資格確認により当該患者に係る診療情報を取得等した場合又は他の保険医療機関から当該患者に係る診療情報の提供を受けた場合は、「医療情報・システム基盤整備体制充実加算2」として、月1回に限り2点を算定する
<施設基準>
(1)オンライン請求
(2)オンライン資格確認
(3)上記事項について、院内掲示およびホームページ掲載
今回の変更により、「初診料」の加算は、マイナ保険証を利用する場合は7点から2点に引き下げられ、利用しない場合は3点から4点に引き上げられたことになります。つまり、マイナ保険証と従来の保険証の点数差が逆転しています。また、「再診料」の加算がなくなっており、オンライン資格確認を活用するメリットが減少しています。
保険証の廃止・マイナンバーカード一体化
2022年10月13日の記者会見で、河野太郎デジタル大臣は、現行の健康保険証を、2023年度秋を目途に廃止し、マイナンバーカードと一体化した「マイナ保険証」に切り替える方針を示しました。「マイナ保険証」は、2021年3月から既に始まっており、これまで政府は、将来的には健康保険証を廃止してマイナンバーカードへの一体化を目指すとしており、今回は河野大臣よりその具体的な時期が示されたことなります。
2024年秋に保険証を廃止するためには、それまでに、すべての人がマイナンバーカードを取得し、保険証として利用できるように登録する必要があります。また、独り暮らしの高齢者や乳幼児など取得の申請を行うのが難しい人や、どうしても取得したくないという人などへの対応も検討する必要が残っています。
マイナンバーカードの交付状況
2022年10月末現在のマイナンバーカードの交付状況は、総務省の資料によると、全国の交付枚数率が51.5%、指定都市で53.0%、指定都市を除く特別区・市で50.8%、町村で48.8%となっています。マイナンバーカードの保険証利用登録件数は、2022年10月末現在で、28,837,473件で、人口に対して22.9%となっています。この状況から、約2年間で100%にするための施策が必要となるのです。