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「電子カルテの適正台数」

2022.12.28

 電子カルテを導入するクリニックと打ち合わせを行う際、「電子カルテは何台必要か」という相談を多くいただきます。かつてオンプレミス型電子カルテが主流の時代は、端末当たりの「ライセンス費用」や「パソコン」も高額であったため、「3台~4台」というのが一般的な回答でした。電子カルテメーカーの提案もたいてい「基本セットは3台構成」というのが一般的で、その内訳としては、受付に1台、診察室に1台、処置室に1台といった内容でした。

 

部屋ごとの電子カルテの機能

電子カルテの適正台数を算出するための根拠となるのが、各部屋における電子カルテの機能(業務)の考え方です。

  • 受付

「受付」では、電子カルテにおけるレセコンの機能である「受付」「保険証登録」「会計」「レセプト請求」といった事務業務に使用されます。

  • 診察室

「診察室」では、本来の電子カルテの機能である「カルテの記載」「コスト入力」「検査結果の閲覧」「書類作成」といた診療業務に使用されます。

  • 処置室(検査室)

「処置室」では医師の指示を受ける「オーダーリング」としての機能を担い、看護師が「処置」や「注射・点滴」「採血」「療養指導」などを実施するための看護業務に使用されます。病院であれば電子カルテ、オーダーリング、レセコンと分かれているシステムがクリニックでは電子カルテに統合されていると考えると良いでしょう。

 

電子カルテの黎明期(2000年~2009年)は、いまほど周辺システムが充実していなかったため、上記のような構成で問題はなかったと思われます。せいぜい増えても受付に追加で1台程度でした。しかしながら、現在のクラウド時代は大きく変化を迎えているのです。

 

周辺システムの増加の影響

近年、クリニックで電子カルテの普及が進み、クラウド技術の発展によって、様々な周辺システムが開発され、電子カルテのみで導入する時代は終わっています。いまは周辺システムと電子カルテの連携がとても重要になっています。

最近導入が進んでいる周辺システムとしては、予約システム、Web問診、自動精算機・キャッシュレスとなります。

「予約システム」は、待ち時間短縮・混雑緩和を期待され、コロナ禍で待合室での密の回避の考え方が増え、導入が進んでいます。

「Web問診」は、問診のデジタル化・トリアージを期待され、スマホやタブレットの普及、コロナ禍で事前に問診を導入することでトリアージができると、導入が進んでいます。

「自動精算機・キャシュレス」は、レジ業務の削減、現金の取扱いの減少、締め作業の効率化を期待され、働き方改革が進む中、請求業務の自動化を目的に導入が進んでいます。

これらの電子カルテ周辺システムと連携し業務を行うことで、業務効率化を図ろうとしているのです。この周辺システムと電子カルテの連携部分では、何らかの連携業務が発生しており、そこに人員を配置することから電子カルテが追加されるケースが増えています。

 

クラウドによって端末が増やしやすい環境に

また、2010年に医療分野のクラウドコンピュータの利用が認められ、それを契機に電子カルテの価格の低下や「サブスクリプション(定額制)」という考え方が導入されつつあります。結果として、電子カルテの端末を増やすことが可能な状況が到来しています。電子カルテが端末数にあまり依存しなくなってきているのです。

 

新型コロナの影響

また、2020年に新型コロナウィルスの感染拡大が始まって以来、「感染対策」「働き方改革」が進み、クリニックの働く環境の見直しが行われたことも大きな影響をもたらしています。感染対策の観点からは、スタッフの業務場所において、できるだけ密が発生しないような工夫が求められており、1台の電子カルテを複数のスタッフが使う運用では密が発生するため、それを避ける傾向が電子カルテの台数を増やす要因となっているのです。また、働き方改革の観点からは、残業削減するための生産性向上が求められており、業務分散を進めることでスピードアップが図ることが期待されているのです。

 

電子カルテは1人1台の時代に

このような状況のもと、あらためて「電子カルテの台数は何台が適正か」という問いに対して、「電子カルテの台数はスタッフの常勤数と同じ数」というのが一般的になりつつあります。例えば、受付に3人、診察室に医師とクラーク、処置室に看護師が2人いる場合は、合計7人が同時に操作するため、結果として7台が電子カルテの適正数となるのです。

クリニックにおける電子カルテはかつてのカルテやレセプトのデジタル化から、クリニックの様々な業務を行うためのプラットフォームとして進化を遂げました。その結果、「電子カルテの端末は1人1台」の時代が到来しているのです。