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「電子処方箋と医療DX」(後編)

2022.12.26

電子処方箋についての詳しいサイトを作りました。

2023年1月から「電子処方箋」が開始されます。2023年4月にはオンライン資格確認の義務化控えており、その準備が急ピッチで進められています。電子処方箋は、医療現場にとってどのような影響をもたらすのか。これからの医療サービスはどんな変更が必要なのかを2回に分けて解説します。

「電子処方箋と医療DX」(前編)はこちら

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電子処方箋に関する補助金

「電子処方箋」の導入に係る費用については「補助金」が設けられており、2023年3月31日までに「電子処方箋管理サービス」を導入した診療所は、19.4万円を上限に補助(事業額の38.7万円を上限にその1/2を補助)が行われます。4月以降は補助率が1/2から1/3に下がり、12.9万円を上限に補助となっています。

 「オンライン資格確認」の準備においても、現在2023年4月の義務化に向けて、作業依頼の集中による遅延が発生しており、電子処方箋でも同様のことが起きると予想しますので、迅速な対応をお勧めします。

図 電子処方箋の補助金

(出典)電子処方箋の導入に関する補助内容(医療機関等向けポータルサイト)

https://www.iryohokenjyoho-portalsite.jp/docs/denshi_hojokin.pdf

「電子処方箋」のメリット・デメリット

クリニックが電子処方箋を導入するメリットは、主に以下の3点です。

1.直近3年間に処方・調剤された情報が医師・薬剤師・患者が参照できる

オンライン資格確認においても「薬剤情報」は確認できますが、レセプトに基づく情報のため、直近1カ月の処方データは確認ができません。「電子処方箋」では、処方箋そのものから情報を作成するため、直近データを含めて、複数の医療機関・薬局のデータが参照できるようになり、患者の処方管理に役立つと考えます。一方で、複数の医療機関・薬局のデータが順次蓄積されていくため、重複投薬に関するレセプト審査が厳しくなることも意味します。

2.重複投薬・併用禁忌のチェックができる

「電子処方箋管理サービス」で、処方決定の際に、クリニックは重複投薬や併用禁忌のチェックが行えるようになります。この仕組みを上手に活用すれば、レセプト点検における薬剤チェックを省くことが可能になり、返戻・査定の減少につながることでしょう。コンピュータチェックの割合が2024年に9割に達すると発表されており、クリニックのレセプトチェックも速やかにコンピュータを上手に活用した体制に移行する必要があるのです。

3.医療機関と薬局間の円滑な情報連携が行える

医療機関と薬局の間で、後発医薬品や処方の変更など、疑義照会が頻繁に行われており、この部分の情報連携の効率化が進むこともメリットと言えるでしょう。現在のように、電話やFAXのアナログなやり取りから、電子処方箋を機会にデジタルなやり取りに移行することができれば、医療機関・薬局共に効率化が図られると考えます。



「電子処方箋」の影響

 電子処方箋は、クリニック経営にどんな影響をもたらすのでしょうか。実際の業務に合わせて確認して行きます。まず電子処方箋は、全国の医療機関・薬局において普及が完了するまでの期間は、紙の処方箋と電子処方箋が混在するため、一時的に運用が複雑になることが予想されます。

受付では、患者の認証時に、「マイナ保険証」か「健康保険証」の確認が必要となり、患者は薬剤情報等の閲覧の同意、処方箋も紙か電子の選択といった確認が必要になります。顔認証カードリーダー上の操作が増えるほど、患者は混乱し、操作がわからなければ、スタッフがサポートする必要があるでしょう。

 診察室では、電子処方箋のデータを活用することで、「直近の処方情報を踏まえた診察・処方」と「重複投薬・併用禁忌チェック」が行えるようになります。これまでのように、お薬手帳や患者の記憶に頼らくても良くなるため、医療の質向上にはつながることでしょう。一方で、処方の度に医師は電子認証を行う必要があり、その点は手間が増えるように感じます。また、医療機関と薬局の間での「疑義照会」などコミュニケーションの効率化が可能となれば、これまでのアナログなやり取りが減り、さらに管理サービスのチェックを利用することで、疑義照会自体の件数も減少することが期待できます。「薬」に関する間違いによる返戻や査定の削減にもつながることでしょう。

まとめ

 「電子処方箋」はオンライン資格確認の次に来る政府の医療DXの第二弾の取り組みです。ただでさえ、オンライン資格確認の構築で混乱している医療現場にとっては、「負担がまた増えるのではないか」と感じる方も多いかもしれません。また、電子処方箋が完全普及するまでは、一定の負担が医療機関・薬局には存在することになり、効果を感じられるのは少し先のこととなりそうです。

電子処方箋のメリットは十分理解でき、その先にある電子カルテ全体の情報共有のビジョンは理解できるものの、医療現場が電子処方箋に参加したいと感じるためには、何らかの方策が必要と考えます。政府は医療現場の負担を補うインセンティブ(診療報酬上の措置)が提供するか、オンライン資格確認同様、義務化に踏み切り、普及のスピードを向上することが必要と考えます。