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オンライン服薬指導実施事例報告から見る運用のポイント③
2023.03.06
改正薬機法により2022年より日本全国で実施可能となったオンライン服薬指導に関して、薬局における実施事例をまとめた調査報告が公表されています。本稿ではその報告書の内容を紹介しつつ、薬局・薬剤師がオンライン服薬指導に取り組む上で見えてくる課題を提示していきます。
※本稿で取り上げる資料
「医薬品医療機器等法に基づくオンライン服薬指導及び新型コロナウイルス感染症を受けた時限的・特例的措置としての電話等服薬指導の実施事例の収集」
(※リンクURL)https://mhlw-grants.niph.go.jp/system/files/report_pdf/%E5%88%86%E6%8B%85%EF%BC%91.pdf
こちらは帝京平成大学薬学部教授の亀井美和子氏を研究代表者とする調査です。
これまで2回にわたり、この報告書から以下の内容についてご紹介しました。
「2021年8月~2022年1月の間にオンライン服薬指導の実績のある10薬局へ行なったヒアリング調査」について
(https://em-avalon.jp/column/detail?id=160 )
「2022年3月に無作為抽出の5000薬局を対象に行なったアンケート調査」について
(https://em-avalon.jp/column/detail?id=171 )。
今回は同資料より「2022年2月に20~60代の消費者(年代ごと200人・計1,000)を対象にしたアンケート調査」について取り上げます。
こちらの結果を元に、消費者(患者)サイドの意識から“オンライン”へのニーズの在処を考えてみたいと思います。
この調査は全都道府県に居住する消費者を対象に2022年2月に実施したwebアンケートを基にしており、「1年以内に自分または家族が調剤で薬局を利用したことがある20~60歳代までを年代毎に200人ずつ抽出(計1,000人)。診察や薬の受け取りの状況、電話やオンライン(ビデオ通話)での診察・服薬指導の状況、薬の受け取り方法についての設問で回答を得ています。
これによると、電話やオンラインで服薬指導を受けたことのある人の割合は30歳代が最も多く、50,60歳代は極端に少ないことが見られます。
また、オンライン服薬指導を受けた理由としては時期的な背景から「新型コロナの感染防止」(56.4%)が最も多く挙げられましたが、次に多かったのは「自身の時間の問題等があった」27.6%、「自身の状態(体調等)で外出が困難であった」26.4%、「医療機関や薬局ですすめられた」(23.9%)と続きます。
また、薬が手元にある状態で服薬指導を受けた人は、全員が説明が全て理解できたと回答していますが、反面、手元に薬がない状態で受けた人は「一部理解できなかった」(5.6%)、「全く理解できなかった」(11.1%)という回答も寄せられました。
しかし「理解できなかったこと」として挙げられていることは、
・一部専門用語
・(あとから)薬と服用方法を書いた用紙を手元にして理解することができた
・話が長くて分かりにくかった
というもので、オンラインであることが直接の原因では無いとも読み取れます。
また、薬局での対面の服薬指導との比較では、以下のような結果が出ました。
・対面より分りにくい・少し分りにくい 計41.8%
・分りやすい・少し分りやすい 計20.3%
・まったく違いが無い 38.0%
診察、服薬指導、薬の受け取り方法に関しては60代以上は診察と服薬指導は可能な限り対面を希望しており、薬の配送に関しても年代が高いほど薬局での受け取りを希望する傾向が見られます。
では薬剤師による指導についての選択理由を自由回答から見てみたいと思います。
「可能な限り薬局の店舗での服薬指導を受けたい」人の回答より上位理由を紹介します。(305人の回答から)
・対面の方が安心 52人
・直接対面したい 38人
・質問や相談がしやすい 35人
・直接薬を受取りたい 14人
・対面の方が確実 13人
・対面の方が分りやすい 10人
・オンラインは苦手・慣れていない 10人
もう一方で、「いつもオンラインで服薬指導を受けたい」という方々の理由としては次のような回答が上位を占めました。(223人の回答から)
・オンラインで十分だから 54人
・オンラインのほうが手間がかからない 54人
・対面の必要を感じない 27人
・服薬指導の必要性を感じない 22人
・店舗での待ち時間が無い 15人
・オンラインは対面と変わらないから 13人
患者個人ごとの固有の経験や医療に対する考えや環境も含めて、多様な意見があります。「対面のほうが安心」と思う人と「オンラインで十分」と考える人のアンケート回答の数は、どちらかに如実に偏っている傾向はありません。
オンラインか対面か、いまの段階では患者それぞれの個別ニーズを理解し、見極めて対応していく必要がありそうです。
筆者:株式会社エニイクリエイティブ MIL編集部