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「クリニックにおけるレセプトチェックと個別指導」(前編)

2023.04.23

クリニックでは毎月「レセプトチェック」が行われています。これは、審査支払機関および保険者のレセプト返戻・査定を減らすことが目的です。保険医療機関にとっては、返戻・査定が多ければ、予定していた報酬から下がってしまうことを意味し、売上の減少につながります。経営に関わる重要なポイントなので、間違いがないようにレセプトを作成する必要があるのです。

【目次】

  1. 電子カルテは診療行為をお金に換えるツール
  2. 診療報酬点数とカルテの関係
  3. レセプトチェックとは
  4. レセプト審査とは
  5. 返戻と査定の違い
  6. レセプト審査改革

 


1.電子カルテは診療行為をお金に換えるツール

クリニックにおいて経営上最も大切なシステムは電子カルテです。なぜなら、電子カルテは診療行為をお金に換えるツールだからです。

電子カルテは、もともとレセコン(医事会計ソフト)から派生したシステムです。レセプトを作成するツールとしてレセコンが誕生し、レセコンに後付けで電子カルテが開発されました。そのため、多くのケースでは、電子カルテとレセコンは一緒に導入されることになります。

電子カルテは、その名称からカルテを電子化するツールのように感じますが、これは狭義の定義であり、本質的には診療行為をカルテに記録し、「診療報酬点数」に変換し、レセプト(診療報酬明細書)を作成するツールとなります。

 

2.診療報酬点数とカルテの関係

 診療報酬点数は、診療行為をメニュー化したもので、初・再診料、投薬、注射、処置、手術、検査、画像、リハビリ、医学管理、在宅医療、その他という項目に分けられています。これらの内容を合算して作られるのがレセプトとなります。

また、カルテは左側が記事、右側がコストと呼ばれます。記事は実際にどんな診療を行ったのかを記載し、コストはその内容を診療報酬点数というメニューから選んで記載することになります。この記事とコストは、互いに整合性が求められるため、常に一致を意識しながらカルテを完成させる必要があります。この部分については、「個別指導」において確認が行われます。

3.レセプトチェックとは

レセプトは毎月5日~10日の間に、審査支払機関(社会保険診療報酬支払基金、国民健康保険中央会)に提出する必要があります。この請求前にレセプトに不備がないかを点検する行為を「レセプトチェック」と呼んでいます。理論上、電子カルテに入力した内容が完璧であれば、本来レセプトチェックを行う必要はありません。しかしながら、毎日多くの患者の診察を行い、カルテを記載していく中で、どうしても間違いは発生してしまいます。

審査支払機関は提出されたレセプトを審査し、不備があれば「返戻・査定」として、翌月に医療機関に差し戻す仕組みとなっています。クリニックはこの返戻・査定をできるだけ減らすためにレセプトチェックを行うのです。

 

4.レセプト審査とは

審査支払機関の審査は、保険医療機関から請求された「レセプト」に記載されている「診療内容」について、「保険医療機関及び保険医療養担当規則」「診療報酬点数表」「関連通知等」の国が定めた保険診療ルールに基づき適正に算定されているかを確認します。また、「医薬品」について、「薬価基準」や「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」上の承認内容に基づき算定または使用されているかを確認します。

 

5.返戻と査定の違い

レセプトの返戻とは、「保険者」や「審査支払機関」のレセプト審査で「不備」や「誤り」があって差し戻されることをいいます。記載の不備があり、保険診療ルールに則っているか判断が難しい場合や、そもそも誤った書き方をしている場合に返戻が行われます。

返戻された場合は、返戻になった理由を確認し、再度「不備」や「誤り」を修正することによって再請求することが可能です。

一方、レセプト査定は、「保険者」や「審査支払機関」が、再請求のフローを行わずに項目修正や減額、減額調整を行い、医療機関に報酬を支払うことです。レセプトを提出して査定が行われた後、適切でないと判断された場合に実施され、「増減点連絡所(通知書)」が医療機関に送付されます。基本的には、査定が行われたレセプト請求に対しては、再請求を行えませんが、どうしても納得できない場合は再審査の申し立ては可能です。

 

6.レセプト審査改革

 現在、レセプト審査の合理化を目指して改革が進められています。その背景には、社保と国保で審査を行うシステムが異なっており、また地域ごとにも審査ルールが異なるため、レセプト審査において不公平が存在するという指摘があるためです。

 202210月には、支払基金は「新生支払基金の創建」と銘打って、審査事務集約によるブロック単位での組織体制の構築が行われました。具体的には、審査結果の不合理な差異解消の取組として、レセプト事務点検を集約し、職員が複数の都道府県のレセプトを審査事務することにより、広域にわたる状況を速やかに把握する体制が構築されています。また、審査結果の差異を調整する仕組みとして、中核審査事務センターにブロック内の各都道府県の審査委員をメンバーとする診療科別WGが設置されました。この改革は地域差をなくそうとする試みであり、スケジュールをみると2024年には支払基金と国保中央会のレセプト審査の仕組みを統一することが予定されています。

(次回に続く)