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問診票のデジタル化

2023.05.01

クリニックにおいて、生産性向上、業務効率化の観点から「Web問診システム」の導入が始まっています。そこで、今回は問診票のデジタル化のメリットを解説します。

【目次】

  1. 完全なペーパーレスは実現できない?
  2. 問診票のデジタル化の歴史
  3. Web問診がコロナ禍で注目された理由
  4. Web問診の導入のメリット
  5. 事前問診の効能

 


完全なペーパーレスは実現できない?

クリニックにおいてペーパーレスを目指して、電子カルテや検査画像ファイリングが導入されてきました。しかしながら、紙は依然として残っており、完全なペーパーレスは難しい状況が続きました。紙が残っている代表が、患者に書いてもらう「問診票」です。カルテは電子化されても問診票は紙というクリニックが大半なのです。

 

問診票のデジタル化の歴史

問診票のデジタル化は長年取り組まれてきました。しかしながら、最初のうちは「患者の多くが高齢者でパソコンが苦手」というリテラシーの問題と、「問診票に合った入力デバイス」の問題で、なかなか前には進みませんでした。iPadの出現した際に、これは良いデバイスだと注目は集まりましたが、それがクリニック全体で普及するまでには至りませんでした。

問診のデジタル化が普及へ動き出したのは、わが国でスマホやタブレットが一般的になり、誰もがそれらのデバイスを当たり前のように持ち歩くようになるまで待つ必要があったのです。

また、この流れを加速させたのは、20201月から始まった新型コロナウイルス感染症の感染拡大です。コロナ禍に不要不急の外出を控えるという状況の中で、Webの利用が急速に進み、いよいよ「Web問診」が利用できる環境が整ったと言えるでしょう。 

Web問診がコロナ禍で注目された理由

 

Web問診」とは、従来の紙の問診票をスマホやタブレットなどで入力を可能にしたデジタルツールです。なぜ、コロナ禍で注目を集めたのかというと、来院前に患者自らが問診入力を行うことで、発熱や咳など新型コロナウイルスの感染リスクがある方と、それ以外の方を分けて診察することが可能となり、「トリアージ」が行えることが大きいと考えます。

そもそもWeb問診はコロナ前から、クリニックで先行的に導入が始まっていました。Web問診が導入されることで、カルテの記載時間の短縮や問診の充実による診療効率が上がると期待されていたのです。

また、2010年の「医療分野のクラウド解禁」以降、電子カルテなどの企業のクラウドサーバで管理することが可能となり、それに伴い様々なシステムがクラウド化されました。Web問診もその恩恵を受けたシステムの1つです。

クラウド化は、これまで医療情報システムはインターネットにつながないという常識を覆し、システムがインターネットにつながることを可能にしました。その結果、システム導入コストが低下し、システム間の連携も進み、医療機関にとって利便性は格段に向上したと言えます。Web問診は接続部分に工夫を凝らすことで、電子カルテがクラウドタイプでも、院内サーバタイプでも連携することは可能になっています。

 

Web問診の導入のメリット

Web問診の導入のメリットとしては、①カルテ作成の時間短縮②スムーズな事前準備③問診内容の充実④トリアージなどが挙げられます。

メリット① カルテ作成の時間短縮

紙の問診票では、問診票の内容を電子カルテに転記する必要がありました。Web問診であれば、診察前に問診票の入力が完了していれば、問診内容を事前にカルテに貼ることが簡単にでき、カルテの作成にかかる時間が大幅に短縮されます。

 

メリット② スムーズな事前準備

患者に問診内容を事前に入力してもらうことで、問診内容に基づき検査などの準備がスムーズに行えるようになります。インフルエンザ検査や血液検査、聴力検査など、事前に検査を行う可能性があれば準備を始めておくことで、スムーズに検査が行えるのです。

 

メリット③ 問診内容の充実

院内で紙の問診を書いてもらうよりも、事前に自宅で問診を書いてもらう方が、情報量が増加するように感じます。その理由としては、自宅では時間の制約が少なく、ゆっくりネットなどで調べながら入力ができるので、より充実した問診内容となるようです。

 

メリット④ トリアージ

Web問診は新型コロナのトリアージとして効果があります。発熱等感染疑いの可能性がある方を事前に知ることができ、クリニックの外で診療を行う、PCR検査の準備をするなどの対応がスムーズになります。

 

メリット⑤ 待ち時間の短縮

患者に、自宅や移動中に問診を書いてきてもらうことで、診察室に到着すると、そのまま診察に入ることが可能となります。結果として、待合室での滞在時間が短縮でき、待ち時間も減っているように感じます。

事前問診の効能

このようにWeb問診導入のメリットの多くは、問診を行うタイミングを前倒しにしたことで生まれています。これは「院内に来てから問診を書く」というワークフローを、「来院前に問診を書く」というワークフローに見直すことで、様々な効果が挙がったのです。

今回のWeb問診のケースのように、システム導入に合わせてワークフローを見直したことで、高い効果につながるというのが、本来のシステム化の重要な進め方です。システム化を進めるためには、従来のやり方を一旦否定し、ワークフローを見直し、新たに再構築をするという改善活動こそが効果を最大限にする秘訣なのではないでしょうか。