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「『医療DX令和ビジョン2030』の実現に向けて」(1)

2023.05.29

2023413日に「『医療DX令和ビジョン2030』の実現に向けて」という提言書が自民党より公表されました。昨年出された「医療DX令和ビジョン2030」を進める上での具体的な道筋が示されています。これをもとに、政府は医療DXを推進していくことになりますので、大変重要な資料です。

【目次】

  1. 医療DX推進の背景
  2. 医療DX令和ビジョン2030の実現に向けて
  3. グランドデザイン
  4. 医療DX政策の3つの柱

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1.医療DX推進の背景

政府はいま「医療DX」を急速に進めようとしています。その背景にあるのが、「少子高齢化」の問題です。わが国は急速に高齢化が進み、団塊の世代が75歳以上を迎える2025年から2040年にかけて超高齢社会を迎えます。その影響から医療費・介護費の増大が予測されています。また、少子化の影響も顕著になっており、様々な業種で人手不足が深刻化しています。

また、2020年初頭から始まった新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)の感染拡大によって、医療界は様々な場面で「デジタル化の遅れ」が露呈しました。新型コロナの患者の把握にも、特別定額給付金を配布するのにも、ワクチン接種についても、FAXや郵送などアナログな作業がほとんどで、多くの非効率が生まれています。

政府は医療DXを進めることで、医療の質を維持しながら健康寿命の延伸を図り、医療費の増大を防ぐこと。様々な場面で業務効率化を図り、生産性が向上できると考えているのです。そのためには、医療機関間での情報共有をスムーズにし、情報の利活用ができる環境整備が必要と考えているのです。

2.医療DX令和ビジョン2030の実現に向けて

2023413日に、自民党は「『医療DX令和ビジョン2030』の実現に向けて」という提言書を公表しました。例年の傾向を見ると、これらの内容を踏まえて、今後「骨太の方針2023」が作られると思われる重要な資料です。そこで、今回は政府の医療DX政策の今後を知るために、同資料を解説していきます。

 

3.グランドデザイン

提言書では、「グランドデザイン」として、以下5つの項目を挙げています。

〇医療DXを通じてより効果的かつ効率的で質の高い医療の提供を実現

○PHR(パーソナルヘルスレコード)の推進により、疾病の予防を促進し、国民の健康寿命を延伸

医療機関等においてデジタル化による業務改革を行い、人材不足の状況を改善

医療情報を研究や事業開発に利活用し、その結果を社会実装する取組(二次利用)を促進

強力かつ一元的な司令塔の下、データ連携やアクセス管理を行うためのガバナンスの確保等

 現在、わが国が抱える課題である少子高齢化に伴う人材不足、医療分野のアナログ処理による非効率の問題について、医療DXが有効であり、早急に変革を進める必要があるという認識が示されています。また、医療DXが進んだ後の社会として、医療情報の2次利用が促進され、国民自らが保有するPHRにより疾病予防が進むことで健康寿命の延伸が期待されるとしています。

 

4.医療DX政策の3つの柱

 具体的な医療DX政策として、全国医療情報プラットフォーム電子カルテ情報の標準化等診療報酬改定DXーの3つの柱を示し、実現に向けての具体的な方向性が示されています。

 

全国医療情報プラットフォーム

「全国医療情報プラットフォーム」については、現在運用されているオンライン資格確認等システムを拡充し、全国医療情報プラットフォームに再編し、保険資格情報、薬剤情報そしてカルテ情報に至るまでを情報共有できる仕組みを構築するとしています。

また、そこに蓄積された様々な情報を2次利用するために、利用に関する検討を行い、利活用促進のための法令等の整備を行うとしています。さらに、データを利用するPHR等事業者が行うサービスに係るデータの規格標準化を早急に整え、PHRを推進するとしています。同プラットフォームの運用費用については、当面は国が負担し責任をもって運営する予定です。

 

電子カルテ情報の標準化等

「電子カルテ情報の標準化等」については、政府は官民一体となって電子カルテ情報の標準化を進め、標準型電子カルテを提供し、必要とされるすべての医療情報が共有される基盤を作りたいと考えています。そのためには、現在5割程度の普及である電子カルテについて、普及が遅れている中小規模の病院、診療所を含め、すべての医療機関へ導入・普及を目指し、国が責任をもって取り組むとしています。

 

診療報酬改定DX

「診療報酬改定DX」については、通常2年に1回行われる報酬改定のために、医療機関やレセコンベンダーが多大な労力を費やしている現状に対し、報酬改定に伴う経費の極小化に向け、診療報酬算定に係るマスタを改善・開発し、早期に「共通算定モジュール」を提供するとしています。また、同モジュールと先に上げた「標準型電子カルテ」を併せて提供することも計画されています。同システムについて開発に時間がかかることから、診療報酬改定の施行時期についても、合理的な期間が確保されるよう、数ヶ月後ろ倒しにするとしています。


出典:「医療DX令和ビジョン2030」の実現に向けて(自民党)

https://storage.jimin.jp/pdf/news/policy/205658_1.pdf

(次回に続く)