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新型コロナウイルス感染症第7波、第8波における薬剤師活動の最前線
2023.05.29
5月12日~14日に第14回日本プライマリ・ケア連合学会学術大会が名古屋で開催され、同大会にて「コロナ第7波、第8波における薬局薬剤師の活動について」と題したオンデマンド限定のシンポジウムが公開された。シンポジウムでは2022年にオミクロン株の流行により患者数が爆発的に増えた状況における、薬局での活動が4名の薬剤師より報告された。要点をご紹介したい。
(演者)
- 「休日・深夜における対応」なごみの薬局 なくすりーな日の出 吉田聡
- 「新型コロナウイルス感染症治療薬対応・提供体制」みどり薬局 木内翔太
- 「無料PCR検査、抗原検査対応」ほし薬局 星利佳
- 「薬局がワクチン接種会場になり、薬剤師がワクチン調製した経験について」「医薬品の供給不足について」あずまみまもり薬局 門下鉄也
(企画:門下鉄也 座長:坂口眞弓 指定発言:竹内あずさ 松田宗之)
1.「休日・深夜における対応」
始めに吉田聡氏から休日や深夜の処方箋対応について報告がなされた。
処方箋は0時・3時・6時にデータで届き、1日5~10件、ピーク時は20件前後の受け付けがあった。
夜間の対応は薬剤師1名のみで行っており、AIツールを用いた入力やロボット調剤の導入がミスを防ぐために有用だったと報告した。
投薬は0410対応により電話で行うが夜間のため繋がらないことも多く、どうしても連絡がとれない場合は先に薬を発送し到着前までに間に合わせることもあった。
発送は薬局開局前にヤマト運輸の集荷場に持ち込み当日便を利用するのがメインで、処方薬や患者の状況によっては直接届けることもあった。
対応を進める中で処方元と協議しオンラインの疑義照会フォームを構築したり、出荷調製で入手できない薬は事前に代替薬を決め事後連絡で共有したりするなど、改善しながらスムーズに対応できるようになっていったと報告をまとめた。
2.「新型コロナウイルス感染症治療薬対応・提供体制」
次に木内翔太氏からラゲブリオとパキロビットパックの投薬経験から得られた知見について報告がなされた。
ラゲブリオの投薬について、ボトル製剤は日本では馴染みがないため開封方法を電話で伝えるのが難しく、開封が困難な患者には分包したこともあった。
パキロビットパックはシート裏面の薬品名や用法の記載が英語のため、患者へ電話で説明するのが難しかったがメーカー提供の日本語資材が有用だったと報告した。
またラゲブリオは相互作用が多い薬剤であり併用薬の聴取が欠かせないが、高齢の患者にすべての併用薬を電話で確認するのは困難であり、処方医からの情報共有で円滑に併用薬を確認できたこともあったと話した。今回の経験を通して平時から職種連携を基盤とした医療提供体制の構築が重要であるとまとめた。
3.「無料PCR検査、抗原検査対応」
続いて、無料検査への対応について星利佳氏から報告がなされた。ほし薬局が位置する山形県は降雪の多い地域のため屋外での検査はできず、PCR検査は午前中に車内で、抗原検査は閉店後に検体測定室のスペースで行った。検査の始まった2022年1月頃、山形県ではコロナへの不安と差別がまだ強く、市のイベントスペースでの検査には18名しか集まらなかった。しかし偏見や差別が薄らぎ、春休みで移動の機会が増えた2022年3月は検査数が653件に増えたと報告した。
そして検査以上に電話対応が日常業務に影響を及ぼしたと共有した。問い合わせが最も多かった内容は抗原検査とPCR検査の違いであり、対策としてホームページに情報を載せたが効果はあまり得られなかったという。
最後に人口10万人あたりの感染者数のデータで山形県が上位に位置するのを示しながら、シンポジウム当日もラゲブリオの処方を受け付けたこと、10人ほどが検査に来ていることを報告し、「まだまだ戦いは続く」と語った。
4.「薬局がワクチン接種会場になり、薬剤師がワクチン調製した経験について」「医薬品の供給不足について」
最後に門下鉄也氏より薬局でワクチンを調製しワクチン接種を行った経験、医薬品の供給不足の2つのテーマについて報告がなされた。
ワクチン調製時のリスクマネジメントに関して、異物混入防止のためクリーンベンチの使用や注射針の刺し方の工夫、希釈ミス防止のため調製後のビンにはマジックで印をつけたなど具体例を紹介した。
厳密な時間管理のために、ワクチンと使用期限(時刻)とロットがリンクするよう付箋でメモをつける、訪問診療先での接種スケジュールを事前に確認し、接種時間に合わせてワクチンを調製するなどの対策を行った。
ワクチン専用冷凍庫の温度をスマートフォンアプリと連動させ、異常値が出ると通知がくるよう設定、換気で接種会場となる薬局の室温が上昇するため、調製後のワクチンも温度計で計測するなど温度管理も徹底した。移動時には保冷剤を入れたクーラーボックスを使用したが蓋を開けると1~4℃上昇、閉めても下がらないことを確認し、訪問先ごとに保冷バックを用意しなるべく蓋を開ける時間を短時間にするよう指導した。
さらに接種前の問診で併用薬やOTC、サプリメントなどの使用状況、服用後フォローの情報などを医師に共有し、より安全にワクチン接種できるように努めたと述べた。
医薬品の供給不足については、第7波流行中の2022年7月頃から出荷調製、出荷停止、販売中止が増加し、通常業務に加え欠品連絡の整理、不足薬の郵送など時間のロスとコスト増加がみられたと述べた。コロナの治療に関係しない医薬品も次第に入手困難になり、患者や他の医療従事者からの理解が得られない問題も報告した。
医薬品供給の偏在もみられ、地域の近隣薬局や全国の薬局と情報交換し、必死に融通し合う中で横のつながりの大切さを感じたとして報告を終えた。
以上の報告に見られるように新型コロナウイルス第7波、第8波の流行下でも、さまざまな活動を行ない、地域医療に貢献してきた薬局薬剤師の存在があった。座長の坂口眞弓氏は、これらの活動が地域住民に認められ薬剤師の価値が高まることを期待すると述べ、そして、今後コロナが落ち着いてもさまざまな医療の場で力を発揮していくようにと語り、シンポジウムを締めくくった。
筆者:株式会社エニイクリエイティブ MIL編集部