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「オンライン資格確認の現状と課題」(1)
2023.06.19
2023年4月に原則義務化となった「オンライン資格確認」。多くの医療機関・薬局で運用が始まっていますが、資格情報の誤登録などトラブルが明らかになっており、マイナ保険証に対する不安の声も聞かれます。そこで、オンライン資格確認の現状と課題について解説します。
【目次】
オンライン資格確認の普及状況
2023年4月に「オンライン資格確認」の原則義務化が始まりました。義務化から1カ月が経った5月28日現在の普及状況を確認すると、「顔認証付きカードリーダー」の申込数が21万496施設(義務化対象施設に対する割合が98.5%)、準備完了施設数が18万4359施設(義務化対象施設に対する割合が86.3%)、運用開始施設数が17万752施設(義務化対象施設に対する割合が79.9%)となっています。義務化を受けて、導入が急ピッチに進み、大半の医療機関・薬局で運用が開始できる状態が整っています。
(出典)厚労省HP,オンライン資格確認の導入について
オンライン資格確認の猶予措置
一方、現時点で義務化の対象外となっているのは、紙でのレセプト提出が認められている約4%の医療機関です。これらの医療機関に対しては、従来とは別の方法で資格確認ができるようシステム開発が進められており、2023年4月には利用が開始できる予定となっています。また、特定の理由で義務化期限に間に合わない医療機関に対しても、以下の図のように対応困難ケースごとに猶予措置が示され、半年間程度の猶予期間が認められています。
(出典)中央社会保険医療協議会 総会(厚労省,2022/12/23)より作成
マイナンバーカードの利用状況
さて、義務化から1カ月が経過して、実際にマイナンバーカードは利用されているのでしょうか。厚労省の資料によると、運用開始施設における資格確認の利用件数については、2023年4月分では合計数1億3164万7607件に対して、マイナンバーカードの件数が829万4226件で(6.3%)、そのうち病院では、121万7411件で(16.7%)、医科診療所では393万8344件(7.7%)、歯科診療所では118万8046件(12.0%)、薬局では195万425(3.0%)となっています。
医療機関・薬局がマイナンバーカードで資格確認を行える体制を整えているにもかかわらず、利用は1割に満たない状況となっています。内訳をみると、病院および歯科診療所でマイナンバーカードの利用が1割を超えているのに対して、患者が多く来院する医科診療所および薬局で割合が低い傾向が明らかになっています。
(出典)厚労省HP,オンライン資格確認の導入について
オンライン資格確認の誤登録の問題
オンライン資格確認の利用に当たり、医療機関・薬局において「該当資格なし」とコンピューター画面に表示されるケースが相次いで報告されています。「該当資格なし」とは、データベースに情報が登録されていない場合に表示されるエラーメッセージです。患者は来院時点で、マイナンバーカードと健康保険証を紐づけ、マイナ保険証として提示しているにもかかわらず、システム的にはエラーとなっているのです。
厚労省は5月12日、別人の情報を間違って本人の資格情報(加入している健康保険や自己負担限度額など)に紐づける「誤登録」が2021年10月から2022年11月までの期間に7300件以上見つかったと発表しています。
加藤厚労相は5月23日の記者会見で、「原因は事業主からの資格取得届に個人番号の記載がないものがあり、保険者において加入者の個人番号を取得する際に漢字氏名や住所を確認せずに取得するなど本来の事務処理とは異なる方法で行った」ことが原因としています。今後の対策としては、「全保険者に対して厚生労働省が示している基本的な留意事項とは異なる方法で事務処理を行っていなかったか点検を行い、該当するものがある場合には改めて5情報(漢字氏名、カナ氏名、生年月日、性別、住所)の一致などの確認を行っていただくよう要請する」としています。また、既に登録されている情報についても、「登録されているデータ全体について住民基本台帳情報と照合し5情報の一致状況を確認し、異なる個人番号が登録されている疑いがあるものについて、速やかにご本人に送付する等により確認する」としています。
オンライン資格確認のその他のトラブル
また、導入して間もないにもかかわらず、「機器が故障した」ケースもあるといいます。例えば、「顔認証付きカードリーダーが故障した」「オンライン資格確認の端末と電子カルテが連携できなくなった」という声が聞かれます。さらには、「オンライン資格確認が始まってから電子カルテが遅くなったように感じる」という声も聞ききます。
システムが故障した場合は、速やかにコールセンターに連絡して修理等の依頼を行うことになります。修理については、ほとんどのメーカーがセンドバック方式での対応であり、システム交換が必要になります。つまり、新しい機器が届くまでは利用できなくなるのです。故障時のトラブルシューティングについては、「不具合が解消するまでは、患者に健康保険証を出してもらい、現物を用いて資格確認を行ってください」としています。
(次回に続く)