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令和6年度改定の『個別改定項目①』

2024.01.30

1月26日に行われた中央社会保険医療協議会(中医協)の総会で、令和6年度診療報酬改定の「個別改定項目①」が示されました。この個別改定項目とは、いわゆる短冊と呼ばれるもので、改定される項目について、現行と改定案と比較して提示されるものです。

今回は個別改定項目の中から、主にクリニックにおいて重要と考えられる項目に絞り、解説します。

【目次】

  1. 初再診料等の評価の見直し
  2. 医療情報・システム基盤整備体制充実加算の見直し
  3. 医療DX 推進体制整備加算の新設
  4. 在宅医療における医療DXの推進
  5. 情報通信機器を用いた診療に係る評価
  6. 診療報酬における書面要件の見直し
  7. 書面掲示事項のウェブサイトへの掲載
  8. 疾患別リハビリテーション料の実施者別区分の創設
  9. 生活習慣病に係る医学管理料の見直し
  10. 特定疾患の対象疾患の見直し
  11. 地域包括診療料等の見直し
  12. 小児かかりつけ診療料の見直し
  13. 往診に関する評価の見直し
  14. 在宅時医学総合管理料及び施設入居時等医学総合管理料の見直し
  15. 通院・在宅精神療法の見直し及び早期診療体制充実加算の新設
  16. 一般名処方加算の見直し
  17. 検査、処置及び麻酔の見直し
  18. 今回取り上げた項目の一覧


1.初再診料等の評価の見直し

外来診療において標準的な感染防止対策を日常的に講じることが必要となっていること、職員の賃上げを実施すること等の観点から、「初診料」および「再診料」を引き上げるとしています。

また、近年の情報化社会の進展に伴うサービスの多様化に対応する観点から、「時間外対応加算」については、時間外の電話対応等に常時対応できる体制として、非常勤職員等が対応し、医師に連絡した上で、医師が電話等を受けて対応できる体制の評価を新設するとしています。

2.医療情報・システム基盤整備体制充実加算の見直し

 「医療情報・システム基盤整備体制充実加算」について、オンライン資格確認等システムの導入が2023年4月に原則義務化されたことを踏まえ、体制整備に係る評価から、初診時等の診療情報・薬剤情報の取得・活用にかかる評価へ、評価の在り方を見直すとともに、名称を「医療情報取得加算」に見直すとしています。

3.医療DX 推進体制整備加算の新設

オンライン資格確認により取得した診療情報・薬剤情報を実際に診療に活用可能な体制を整備し、また、「電子処方箋」及び「電子カルテ情報共有サービス」を導入し、質の高い医療を提供するため医療DX に対応する体制を確保している場合の評価として、「医療DX 推進体制整備加算」を新設するとしています。なお、電子処方箋ならびに電子カルテ情報サービス、マイナ保険証の実績については経過措置が設けられています。

4.在宅医療における医療DXの推進

 2024年6月から居宅同意取得型のオンライン資格確認等システムが開始予定であり、併せて電子処方箋、電子カルテ情報共有サービスを活用することにより、質の高い医療を提供することを目的に、「在宅医療DX情報活用加算」が新設されます。

 また、訪問看護ステーションに対しても、在宅患者訪問看護・指導料、同一建物居住者訪問看護・指導料及び精神科訪問看護・指導料について、居宅同意取得型のオンライン資格確認等システムが導入されることを踏まえ、初回訪問時等に利用者の診療情報・薬剤情報を取得・活用して、指定訪問看護の実施に関する計画的な管理を行い、質の高い医療を提供した場合に「訪問看護医療DX情報活用加算」を新設するとしています。

5.情報通信機器を用いた診療に係る評価

閉塞性無呼吸症候群に対する持続陽圧呼吸(CPAP)療法を実施する際の基準を踏まえ、「在宅持続陽圧呼吸療法指導管理」について、情報通信機器を用いた診療を実施した場合の評価を新設するとしています。

また、「小児特定疾患カウンセリング料」についても、発達障害等、児童思春期の精神疾患の支援を充実する観点から、カウンセリングの実態を踏まえ、要件及び評価を見直すとともに、情報通信機器を用いた診療を実施した場合の評価を新設するとしています。

 さらに、「情報通信機器を用いた精神療法に係る指針」を踏まえ、「通院精神療法」について、情報通信機器を用いて行った場合の評価が新設されるとともに、情報通信機器を用いた診療の初診の場合には向精神薬を処方しないことをホームページ等に掲示していることを要件として追加するとしています。

6.診療報酬における書面要件の見直し

 文書による提供が必要な個々の患者の診療に関する情報等を、電磁的方法(デジタル)によって、他の保険医療機関、保険薬局又は患者等に提供等する場合は、「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」を遵守し、安全な通信環境を確保するとともに、書面における署名又は記名・押印に代わり、本ガイドラインに定められた電子署名を施すこととが明確化されました。例外的に、「診療情報提供書」については、電子カルテ情報共有サービスを用いて提供する場合には、一定のセキュリティが確保されていることから電子署名を行わなくても共有可能とするとしています。

7.書面掲示事項のウェブサイトへの掲載

保険医療機関及び保険医療養担当規則等において、書面掲示(院内掲示)することとされている事項について、原則として、ウェブサイトに掲載しなければならないこととなります。

具体的な内容としては、「保険医療機関及び保険医療養担当規則」「食事療養」「保険外併用療養費に係る療養の基準等」「指定訪問看護の事業の人員及び運営に関する基準」「後発医薬品使用体制加算」などとなります。

 ホームページなどがないなど、すぐに対応できない医療機関もあるため、経過措置が設けられています。

8.疾患別リハビリテーション料の実施者別区分の創設

「疾患別リハビリテーション料」については、NDB・DPC データにより疾患別リハビリテーションの実施者ごとの訓練実態を把握できるように、リハビリテーションを実施した職種ごとの区分が新設されます。その結果、理学療法士、作業療法士、医師、それ以外(柔道整復師)に分けて点数が設定されることとなります。

9.生活習慣病に係る医学管理料の見直し

 生活習慣病に対する質の高い疾病管理を推進する観点から、「生活習慣病管理料」の評価及び要件の変更が行われます。また、名称も生活習慣病管理料(Ⅰ)とすることになりました。主な変更点としては、以下の通りです。

(1)生活習慣病管理料における療養計画書を簡素化するとともに、令和7(2025)年から運用開始される予定の電子カルテ情報共有サービスを活用する場合、血液検査項目についての記載を不要とする。あわせて、療養計画書について、患者の求めに応じて、電子カルテ情報共有サービスにおける患者サマリーに、療養計画書の記載事項を入力した場合、療養計画書の作成及び交付をしているものとみなす。

(2)診療ガイドライン等を参考として疾病管理を行うことを要件とする。

(3)生活習慣病の診療の実態を踏まえ、少なくとも1月に1回以上の総合的な治療管理を行う要件を廃止する。

(4)歯科医師、薬剤師、看護師、管理栄養士等の多職種と連携することを望ましい要件とするとともに、糖尿病患者に対して歯科受診を推奨することを要件とする。

 また、検査等を包括しない生活習慣病管理料(Ⅱ)が新設されることになります。

10.特定疾患の対象疾患の見直し

生活習慣病管理料が変更される一方で、「特定疾患療養管理料」の対象疾患から、生活習慣病である糖尿病、脂質異常症及び高血圧を除外するとしています。これは 処方料及び処方箋料の「特定疾患処方管理加算」についても同様とされました。

また、「特定疾患処方管理加算」については、特定疾患処方管理加算1を廃止するとともに、特定疾患処方管理加算2の評価を見直すとしています。また、特定疾患処方管理加算2については、28日超処方だけではなく、リフィル処方箋を発行した場合も算定を可能となります。

11.地域包括診療料等の見直し

かかりつけ医機能の評価である「地域包括診療料」および「地域包括診療加算」については、かかりつけ医と介護支援専門員との連携の強化、かかりつけ医の認知症対応力向上、リフィル処方及び長期処方の活用、適切な意思決定支援及び医療DXを推進する観点から、要件及び評価を見直すとしています。

 具体的には以下のような内容が新たに要件追加されることになります。

①介護支援専門員及び相談支援員との相談に応じること。担当医のサービス担当者会議への参加実績、担当医の地域ケア会議への参加実績又は保険医療機関において介護支援専門員と対面若しくはICT 等での相談の機会を設けていること。

②担当医が認知症に係る適切な研修を修了していることが望ましいこと。

③市区町村が実施する認知症施策に協力している実績があること。

④リフィル処方や長期処方に対応可能であることを、患者に周知すること。

⑤「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」等の内容を踏まえた適切な意思決定支援に係る指針の作成。

⑥患者やその家族からの求めに応じ、文書を用いた適切な説明を行うことが望ましいこと。文書の交付について、電子カルテ情報共有システムにおける患者サマリーの入力に代えることができること。

 これらの要件にすぐに対応することは難しいため、経過措置が設けられています。

12.小児かかりつけ診療料の見直し

「小児かかりつけ診療料」についても昨今の情勢を受けて見直しが行われます。具体的には、発達障害を疑う児の診察等を行うこと、不適切な養育にも繋がりうる育児不安等の相談に乗ること、医師が発達障害等に関する適切な研修及び虐待に関する適切な研修を受講していることが望ましいことを要件に追加するとしています。

また、新型コロナウイルスの検査の取扱いの変更及び処方等に係る評価体系の見直し等を踏まえ、点数自体も見直しを行うとしています。

13.往診に関する評価の見直し

往診料については、①往診を行う医療機関において訪問診療を行っている患者、②往診を行う医療機関と事前に往診に関する連携体制を構築している他の医療機関において訪問診療を行っている患者、③往診を行う保険医療機関の外来において継続的に診療を受けている患者、④往診を行う医療機関と平時からの連携体制を構築している介護保険施設等に入所している患者に対する往診以外の往診について「緊急の往診」に係る評価を見直すとしています。

14.在宅時医学総合管理料及び施設入居時等医学総合管理料の見直し

「在宅時医学総合管理料」及び「施設入居時等医学総合管理料」については、単一建物診療患者の数が「10 人以上19 人以下」「20 人以上49 人以下」「50 人以上」の場合の評価が新設されることになりました。また、訪問診療が多い場合の評価を見直すとしています。さらには、医療DX及び医薬品の安定供給に資する取組の推進に伴い、在宅時医学総合管理料及び施設入居時等医学総合管理料の評価を見直すとしています。

算定ルールが大幅に変更となることから、経過措置が設けられることになりました。

15.通院・在宅精神療法の見直し及び早期診療体制充実加算の新設

「通院・在宅精神療法」については、60 分以上の精神療法を行った場合と30 分未満の精神療法を行った場合の評価を見直すとしています。一方、精神疾患の早期発見及び症状の評価等の必要な診療を行うにつき十分な体制を有する医療機関が精神療法を行った場合について、通院・在宅精神療法に「早期診療体制充実加算」を新設するとしています。

16.一般名処方加算の見直し

「一般名処方加算」については、医薬品の供給不足の状況が続いていることに鑑み、供給不足等の場合における治療計画の見直しに対応できる体制の整備、患者への説明、院内掲示にかかる要件を新たに設けるとともに、評価を見直すとしています。

17.検査、処置及び麻酔の見直し

 外来診療の実態を踏まえ、効率的な検査、処置及び麻酔の実施を図る観点から、一部の検査、処置及び麻酔の評価を見直すとしています。具体的には、「眼底三次元画像解析」「細隙灯顕微鏡検査(前眼部及び後眼部)」「耳垢栓塞除去(複雑なもの)」「トリガーポイント注射」を見直すとしています。

〇今回取り上げた項目の一覧

項目

変更点数等

初再診料

・初再診料の引き上げ

・時間外対応加算の算定ケースの見直し

医療DX

・医療情報・システム基盤整備体制充実加算→医療情報取得加算

・医療DX 推進体制整備加算の新設

・在宅医療DX情報活用加算の新設

・訪問看護医療DX情報活用加算の新設

情報通信機器を用いた診療に係る評価

・在宅持続陽圧呼吸療法指導管理の情報通信機器を用いた診療を実施した場合の評価の新設

・小児特定疾患カウンセリング料の情報通信機器を用いた診療を実施した場合の評価の新設

・通院精神療法の情報通信機器を用いて行った場合の評価が新設

リハビリ

・疾患別リハビリテーション料のリハビリ職種ごとの区分の新設

生活習慣病

・生活習慣病管理料の見直し

・特定疾患療養管理料の対象疾患から生活習慣病の削除

・特定疾患処方管理加算1の削除

・特定疾患処方管理加算2のリフィル処方のケースも可能

かかりつけ

・地域包括診療料・地域包括診療加算の算定要件の見直し

・小児かかりつけ診療料の算定要件の見直し

在宅医療

・往診に関する評価の見直し

・在宅時医学総合管理料及び施設入居時等医学総合管理料の見直し

精神

・通院・在宅精神療法の60 分以上の精神療法を行った場合と30 分未満の精神療法を行った場合の評価の見直すし

・早期診療体制充実加算の新設

処方箋料

・一般名処方加算の見直し

その他

・検査、処置及び麻酔の見直し

眼底三次元画像解析/細隙灯顕微鏡検査(前眼部及び後眼部)

耳垢栓塞除去(複雑なもの)/トリガーポイント注射