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開業準備スケジュール(6)

2022.01.12

開業スケジュールについて、今回は「研修」について解説します。せっかく良い人材が取れても、この研修をおろそかにしては、開業の際にまとまりのない組織になってしまいます。研修は開業に向けて基礎を作り、ベクトルを合わせ、一致団結する組織とするために大変重要です。

 

研修(2カ月~1カ月)

クリニックの運営が今後順調に進むためには、「学習する組織」を作ることです。いくら良い人材でも、向上心を持って、成長し続けなければ、だんだんと劣化してしまいます。環境によって、人材は成長するかしないかが決まります。何事もはじめが肝心ですので、開業前にどんな研修をすれば良いかをお話しします。

 

理念の研修

最初に行うべきは、スタッフの考え方のベクトル合わせです。全スタッフを集め、まずは自己紹介をしていただき、その後院長から「理念」を伝えます。この理念は読み上げるだけでは、なかなか伝わりません。必ず過去のエピソードを交えて、具体的な内容を伝えてください。「なぜ、そのような理念にしたのか」というプロセスがあってこそ理解が進むのです。

次に理念を伝えたならば、その理念に対してどのように思うかを話し合ってみてください。例えば、「患者に寄り添う」という理念があれば、その意味について考えてもらうのです。患者に寄り添うためには、どんな行動を取るべきかを考えてもらうのです。理念は念仏のよ うに唱えるだけでは浸透しません。日々の行動の中で落とし込む必要があるのです。

この理念については開業後も、朝礼などで繰り返し取り上げる内容ですので、理念の理解を進めるための仕組みを取り入れることは、クリニック経営における重要な礎になると思います。

 

接遇・マナーの研修

医療はサービス業ですから、当然、「接遇・マナー」は非常に大切です。これについては専門のマナー講師をお招きして行うと良いでしょう。全スタッフが一流の接遇作法を身に着けることで、患者への印象は大きく異なります。あのクリニックは感じが良いと言われる原因は、根底に接遇・マナーの徹底があるのです。

競争が激化する昨今の状況では、患者からの支持を獲得することは必要不可欠です。また、クリニックのイメージは医師だけではなく、受付、看護師などスタッフで決まります。感じの良いスタッフは共通して、この接遇・マナーがしっかりしています。この部分は、開業前にしっかり行っておくことをお勧めします。

 

整理・整頓・清掃・清潔の研修

 医療現場は清潔でなければなりません。この意識を全スタッフに浸透してもらうためには、整理・整頓・清掃・清潔の研修を行うことです。こちらも専門の講師がいらっしゃるので、研修を依頼しても良いでしょう。

「整理」…必要なものと必要でないものとを分けて、必要でないものを捨てること

「整頓」…必要なものをだけを誰もがわかるように置き場を決めて表示すること

「清掃」…身の回りのものや職場の中をきれいに掃除すること

「清潔」…職場を衛生的に保つこと

これに「躾」を加えて5Sと呼ばれています。これから長く続く開業人生の中で常に清潔な職場であり続けるためには外せない研修ポイントだと思います。

 

電子カルテ等システムの研修

 クリニックには電子カルテや予約システムなど様々なシステムが導入されます。これらのシステムをしっかり使いこなせなければ、宝の持ち腐れになってしまいます。システムベンダーから研修が行われますので、研修風景を録画して、あとで見返せるようにしておくことが大切です。あとで見返して繰り返し練習し操作をマスターすることで、使いこなすというレベルに達するのです。誰かができれば良い、知っていれば良いという考えではなく、全スタッフが同じレベルに達するよう、繰り返し練習することをお勧めします。この繰り返す癖こそが、学習する組織を作るためには必要不可欠です。なお、レントゲンや内視鏡など医療機器についても、看護師を中心に同様の取り組みを進めてください。

 

ロールプレイング

研修が一通り終わったら、最後に実践さながらの「ロールプレイング」を行います。患者役を決め、実際の受付、診察、会計の流れを一通り行いましょう。シミュレーションが終わったら、問題点を確認する時間を取って「改善」できるところはないかを話し合ってください。まずは「やってみる」、「振り返る」、「話し合って」、「改善する」、このリズムを早期に身に着けることで、学習する組織へ近づきます。これを開業前に繰り返し行うことで、開業初日に問題が噴出するということも避けられます。また、開業後にも問題が起きるたびに、みんなで話し合って改善するようになることでしょう。