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開業準備スケジュール(8)

2022.01.21

開業スケジュールについて、今回は「各種届出」について解説していきたいと思います。クリニック開業時には、行政への届出や手続きが必要です。保健所や地域医師会と事前相談を行い、スムーズに手続きが進むように段取り・調整を行います。今回は主なものを解説しますが、それ以外にもクリニック開業にあたっては多くの提出書類がありますので、コンサルタントなどにしっかり相談して、準備を進めてください。

 

保健所と消防署との事前相談

クリニックの建築施工を担当する「設計事務所」や「建設会社・ハウスメーカー」は、内装図面が確定した段階で、開業場所を管轄する消防署や保健所へ図面を提出し、この内容で進めて良いかを事前相談します。この事前相談は、後の「保健所の立ち入り検査」で指摘を受けないように、根回しをしておくというイメージです。もし、保健所の立ち入り検査で、大きな修正事項があれば、その内容をクリアするために、再工事が必要となりますので、事前に打ち合わせをしておくことは大切です。再工事の内容によっては、開業時期を延ばさなければならない事態になりかねませんので慎重に進めていきましょう。

また、クリニックの責任者である院長は、施設の管理者として「防火管理責任者」の資格が必要です。この資格を取得するには、消防署が指定する講習会に参加し、最終日の確認テストに合格しなければなりません。

 

保健所の「立ち入り検査」

保健所の「立ち入り検査」は、医療法第25条の第1項に定められており、通常は、開設時(通常、開設1カ月前)とその後定期的に行われます。立ち入り検査のチェック項目は、厚労省による基準が示されており、これに従って各自治体が立ち入り検査要綱を作り、当該要綱に則って検査を実施しています。チェック項目については、各自治体のホームページにたいていありますので、参考になさってください。

保健所の検査が終われば、開業場所の管轄保健所に「診療所開設届」を提出します。一般的には、開設届は開設後10日以内に提出しなければならないとされています。

 

社会保険医療機関指定

クリニックが保険医療機関になるためには、保険医療機関として指定を受けなければなりません。この指定がなければ、保険請求はできません。「保険医療機関の指定申請」は、開業場所を管轄する厚生局に保険医療機関の指定申請を行います。また、保険医療機関の指定開始日は地域により異なるので、その地域を管轄する厚生局に事前に問い合わせて確認するとよいでしょう。開業日から逆算して書類提出の期限がいつになるのか、必ず事前に厚生局に確認してください。

 

医師会の挨拶・入会

まず、医師会に入るか、入らないかは院長が決めることなので、そこには言及しません。特定健診や地域の学校医、最近ならば新型コロナのワクチン接種などは、医師会が窓口となっていることが多いようです。医師会の加入を考えているならば、その地域の医師会に所属している先輩・後輩・友人の医師にお聞きになるのが一番だと思います。

開業予定地が決まり工事が始まる際に、近くのクリニックや医師会には一度はご挨拶に伺った方が無難でしょう。遅くとも着工時にはご挨拶を済ませておくことをお勧めします。近くのクリニックにとっては、仲間でもあり、ライバルでもあるのです。そのような先とのバランスをとるためにも、事前に挨拶をしておくだけで、その後のことがスムーズに進みやすくなるものです。

医師会の入会は、クリニックの開設届を提出した後になりますが、書類は事前にもらうことが可能です。地域によっては推薦状が必要な場合もありますので、事前に医師会事務所を訪問して確認しておくと良いでしょう。その際、「医師賠償責任保険※」についてパンフレットが渡されます。同保険は、医師会の加入と同時に付加されます。

※日本医師会医師賠償責任保険:会員が安心して医療活動に専念するための賠償責任制度。対象となる事故は、医療行為によって生じた身体の障害につき損害賠償を請求され、その請求額が100万円を超えるもの。支払限度額は、損害賠償金の年間総支払限度額(最高限度額)は、1事故1億円、保険期間中3億円。

(詳細)https://www.med.or.jp/doctor/sonota/sonota_etc/003368.html

また、医師会とは別に、都道府県ごとに「保険医協会」もあります。こちらは医師会と少し性格が異なり、請求事務やレセプト審査、監査対策、労務管理などの勉強会など、開業医に対する知識向上を目的に情報提供を行っています。