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電子処方箋の仕組み

2022.08.22

電子処方箋についての詳しいサイトを作りました。

2023年1月より始まる「電子処方箋」。運用開始まで半年となり、開始に向けて2022725日に厚生労働省が説明会を実施しました。電子処方箋は、政府が進める医療DXにおいて中核となる仕組みです。そこで、今回は厚労省の説明動画に基づき、電子処方箋について解説します。


電子処方箋の目的

「電子処方箋」とは、現在普及が進められているオンライン資格確認等システムのネットワークを用いて、紙の処方箋をデジタルデータにしてオンラインで運用する仕組みのことです。電子処方箋は、データヘルス改革の一環として進められてきたものです。データヘルス改革とは、超高齢社会が進み生産人口の減少が予想される我が国において、国民一人一人の健康増進、効率的な医療サービスを提供するために取り組まれているものです。

 医療情報を全国的にやり取りするためには、全国の医療機関・薬局を結ぶネットワーク基盤が必要です。そのため、202110月より「オンライン資格確認」の運用が本格的に開始され、現在急ピッチで普及が進められています。「オンライン資格確認」により、医療機関・薬局の資格確認業務が効率化され、レセプトに基づく過去の医薬品データを参照できるようになっています。医療機関・薬局に導入した「顔認証付きカードリーダー」や「ネットワーク回線」などは、今後の医療情報を連携するための基盤となるのです。

 20231月開始予定の「電子処方箋」は、オンライン資格確認の仕組みを利用して、処方箋の医薬品データを医療機関・薬局・患者間で連携できるようにする仕組みです。リアルタイムに医薬品情報が共有できるため、医療の質向上および医薬品の効率的使用につながるとされています。

 今後は、医療機関・薬局・患者間で、検査結果や病歴、手術歴と医療情報の範囲を拡大していき、最終的には診療録までもが共有できる社会が計画されています。

 

電子処方箋の仕組み

 「電子処方箋」は、オンライン資格確認の仕組みを基盤とした「電子処方箋管理サービス」を通して、医師・歯科医師・薬剤師間で処方箋をやり取りする仕組みです。

  • 医療機関の医師・歯科医師が処方箋を「電子処方箋管理サービス(以下、管理サービス)」にアップロードし、薬剤師がその処方箋を薬局のシステムに取り込み、薬を調剤します。
  • 薬局の薬剤師は薬を調剤した後、調剤結果を「管理サービス」にアップロードします。
  • 薬剤情報は「管理サービス」から、患者のマイナポータルや電子お薬手帳に蓄積されます。

電子処方箋の流れ

電子処方箋の流れについてプロセスを確認していきましょう。

まず患者は、マイナンバーカードを持参した場合、医療機関の受付で、カードリーダー上で過去の医薬品情報の提供に同意するか選択し、併せて処方箋の発行形態を、電子か紙を選択します。なお、医療機関が電子処方箋を導入している場合は、患者が健康保険証を持参した場合であっても電子処方箋を選択できます。マイナンバーカードの普及状況の遅れから配慮が行われています。

次に、医師は処方薬を確定するにあたり、電子/紙の処方箋に関わらず、「管理サービス」で重複投薬および併用禁忌のチェックを行うことが可能です。このチェックは、複数の医療機関をまたいでのチェックが可能となります。

 医師は、処方内容の確定後は、電子/紙の処方箋に関わらず、処方内容を含む電子

ファイルを電子カルテなどから「管理サービス」に登録します。登録後は、電子処方箋の場合は「処方内容(控え)」を、紙の処方箋の場合は従来どおり患者に渡します。電子処方箋でも紙が完全になくなるわけではありませんが、控えは原本ではありませんので、捺印は必要ありません。そのため、自動精算機やセルフレジから、処方箋の控えが印刷できるようになるのではないでしょうか。

 「管理サービス」に蓄積された医薬品データは、患者はマイナポータル経由でオンラインで閲覧でき、電子版お薬手帳アプリなどを用いて、引換番号と被保険者番号などを薬局に事前送付することで、電子処方箋の原本が事前に閲覧できるため、現在のように紙の処方箋を撮影してアプリ経由で画像を送付する手間が削減されます。

薬局では医療機関同様、カードリーダーで認証を行います。患者が医療機関で電子処方箋を選択した場合は、調剤対象の処方箋を選択することで、電子ファイルが薬局システムに取り込まれます。健康保険証の場合は、患者が引換番号を薬局に提示し、薬局が引換番号と被保険者番号などを基に薬局システムに処方箋を取り込みます。紙の処方箋については、従来どおり受付に提示します。

処方箋の電子ファイルを薬局システムに取り込むタイミングで、「管理サービス」で重複投薬・併用禁忌チェックを行い、その結果も併せて取り込みます。調剤後は、調剤内容を含む電子ファイルを「管理サービス」に登録します。

 

利用者を証明する仕組み

これらの仕組みを安全に運用するためには、なりすましなどが起きないように、システム利用者の証明(エビデンス)が必要となります。患者は「オンライン資格確認」において、マイナンバーカードや健康保険証で証明が可能ですが、医師・歯科医師・薬剤師においても「HPKI」という仕組みを用いて証明する仕組みが想定されています。

HPKIとは、Healthcare Public Key Infrastructureの略で、医療現場において公的資格の確認機能を有する電子署名や電子認証を行う基盤のことです。現在は、日本医師会、日本薬剤師会、医療情報システム開発センターにおいて、医師等の資格確認を行うためのHPKIカードを発行しています。医療機関・薬局では、電子処方箋の開始に当たり、HPKIカードの申請も必要となります。

電子処方箋についての詳しいサイトを作りました。