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対人業務強化戦略①~かかりつけ薬剤師で他薬局との差別化を図る! (患者様目線、患者様満足度(CS)の重要性)

2022.08.29

薬局での対人業務を強化するために役立つ情報を5回にわたってご紹介します。

  1. かかりつけ薬剤師で他薬局との差別化を図る!〜患者様の目線、CSの重要性
  2. トレーシングレポートを磨き上げる!
  3. 処方箋単価を上げる!〜地域支援体制加算、かかりつけ薬剤師指導料加算など
  4. オンライン服薬指導を活用する!
  5. 小売りを極める!〜AISASモデル、カスタマージャーニーなど。

今回のテーマは、『かかりつけ薬剤師で他薬局との差別化を図る!〜患者様の目線、患者様満足度(CS)の重要性』です。

まず、『差別化』を考える時には、全ての患者様に選んでもらうことは難しいことですから、メインターゲットとなる患者様に何を提供(提供価値)するのか?を考えていく必要があります。なお、全ての患者様に選んでもらう薬局づくりは、理想としては良いですが、残念ながらどの患者様の心も掴めないことが多く、メインとなるターゲット作りは大変重要です。ここは大きなポイントですから覚えておいて下さい。今回は、処方箋枚数の大部分を占める70歳以上の高齢者に対して、ライバルと差別化した薬局づくりをするための方法をまとめていきます。

 

(1)70歳以上の患者様の傾向を知る

患者様がどのように処方箋提出薬局を選定しているのかを確認する必要性があります。患者様(お客様)に求められている店舗を知ることで、目指す形が決まります。

(出典:かかりつけ薬剤師・薬局に関する調査報告書20183月)

 

この図表からは、『特定の1つの薬局に処方箋を持ち込む層』と『処方元に近い薬局に処方箋を持ち込む層』が多いことが読み取れます。ただし、この数値は全ての処方箋枚数を分母にしたデータとなりますので、次に患者年齢階層別のデータで詳細を確認します。

(出典:かかりつけ薬剤師・薬局に関する調査報告書20183月)

 

この図表から読み取れるのは、『どこの病院・診療所を受診しても特定の1つの薬局に処方箋を持ち込む層は年齢が上がるごとに増加する』ことが読み取れます。そのため、70歳以上の高齢者では、門前以外の薬局に処方箋を持ち込む傾向が他年代より強いことが読み取れます。

(出典:かかりつけ薬剤師・薬局に関する調査報告書2018年3月)

 

患者様の年齢が上がるに従い、利用する薬局の選定方針として、『勤務地から近いから』、 『受診している病院・診療所から近いから』との回答は一定程度減少しています。

 

一方で『信頼できる薬剤師がいるから』、『いつでも電話相談等の連絡が可能だから』、『一般用医薬品や介護用品なども含めて、様々な相談に応じてくれるから』との回答が一定程度増加しており、背景には受診診療科数の増加等による相互作用の確認や新しく処方された薬の心配をするニーズがあると考えられます。

70歳以上の高齢者(多くの処方箋を持参してくれるお客様)において、3つの図表より読み取れることは下記の3つになります。

  1. 特定の薬局に処方箋を集める傾向が強まる。
  2. 特定の薬局として選択されやすいのは、対人業務能力の高い薬剤師が在籍する薬局。
  3. 特定の薬局は、門前薬局もしくは自宅から近い薬局。

 

(2)患者様満足度(CS)と従業員満足度(ES)は、業績(処方箋枚数)の先行指標

患者様満足度のことをCScustomer satisfaction)と呼びます。例えば、70歳以上の高齢者であれば対人能力の高い(信頼のおける薬剤師、人柄が良い薬剤師など)薬剤師が在籍することは、CSが高いことに該当します。

また、CSと対で考えられる指標が、従業員満足度であり、ESemployer satisfaction)と呼ばれます。文字通り従業員の満足度の指標です。

薬局のゴールの一つは患者様満足度を高めることで、業績(処方箋枚数の獲得向上など)に繋げることになるかと思いますが、CSES、業績は一般的に下記のような動きをすることが多いです。

著者作図

 

この図表のポイントは、CSESも、業績の先行指標として見ることができます。薬局に限ったことではありませんが、ビジネスでは満足度(CSES)と業績は、連動しやすい指標となっています。

さらに掘り下げると、CSを上げるための先行指標が、ESであることが多いです。

時系列でまとめると『ES⇅→CS⇅→業績(処方箋枚数の獲得など)⇅』ということになります。

経営目線では、ES及びCSは、未来の業績が見えやすくなり、未来戦略を立てやすくなります。

 

(3)CSの追求

業績と繋がるCSを高めるためには、大きく3つの方向性があります。

  1. (1)でご説明した対人業務としてのニーズに応えることです。例えば『信頼できる薬剤師』になるために、来局前から患者様の薬歴を睨めっこして、服薬指導時には患者様一人一人に合った対応策を準備する。『電話相談等の連絡』を取れる体制を患者様にお伝えしておくなどの、求められている対人業務を散りばめて対応することです。
  2. CSの独自調査を店舗ですることも重要です。70歳以上の高齢者の患者様のご要望は、厚生労働省の調査である(1)のアンケート調査が全国の数値となりますが、私がコンサルティングさせていただいている薬局様の店舗により偏りも出ています。特に店舗の形態(門前型、モール型、駅前面分業型など)は影響が大きい印象がありますから、店舗ごとで患者様の特徴を掴むことは重要です。なお、調査する時は、下図表にありますソリューション満足度や立地満足度も、患者様が薬局選択に与える大きな要因であるため、対人業務の質問だけでなく、項目に追加することがお勧めです。
  3. ESを調査し、満足度を上昇させていくことも重要です。時間がかかる場合もありますがESは、下図表な関係があります。ESが上昇すれば社内モチベーションの向上、離職率低下も見込めますので色々な良い効果が出ます。

著者作図

 

 

(4)かかりつけ薬剤師とCS

かかりつけ薬剤師制度は、患者様接点満足度を高める中心にある制度です。

かかりつけ薬剤師制度の良いところは、基本的には1人の薬剤師が長期間患者様をサポートすることです。なぜならば、長期間のサポートによって、薬物療法のことだけでなく、患者様の性格や生活環境なども見えてきます。

細部の情報がわかることで、服薬指導に深みが増し、他薬局との最大の差別化となります。患者様との信頼構築には時間がかかりますが、『患者様接点満足度の高い、かかりつけ薬剤師』にチャレンジする価値は高いといえます。

 

最後になりますが、薬局業界の潮流は、対人業務を強化する時代となりましたし、さらに強化されると思われます。この薬剤師の対人業務の評価は、患者様が判断することになります。そして患者様の評価は、それぞれの価値観、病状、家族構成等複雑に絡み合い、千差万別の回答となります。ですから、CSを定点的且つ、サンプル数を多く観測していくことが、地域で選ばれる薬局のコツです。CSCSを支えるESを活用しながら、店舗を活性化していくことは、間違いのない戦略といえます。是非有効活用してみてください。

 

著者紹介

鈴木 素邦 2004年城西大学薬学部卒業。2017年グロービス経営大学院経営研究科(MBA)卒。学校法人医学アカデミー薬学ゼミナールにて講師・商品開発・組織開発・マネジメント業務に従事。大手薬局、地域薬局、スタートアップ薬局にて薬剤師業務を経験。現在、有限会社クラヤ代表取締役。調剤薬局向け経営コンサルティング(クラヤコンサルティング)、人事評価システムの導入、処方箋単価向上、店舗開発、有料職業紹介業等のサービスを展開。

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