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ミトコンドリアへの作用を介する新機序の糖尿病治療薬
2022.09.05
ミトコンドリアへの作用を介する新機序の糖尿病治療薬
2021年9月、新しい作用機序の糖尿病治療薬としては、SGLT2阻害薬の発売以来、7年振りとなる新薬のツイミーグ錠(一般名:イメグリミン塩酸塩)が、世界に先駆けて発売されました。
糖尿病は、インスリン作用不足による慢性の高血糖状態を主徴とする代謝疾患群。経口血糖降下薬には、①血糖非依存的インスリン分泌促進薬〔スルホニル尿素(SU)薬、速効型インスリン分泌促進薬(グリニド薬)〕、②血糖依存的インスリン分泌促進薬〔DPP-4阻害薬、GPL-1受容体作動薬〕、➂インスリン抵抗性改善薬〔ビグアナイド薬(メトホルミン)、チアゾリジン薬〕、④糖吸収・排泄調節系薬〔α-グルコシダーゼ阻害薬(α-GI)、SGLT2阻害薬〕があります。
近年、糖尿病の発症機序であるインスリン分泌能や感受性の低下に、ミトコンドリア機能障害が関わっていることが明らかになりました。ツイミーグの作用機序は、ミトコンドリアへの作用を介する、膵β細胞における血糖(グルコース濃度)依存的インスリン分泌促進作用(膵作用)と、標的臓器である肝臓での糖新生の抑制、骨格筋での糖取り込み能の改善という2つの糖代謝改善作用(膵外作用)と推定されます。類似した基本骨格を有するメトホルミンには、頻度は低いものの、脱水や腎機能低下時に、「乳酸アシドーシス」という重大な副作用があります。ツイミーグの臨床試験では、乳酸アシドーシスは認められていません。ツイミーグのミトコンドリアに対する作用は、Complex I の阻害など、メトホルミンと共通する部分もありますが、Complex Ⅲ の活性回復など差違があるので、メトホルミンとはリスクが異なる可能性があるとされました。日本ではDPP-4阻害薬、海外ではメトホルミンが第一選択薬の位置づけです。ツイミーグは単剤療法だけでなく、既存薬との併用療法も可能です。ただし、インスリン製剤やSU薬、グリニド薬との併用による「低血糖」、メトホルミンとの併用による「消化器症状」の増加には注意が必要です。医薬品リスク管理計画書(RMP)には、腎機能障害患者での安全性、低血糖、消化器症状、乳酸アシドーシス、心血管系リスクへの影響の検討が記載されています。今後、腎機能低下時の安全性が確立されれば、インスリン分泌促進と抵抗性改善の2つの作用を持つツイミーグが、ファーストラインの選択肢になる可能性を秘めていると思われます。
商品名 |
ツイミーグ錠500mg |
一般名 |
イメグリミン塩酸塩 |
会社名 |
住友ファーマ株式会社 |
適応症 |
2型糖尿病 |
用法・ 用量 |
通常、成人にはイメグリミン塩酸塩として1回1,000mgを1日2回朝、夕に経口投与する |
重要な基本的注意 |
腎機能障害を有する場合、本剤の排泄が遅延し血中濃度が上昇するおそれがある |
妊婦 |
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には本剤を投与せず、インスリン製剤を使用すること |
食事の影響 |
食事の影響を受けない |
副作用 |
副作用:悪心、下痢、便秘 重大な副作用:低血糖(特にインスリン製剤、SU薬、グリニド薬との併用時) |
薬価 |
1錠34.40円 |
使用に際しては、添付文書を必ずお読み下さい。
糖尿病治療薬の低血糖リスクと体重への影響
分類 |
作用機序 |
低血糖リスク |
体重へ の影響 |
インスリン製剤 |
インスリンの補充 |
高 |
増加 |
SU薬 |
血糖非依存的インスリン分泌促進 |
||
グリニド薬 |
血糖非依存的インスリン分泌促進 |
中 |
|
チアゾリジン薬 |
インスリン抵抗性改善 |
低 |
|
DPP-4阻害薬 |
血糖依存的インスリン分泌促進 |
変化 なし
|
|
ツイミーグ |
血糖依存的インスリン分泌促進/ インスリン抵抗性改善 |
||
メトホルミン |
インスリン抵抗性改善 |
||
α-GI |
糖の吸収・排泄の調節 |
||
SGLT2阻害薬 |
減少 |
||
GLP-1受容体作動薬 |
血糖依存的インスリン分泌促進 |
糖尿病治療ガイドからの引用改変
この記事は…
大学病院で医薬品情報を担当していた薬剤師が、年に4回承認される新薬のなかから話題の新薬をピックアップ。その特徴や作用機序、必ず押さえておきたいポイントを分かりやすく解説します。
(筆者)
浜田康次 一般社団法人日本コミュニティファーマシー協会理事