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選ばれる高齢者施設になるには②

2021.10.28

選ばれる高齢者施設になるには②

株式会社スターパートナーズ代表取締役
一般社団法人介護経営フォーラム代表理事
脳梗塞リハビリステーション代表
MPH(公衆衛生学修士)
齋藤直路

    • 入居者のご家族が最も気にする立地条件

    今回のチェックポイントは、「環境・交通手段」です。すでに開設している施設の場合、これらの条件を変更するのは難しいですが、今後新しい施設を建設する、もしくは移転を考える際に、是非念頭に置いていただきたい項目となります。

    まず、施設に入居されている方が喜ばれることの一つは、お子様やご兄弟など家族の面会です。そのため、通うのに費用がかかる、もしくは時間がかかるという場所では、負担が大きく、足も遠のいてしまいます。立地条件としては、最寄駅からの距離や交通手段、駐車場があるかということも大切なポイントになります。駅から20分以上歩く場所で、バスの便が少ない場所では通いにくくなってしまうでしょう。若い子ども世代のご家族は車を利用しても、ご高齢の方は車の運転をやめてしまっている場合も多いからです。

    施設の周囲の環境も大切なポイントになります。豊かな自然に囲まれていても、周りにお店が一軒もない環境では、陸の孤島になってしまいます。要介護度が低く外出が可能な入居者の方にとっては、こうした環境では魅力がありません。交通の便が悪いために、積極的に外出する機会が減ってしまい、生活に張りがなくなってしまうことにもなりかねません。一方、自然が豊かな場所では坂や階段が多かったりもします。さらに、車道と歩道の分離がない道や国道で大型トラックの交通量が多い場所なども、施設を建てるにはあまり適さないといえるでしょう。

    • 居住空間を演出するためのポイント

    施設の周囲の環境に加えて、「施設内の居住空間」ももちろん重要なポイントとなります。入居希望者やそのご家族が見学時にもっとも注目をされるのは、実際に住む場所です。居室は狭すぎるのもストレスになりますが、高齢者にとってはあまり広すぎても使い勝手がよいとは言えません。お元気なうちは、お部屋にこもるより共有スペースでスタッフや他の入居者の方とお話しをしたり、リハビリテーションに取り組んでいただいたほうがよいですし、介護が必要になった場合でも、あまり居室が広すぎるとかえって使いにくいことがあるからです。

    また、最近はパソコンを使う高齢者の方も増えてきましたので、Wi-Fiなどのインターネット回線を整備していることが求められます。収納スペースや備品、ナースコールの場所、さらには窓からどのくらい日光が差し込むかなど、細かい点についてもチェックし、不備があれば改善しましょう。

    浴室やトイレの使いやすさも重要なポイントです。入浴やトイレはできる限りスタッフの助けを借りず独力でしたいと考える方が多いでしょう。手すりなどの設備を整えていくことが必要です。また、車イスでも出入りに不自由がない設計になっているでしょうか。トイレをカーテンで仕切っているケースも古い施設などでは見受けられますが、立ち上がる際などカーテンを引っ張って転倒し、骨折するような事故も起こっていますので、改善したほうがよいでしょう。

    共有スペースは、高級ホテルのロビーのように高級感を出す必要は必ずしもありません。長時間過ごせるような心地よさがあることが大切です。新聞や雑誌の最新号が並んでいたり、コーヒーなどが飲める設備があるのが望ましいでしょう。

    そして、全体を通じて清潔感があるかも大切です。特に忘れてはならないのは匂いです。掃除が徹底されていないと匂いが残っていたりします。ずっとそこにいると匂いは気づきにくいものですので、外部の人にチェックしてもらうなどして確認をするとよいでしょう。

    • 施設での過ごし方を通じた差別化を図る

    どの様な環境で過ごすことができるのかに加えて、その施設で暮らすと、どの様な生活を送ることができるのかについても、「選ばれる」施設を作る上でとても大切なポイントとなります。そのための鍵となるのは、施設で提供されるイベントやレクリエーション等の余暇活動です。

    老人ホームのリクリエーションというと、皆で童謡を歌ったり、塗り絵や風船バレー、地元の幼稚園や小学校との交流をイメージされる方がまだ多いようです。こうしたレクリエーションに参加することに抵抗感を覚え、施設に入りたくないという方もいらっしゃいます。最近では、カラオケ、絵画教室、書道教室、音楽教室、陶芸、落語、家庭菜園など多彩なプログラムを用意する施設も増えています。講師も外部の専門家に依頼するなど、カルチャーセンター並みのプログラムを提供している施設もあります。こうしたプログラムは、入居希望者へのアピールポイントになりますし、他の施設と差別化することもできます。今一度、プログラムの内容を検討してみるとよいでしょう。

     

    施設側、あるいは職員側の合理性を優先するがあまり、レクリエーションに半強制的に参加を促しているようなケースもたまに見受けられます。入居者の方が、ご自身の生活のペースに合わせて、こうしたプログラムに参加できるようになっていることも大切です。

     

    また、施設に入居しなければならない方でも、往々にして様々なコミュニティに属していらっしゃいます。外出が自由にできるのであれば、今までと同じような生活や活動を続けたいと考えられています。施設に入ることで選択肢が狭まってしまった、生活が単調なものになってしまったという印象にならない様、多彩なプログラムを用意しておくことは重要でしょう。

    • 施設外でも楽しめるレクリエーション

    施設内で参加するものだけに限らず、他にも、花見や紅葉見物、美術館見学、買い物ツアーなど、施設の外で行うものもあります。施設内での活動が充実しているとはいえ、外出が制限されている方にとっては、外出はとても楽しみなことです。そうした「施設外レクリエーション」の存在は、施設の魅力をより一層際立たせるための重要なポイントとなります。施設外での活動をおこなう場合には、できれば施設の近くで済ませるのではなく、遠出をするイベントも企画するとよいでしょう。ただし、外出は付き添いなどの手間も必要になります。ある程度、スタッフ側のマンパワーがないと積極的にはできません。

    クリスマス会など、入居者のご家族が参加できる行事を設けることも大切です。こうした行事を通して、ご家族とスタッフが交流を持てるようにするとよいでしょう。職員から積極的にご家族に話しかけ、交流を持つようにしていきましょう。普段なかなか話せないようなことでも、楽しい時間を共有してリラックスした雰囲気であればお話しいただけるでしょう。

    また、家族参加のイベントは、入居者のご家族同士が交流できる機会にもなり、お悩みや心配事などの情報交換ができる場となります。いろいろなコミュニケーションが図れるよう、配慮したイベント内容にしていくと良いでしょう。