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令和時代の人材戦略~人材採用もDX化している~

2022.10.13

人材不足への対応にはイノベーションが必要

2022年9月に厚生労働省より「令和2年版厚生労働白書」が公表されました[]。「令和時代の社会保障と働き方を考える」をテーマに、2040年を見据えた中長期によった内容となっています。

その中でも、福祉分野における人材不足について言及されています。2040(令和22)年に必要となる医療福祉分野の就業者数については、需要面から見ると1,070万人(就業者総数の1820%)程度と見込まれるとしながらも、供給面も勘案した場合、経済成長と労働参加が適切に進んだとしても974万人(同16%)としています。現状のままだと、100万人近くの人材不足が発生するとされています。

 

「令和2年版厚生労働白書」より []

 

労働人口に対する割合も、2018年時点では826万人就業者全体の約8人に1人だったものが2040年には最大1,070万人の約5人に1人へと大幅に上昇する試算となっています。これに対し「厚生労働白書」の中では、「医療福祉の現場の生産性を向上すること(医療・福祉サービス提供改革)によって、より少ない人手でも現場が回っていく体制を実現していくことが求められている」としています。

全就業者に対して12%程度だった医療福祉従事者の割合を20%にまで増やさないと人が足りなくなるという、構造そのものを大きく変えることが求められるという事実を前にすると、これまで通りの人材戦略を継続していくということの困難さが、より厳しく伝わるかと思います。これらを乗り越えていくためには、従来の技法から離れた、革新的な対応が求められると考えるべきでしょう。

 

人材戦略の見直し

見直すべきこととして挙げられるのは、人材戦略の在り方です。介護という仕事は高い専門性が求められます。そのため、従来の人材戦略上は、介護福祉士等の資格を持った方や、これまでに介護の仕事等の経験がある方に絞って、採用をされるという事業所も多くありました。

しかし、上記の様な状況を見ると、やはり今後はその様な対応を続けていくのは難しいエリアも多いでしょう。現在、人員構成を検討する上では、通常の介護職員の他に、外国人介護士や、介護助手といった人員の活用を検討していくことも必要となるでしょう。

 

スターパートナーズ社制作

 

上図の様に、中長期的な戦略を持って、社会環境の変化にどう対応していくかを検討していくことが重要です。

介護助手に関しては、全国老人保健施設協会による「令和 2 年度 老人保健事業推進費等補助金(老人保健健康増進等事業)」における「介護老人保健施設等における業務改善に関する調査研究事業」において、高年齢介護助手雇用について調査・報告しています[]。この中で、実際に高年齢介護助手雇用をおこなった事業者の実に90%が雇用に対し満足感を感じているとしています。高い専門性を持たない人員でも、活躍の場を設けることができるという示唆になるのではないでしょうか。

また、筆者も参加している、みずほリサーチ&テクノロジー社による「東北地方における介護未経験の高齢者人材等の確保及び業務分担に係る好事例事業者の取組の分析等に関する調査研究事業」において、モデルケースの調査・研究が公表されています[]。実際に介護助手を導入する際の参考となりますので、是非、ご一読いただけますと幸いです。

さて、介護助手の導入は、これまで介護職員が一律に担っていた「介護現場における仕事」のうち、専門性の高くないものを切り離し、ワークシェアリングをおこなうという発想のもとに進んでいます。実は、介護現場におけるワークシェアリングの波は、更に新しい形で発展してきています。それが、DXを活用したワークシェアリングです。

 

DXと介護ワークシェアリング

介護現場のワークシェアリングには、大きく2つの種類があります。一つは、高い専門性が要求される業務について、現場にいない専門家に遠隔で委託することができるというもの、もう一つは、インターネット上で介護を必要とする人と介護を提供する人をマッチングさせるというものです。

前者の一例として、24時間のオンライン相談システムが挙げられます。介護施設において夜間の医療や看護の専門的な相談は、人員体制の問題から、困難な場合も多いでしょう。また、看護師等によるオンコール体制を取っていたとしても、業務負荷やプレッシャーがかかってしまったりすることから、そもそもオンコールがある職場を避けるという看護師の方もいらっしゃいます。

それをオンラインのビジネスSNSで解決しようというサービスが、24時間のオンライン相談システムです。これは、施設側のスタッフとオンラインで医療や看護の専門スタッフを繋ぎ、専門性の高い質問にも回答していくというものです。いわばオンコールを外注することで、業務の効率化を図るというものです。高い専門性も担保されていますし、現場の業務負荷軽減にもつながります。このような取組みは今後、人材不足に悩む介護業界にとって非常に役に立つと考えられますし、介護サービスの質の向上に大きく貢献できるでしょう。

後者の、マッチングサービスについても、複数の種類のものが登場してきています。

まず挙げられるのが、介護の経験者と介護施設をマッチングさせるサービスです。例えば、施設において急な病欠等で人員不足が発生した場合、マッチングアプリ上に日時・業務内容・報酬・条件といった内容を盛り込んだ広告を掲載します。アプリに登録している方がその情報を確認し、条件が合致し、申し込みが完了すればマッチングするという流れになります。

もちろん、登録者側も事前に必要情報を登録していますので、例えば資格や経験年数等、施設側も条件をつけることが可能です。この様に事前に求職者の情報を登録することで、面接等の手間を省きつつ、直前でもスムーズなマッチングを実現しています。これまでの雇用、長期就労といった形ではなく、登録者側は介護の専門性を活用しながらスポットで働ける、施設側は急な人員不足にも対応できるという、新しい働き方が登場してきているといえるでしょう。

 

更に新しい介護ワークシェアリングの模索

先述したマッチングサービスは、あくまで介護職員として働ける、有資格者や経験者を対象としたものでした。まずは、この様な形のサービスが主流になるものと考えられていましたが、更に新しい形態のサービスも登場してきています。

介護助手の可能性については先述した通りですが、介護ワークシェアリングのサービスでは、介護福祉士等の介護の国家資格を持った人材だけでなく、このいわゆる介護助手のようにケアの周辺業務を担う人をいわば“介護事業のサポーター的な人材”を地域からマッチングするというサービスも登場しています。

これは、有償ボランティアという形態で、例えば散歩の同行や話し相手、配膳や片付け、中には趣味を活用したレクリエーションの担い手等、様々な形態での募集がされています。地域ぐるみで高齢者を支えていくという未来に向けて、新たな可能性を提示できるサービスとなる可能性を秘めています。

また、施設と働き手だけでなく、介護を必要とする人と介護を提供する人をつなぐサービスも登場してきています。このサービスでは、在宅で生活しているが介護保険を適用できない介護ニーズを持っている、そんな要介護の方に対して、介護福祉士などの介護の国家資格を持った人をマッチングすることが可能です。長時間の見守りや外出の付き添い、家事代行等、介護保険外の業務を依頼することができます。

オンラインのサービスでありながらも、求職者は直接の面談において人物をしっかり確認し品質を担保している点も強みです。事前にしっかりと自宅でサポートを必要としている方と情報交換をすることで、ミスマッチを抑えるように工夫されています。この細部まできちんと配慮されたシステムの開発には介護事業経験者や介護に関する専門的な知見を持つ方々が、介護業界や日本全体の課題を解決するために提供しています。

 

以上のように、介護業界における構造的な人材不足は深刻ではあるものの、新しい担い手の発掘や、新しいサービスの登場により、それを切り開く可能性も出てきています。今後もDX化によって介護業界の課題を解決するサービスが数多く登場するでしょう。これからも介護業界のDX化から目が離せません。

 


[ⅰ] https://www.mhlw.go.jp/stf/wp/hakusyo/kousei/19/index.html

[ⅱ] https://www.roken.or.jp/wp/wp-content/uploads/2021/04/gyomukaizen.pdf

[ⅲ] https://www.mizuho-rt.co.jp/case/research/pdf/r02mhlw_kaigo2020_07.pdf

 

株式会社スターパートナーズ代表取締役

一般社団法人介護経営フォーラム代表理事

脳梗塞リハビリステーション代表

MPH(公衆衛生学修士)

齋藤直路