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オンライン診療・オンライン薬局

2022.10.17

「アマゾンが処方薬のネット販売に参入する」と聞いてどのように感じるでしょうか。政府のデジタル化、そしてオンライン診療・服薬指導の大幅な規制緩和は、他業種・新興企業にとっては大きな参入チャンスを迎えており、既存のクリニック・薬局には、デジタル化を踏まえた戦略変更を求めています。


コロナ禍の患者ニーズの変化

長引くコロナ禍で「新しい生活様式(ニューノーマル)」が提唱され、手指消毒やマスク着用、3密対策(密集・密閉・密接)が恒常化しました。クリニックは院内感染の恐れから、安心で安全でなければ、患者が来院しない時代が到来しており、診療予約システムやWeb問診などの普及が進んでいます。そのような新たな患者ニーズの変化に対応するため、「オンライン診療」に取り組むクリニック、「オンライン服薬指導」に取り組む薬局が増えています。

アマゾン、処方薬ネット販売に参入

2022年9月5日付の日本経済新聞で、「アマゾン、処方薬ネット販売に参入」というニュースが掲載されました。同記事によると、アマゾン・ドット・コム(米)が日本で処方薬販売への参入を検討しており、中小の調剤薬局と連携し、患者がオンライン服薬指導を受ける新たなプラットフォームをつくる構想があるとのことです。この試みがスタートすることで、リアル店舗を重視するわが国の調剤薬局ビジネスの転換点となるのではないかとしています。

アマゾンが薬局業界に参入する背景には、コロナ禍で進んだ政府のデジタル化政策、オンライン診療・オンライン薬局の大幅な規制緩和が影響しています。

初診からオンライン診療が解禁、オンライン診療の恒常化

 2020年4月10日に新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響から、新型コロナウイルス感染症が収束するまでの期間に限り、初診から電話やオンラインによる診療を実施できるという時限的・特例的な要件緩和が行われました。また合わせて、オンライン服薬指導も解禁され、結果として、オンライン診療、服薬指導、そして処方薬の発送までが一気通貫で提供できる環境が整ったことになります。

この流れは、2022年4月の診療報酬改定でも踏襲され、コロナ禍で緩和されたオンライン診療をめぐる大幅な規制緩和の恒常化が進められています。具体的には、オンライン診療料が廃止され、初・再診料における「情報通信機器を用いた場合」に位置付けられ、初診料が251点、再診料が73点と、対面診療との差が縮小しています。また、特定疾患療養管理料など医学管理料についても評価が引き上げられており、政府はオンライン診療の規制緩和を進め、普及を進めようとしています。

図 オンライン診療の評価の推移

オンライン資格確認、電子処方箋の開始

 一方、厚労省はコロナ禍で露呈したデジタル化の遅れを取り戻すため、医療DXの基盤整備を進めています。2021年10月から「オンライン資格確認」を本格的に開始し、2022年4月の報酬改定でオンライン資格確認の導入に関する評価を行い、導入に係る費用も補助金でサポートを続けています。

厚労省は普及を加速させるために、2022年10月の臨時改定によって、報酬上の評価の見直しを行っています。従来の保険証の利用時よりも、マイナ保険証の利用時の方が、点数が低くなるように再編しています。2023年4月からは医療機関・薬局にオンライン資格確認を義務化し、患者側には将来的に保険証を廃止し、マイナ保険証に一本化する方針を打ち出しています。

オンライン資格確認は、政府が掲げる「全国医療情報プラットフォーム」の基盤となる仕組みです。オンラインで資格情報の確認・取得ができるだけでなく、薬剤情報および特定健診情報を医療機関・薬局は情報取得することが可能です。今後は2023年1月開始予定の「電子処方箋」の解禁を皮切りに、検査、病名、手術歴と情報取得の範囲を広げ、最終的にはカルテそのものを共有できる仕組みを構築しようとしています。

薬機法の改正で薬局の役割が変わる

 いま、医療のオンラインの流れは、調剤薬局の世界を大きく揺るがそうとしています。現在、約6万7000の調剤薬局が存在します。政府の「医薬分業」政策により、医薬分業率は7割を超え、毎年調剤薬局の増加が続いてきました。

2021年の薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)が改正され、2022年度の調剤報酬改定においても大幅な点数の再編が行われています。「薬機法」の改正では、調剤薬局の役割として、従来の調剤業務に加え、服薬指導業務を義務化し、オンラインでの服薬指導も正式に認めています。また、2022年度の「調剤報酬改定」では、調剤業務に関する点数を引き下げ、服薬指導業務を引き上げる点数の再編を行っています。

この改定により調剤薬局は、調剤業務は調剤ロボットの導入やタスクシフティングを行うなどして徹底的に効率化し、薬剤師の服薬指導(オンラインも含めた)の対応時間を増やす必要が出てきているのです。