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クリニックの電子カルテの運用管理

2022.11.16

 クリニックにおいて「電子カルテ」は、院内、院外の情報管理ツールとして中心的な役割を担っています。電子カルテを上手に活用することが、クリニックの運用において大変重要になっています。また、電子カルテ以外にもPACSや予約システムなど様々なシステムと連携するのが当たり前の時代となりました。電子カルテを取り巻く周辺システムをあわせて「電子カルテ等」と再定義して、院内の様々なシステムの運用管理を行う必要が出てきています。そこで、今回は、電子カルテ等の運用管理の進め方について話していきたいと思います。

 運用管理規定の整備

 電子カルテ等の運用において、まず「運用管理規定」を作成する必要があります。このひな形は、たいてい電子カルテメーカーがもっています。運用管理規定は、個別指導や監査などでも提示が求められますので、必ず作成してください。

この運用管理規定をもとに、規定と実際の運用のポイントをご説明していきます。

 

1 電子情報の範囲

これまで紙カルテで管理してきた情報は多岐に渡ります。電子カルテになると、電子カルテ・PACS・予約システム・Web問診・オンライン診療システムなど多岐に渡るシステム群のそれぞれの情報を管理することになります。まずは、電子情報の範囲を定義する必要があります。基本的な考え方は、電子情報は患者からお預かりする個人情報すべてとなりますから、それらを管理する場合、この運用規定にすべて盛り込むと良いでしょう。

 

2 システム管理者

システム管理者は、クリニックの責任者となりますので、たいていは院長となります。電子カルテの全責任を負うのは誰かという視点から決定すると良いでしょう。ただし、システムが苦手な院長もいらっしゃいますので、実質の管理者を別に決めておくことも重要です。責任者というよりは、管理運用の担当者という位置付けになります。

 

3 利用者(ID・パスワード)

電子カルテには運用を行う上で、3原則(真正性、保存性、閲覧性)を守ることが定められています。このうち、最も重要なのは真正性で故意の改ざんを防止するという項目です。そのため、いつ誰が記録作業を行ったのかという記録を残す必要があるのです。電子カルテでは利用者すべてにIDとパスワードを付与し、記録の責任の所在を明確にすることが基本的なルールとなります。この際、受付、検査といった部門IDを設定するケースがたまに見受けられますが、基本的には個人と紐づけるのが一般的となります。また、パスワードは定期的に更新することが義務付けられています。利用者の氏名、ID、パスワードを一覧にまとめ管理することが必要になります。さらに、入退職時の更新も忘れずに行ってください。

 

4 ハード、ソフトの管理

電子カルテはパソコン、プリンター、スキャナーなどのハードとそれを動かすソフトで成り立っています。クラウドの場合はアプリケーションという言葉が使われるようになっています。これらハード、ソフトは定期的な更新と買い替えが必要となりますので、それを管理するための仕組みが必要となります。

すべてのハード、ソフトをデジタルの台帳で管理して、いつでもその情報にアクセスできる状況を作り出す必要があります。最近では、ネットワーク機器(ルーター、HUBなど)もどんどん重要になっているので、院内のLANやネットワーク機器なども同様に管理していくと良いでしょう。

 

5 マニュアル・更新情報の管理

システムには必ずマニュアルが存在し、それはシステムが更新されるたびに変更が行われています。かつては分厚いマニュアルをメーカーから渡され、それを保管するという運用でしたが、最近はデジタルマニュアルが主流になり、管理がしやすくなっています。マニュアルや更新情報は、「どのようにアクセスするか」を全スタッフが理解しておくことが大切です。これは院内独自のマニュアルについても同様です。

 

6 教育と訓練

システム教育並びに訓練は、システム導入時には行われていますが、それを記録に残し、新規入職者のために活用するというところまでは検討されていないように感じます。スマホの普及、アプリの充実などから、動画の作成が容易になってきました。必ず、教育、訓練は動画として残して、いつでも見返せる状態を作り出しておくことが大切です。

 

運用管理規定に沿って実際に運用する

 このように運用管理規定は、作成して終わりではありません。運用管理規定に沿って実際に運用することでスムーズなシステム管理が行えなければ、作成しても意味がないのです。時代は確実に変わっていますから、できるだけ研修動画やデジタルマニュアルなどをうまく組み合わせて、情報の管理場所にいつでもアクセスできる体制整備を心掛けていただければと思います。