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メディカルクラークの運用(前編)
2022.11.14
電子カルテを導入する際、メディカルクラーク(医師事務作業補助者、以下クラーク)の運用を考えている、という相談が年々増えています。現在、病院ではクラークの配置に対して、診療報酬での評価(医師事務作業補助者体制加算)があり、医師の負担軽減に大きな効果が見られると高く評価され、改定ごとに点数が引き上げられています。残念ながら、診療所は有床診療所のみが算定可能で、無床診療所では算定できないのが現状です。現在、約3割の病院でクラークが導入されています。
その影響から、クラークによる電子カルテ運用が一般化してきているのではないかと考えます。そこで、今回は診療所におけるメディカルクラークの運用について解説したいと思います。
クラークの配置
クラークの導入目的は、医師の電子カルテの操作負担を軽減することにあります。もともと病院のクラーク業務は、医師の書類作成を代行する業務から始まったのですが、診療所では電子カルテの入力を代行するケースが多いようです。
医師の隣に座り、患者と医師のやり取りを見聞きしながら、カルテを仕上げていきます。カルテの代行入力ができるようになるためには、以下の3点が必要です。
- カルテの仕組み(SOAPなど)…カルテ記載ルール、医療用語、医薬品等の理解
- 電子カルテの仕組み…操作訓練、代行入力トレーニング
- クラークの仕組み…シミュレーション
カルテ作成に必要な一定の知識と、電子カルテ操作、クラークの動き方の理解が必要になるため、研修などを通してクラークを育成していくことになります。
クラークの効果
クラークを医師の隣に配置することは、パソコン操作が苦手な医師や、患者数が多く入力が追い付かないと考える医師にとっては、有効な方法だとされています。診療スピードを上げて、患者さんの待ち時間を減らしたいと考える医療機関には最適な方法でしょう。クラークを配置することで、医師は電子カルテの操作から解放され、患者さんの診察に集中できる体制が構築されるため、患者さんからも「医師が自分の方を向いてくれる」と評判が良いようです。
クラークは単なる速記者ではない
クラークを活用している診療所で共通しているのは、クラークは単なるトランスクライバー(速記者)ではなく、医師の右腕となって院内の情報連携の要となり、クラークは医師が診察するそばで、カルテの作成を進めます。例えば、ベテランのクラークは、医師が話している内容を速記のように全て打つのではなく、必要事項のみを要領よくピックアップして入力します。そのため、クラークはパソコンの入力が特別に速くなくても、十分に医師の診療スピードについていくことができるのです。この「必要事項を選んで入力する」スタイルこそが、クラークを活用するポイントだと思います。
医師とクラークの役割分担
クラークは教育を受けた医師ではありませんので、当然完全なカルテを作ることはできません。医師がクラークに期待するレベルになるには、多くの時間がかかります。
そこで、クラークの業務はカルテの下書きであると割り切り、あくまで最終責任者である医師が追記するというスタンスが大切だと思います。クラークに最低限どこまで任せるかの「線引き」が大切になるのです。
患者との接し方が変わる
現在の診療報酬制度では、無床診療所ではクラークを設置しても診療報酬点数の加算はありません。そのため、基本的には受付スタッフがクラークの役割を兼務することで、新たな人的コストの増加を防いでいます。
受付スタッフがクラークになると、どのような変化が見られるでしょうか。まず、医師とともに普段から診療に立ち会うことで、既往歴や家族構成など患者の背景が分かるようになり、患者との接し方が変わります。例えば、患者に話しかける動作1つを取っても、患者の心身状態を考慮して「左耳が遠ければ右側から話しかける」「患者の目線で膝をついて話しかける」など、良い印象をもたらす振る舞いができるようになります。
先回りができる、よく気が付くスタッフになる
また、医師のそばに日々いることで「医師がどのような診療を行っているか、どのように患者と接しているか」が分かるようになります。さらに、医師の診療スタンスを日ごろから見ているクラークは、徐々に医師の指示を先取りできるようになります。クラークはいつでも、相手の先回りをしようと考えた行動を取るため、医師にとっては非常に頼りになるとともに、患者にとっても「よく気が付く」スタッフとして評価されることでしょう。
クラークは院内のコントロールタワーに
クラークになる過程で診療所の業務フローを把握できるようになり、その結果、診療所の患者の流れをスムーズにしようとするコントロールタワーとしての役割を担うようになります。実際、ベテランのクラークの動きや言動を聞いたところ、「医師の右腕」として診療所を切り盛りする良きパートナーとしての意識が強く感じられます。このことから、クラーク運用を成功させる鍵は、医師の右腕となれる人材をどのように育てるかにあると感じます。
筆者:株式会社EMシステムズ EM-AVALON事務局
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