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コラムNo.11 計画と数値管理(1)

2022.12.02

薬局の経営においては、計画と日々の実績管理は重要だ。これはチェーン管理では常識であるが、個店経営管理においても重要な要素である。特に、薬局の所在する地域において、継続的に運営するための原資を担保するためにも大切な管理項目であることは言うまでもない。

 

薬局のオーナー(開設者)自ら現場に立つのであれば、直接的に関与することができるが、複数店舗を経営するのであれば、オーナーのみならず、店舗を管理する社員(ほとんどが管理薬剤師であろうが)も計画と実績の管理は必要である。

 過去、薬剤師としての業務において、こういった管理行為を嫌がる、あるいは業務ではないといった認識が多く、またオーナー側からすれば、調剤さえしてくれればよい、といった考えが主流であったのではないだろうか。

 しかし、店舗の管理とは、売上・利益を把握し、業績アップをするため、といった短絡的な反応は間違いである。薬局の管理においては、自分の管理する店舗(以下、「自店舗」と略す)の実態を把握することで、経営だけでなく運営上の強み・弱みを把握でき、改善点を見出すこと、それを計画的に改善することで、地域医療に寄与できることも必要である。

 本コラムでは、店舗の数値管理と活用法について、数回に分け述べてみる。

 

ベンチマークの重要性と利用

 

 自店舗の運営状況については、あらゆる事柄を客観的に測定できるように定量化することが必要である。ここで改めてベンチマークを説明すると、一般的には「基準」「水準」あるいは「指標」であり、比較する際の基準を表している。

 このベンチマークは、まずは後述する「定量化」した情報とともに、「定性的」情報も取り扱う「ローカルベンチマーク(企業の経営状態の把握・健康診断を行うためのツール)」(経済産業省)を参考としたい。

 

 経営者と管理者が把握すべき定量情報の中味

 

 自店舗で言えば、レセプトコンピュータから出力される日計表、月計表である。最近利用されている仕組みで言えば、BunseQ!(EMシステムズ社製)、PRESUS(プレサスキューブ社製)、Ph-NtMaster(PHC社製)、Musubi Insight(カケハシ社製)などのBIツールを利用すれば、さらに多角的分析や他社との比較も可能である。

 ここで着目すべきは、その傾向の理由・背景である。なぜそうなったか?を説明できなければ、それは理解したとは言えない。また、自前のデータだけでは理由を説明できないケースもありえる。たとえば、コロナウイルス感染症の増加により、患者の受診行動が変化した、などがある。

 冬季におけるインフルエンザ感染症や、処方箋発行元の診療科によっては、2~4月で季節性アレルギー疾患の影響で、処方箋単価や枚数の動きも変わる。

 経営側が把握し明文化すべき定性情報の中味

  先に説明したローカルベンチマークによると、表1の項目である。

 表1 定性項目一覧

①経営者
経営理念、ビジョン、経営意欲、後継者の有無などの状況

②事業

事業の沿革、企業の強み・弱み、IT投資・活用状況、生産性向上の取り組みなどの状況

③企業を取り巻く環境・関係者

市場動向や競合他社状況、顧客情報(新規・リピート)、取引先企業の推移、従業員の定着、金融機関との関係などの状況

④内部管理体制

組織・品質管理・情報管理体制、経営計画の有無や従業員との共有、研究開発体制、知的財産権の活用、人材育成の取り組み状況

(出典元:https://www.keieiryoku.jp/column/detail/?id=21

 

小さくとも薬局の経営は、所在する地域で「医療の提供」を継続することが第一である。また、自店舗で働くスタッフはその医療の提供者であり、受益者でもあり、また、労働者である。従い、自店舗がどのような理念の下で、どう医療を提供するか、提供し続けるか、知っておく必要がある。その意味において、管理者という立場では、表1の①②と、③④の一部が該当する。

 

ベンチマークのポイント

 

 定量データや定性データを眺めるだけでは、自店舗を管理している、できているとは言えない。それを、自店舗の運営にフィードバックすることができて、「管理できている」のである。

 本来、店舗状況のどういった状態が「よい状態」であるかは、開設者である経営者が決めておくものであり、単純に売り上げと利益が増える…ということではない。

 毎週、毎月、季節ごと(四半期ごと)のデータの動向、そして、年度ごとのデータの動向など、変動要因の分析とともに、計画対比について、表もしくはグラフで把握しておき、理解しておく必要がある。

 また、様々な取り組みを行っているのであれば、その効果を測定することも必要である。

チェーンであれば、個店ごと、複数店舗を束ねたエリアあるいはブロックごとでもベンチマークができるので、必ず行い、取り組みの進捗管理だけでなく、よい結果の成功要因を抽出し、横展開するなどに活用できる。