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2024年秋保険証廃止・マイナンバーカード一体化によるクリニックへの影響(後編)
2022.12.15
政府は、2023年4月に「オンライン資格確認の義務化」、2024年秋に「健康保険証の廃止」を打ち出しました。この政策により、クリニックの受付はどのように変わるのでしょうか。具体的なクリニックへの影響を探ります。
従来の保険の受給確認の方法
クリニックの受付では、「はじめて来院した際(新患)」と「毎月1回(再診)」、患者から保険証をお預かりし、電子カルテあるいはレセコンに保険情報を登録し、変更があった場合は修正が行われてきました。電子カルテには、保険証を確認した履歴を確認する機能がたいてい備わっており、それを上手に活用して、確認漏れを防止してきました。
現状の課題としては、患者が期限切れで資格が喪失している保険証を提示しても、受付は気付くことはできませんし、受付スタッフが登録を間違えたりすると、レセプト提出後、受給確認の誤りとして返戻になり、修正後に再請求する必要がありました。
また、保険証には顔写真がありませんので、その保険証が本人のものかどうか確認する術がなく、「なりすまし」の危険性もありました。
オンライン資格確認の確認方法
オンライン資格確認を導入後は、マイナンバーカードを「顔認証付きカードリーダー」に患者自らがかざし認証を行うことで、オンラインで審査支払機関のデータベースにリアルタイムでアクセスし、即時に最新の保険情報を確認することができます。
また、保険証の登録も簡単な操作で電子カルテに登録することが可能です。マイナンバーカードではなく、保険証の場合でも、券面の保険者番号、記号、番号、生年月日を入力すれば保険情報の取得、登録が可能となります。
マイナンバーカードを忘れた場合の対応
仮に、2024年秋に保険証が廃止された場合、基本的には全員がマイナンバーカードを持参するという想定になります。患者がマイナ保険証をお持ちであれば問題はないのですが、まだ患者がマイナ保険証に変更していなかったり、患者がマイナンバーカードを忘れたりした場合、新患の場合は、どのように対応すれば良いのでしょうか。
厚労省のホームページのQ&Aでは、マイナンバーカードを忘れた場合の対応として「健康保険証を持参している場合は、健康保険証をご提示ください。健康保険証も持参していない場合は、現行の健康保険証を忘れた場合の取り扱いと同様になります」としています。
現在と同様の方法であれば、一旦は無保険者として全額自己負担とし、次回マイナ保険証を持ってきた際に、改めて確認、保険情報の登録を行い、返金処理を行うこととなります。
一方、再診の場合は、患者に何らかの形で本人確認が行えれば、前回の保険情報にアクセスすることで確認が可能となります。現時点では、受付で目視による本人確認が認められていますが、現物(マイナンバーカード)がない場合は、患者に自らのマイナポータルにアクセスしてもらって、その画面をもって確認するという方法が考えられますが、かなりの手間であることが予想されます。患者が暗証番号などを忘れてしまった場合は、それも不可能となります。
クリニックの受付への影響
「マイナ保険証」の普及した世界では、保険証登録作業がほとんどなくなり、人為的なミスが減少し、その結果、資格間違い等の返戻の減少も期待できるとしています。一方で、受付の負担増も予想されます。
例えば、完全にマイナ保険証の一本化が完了していなければ、「マインナンバーカード」か「健康保険証」かの確認が受付の作業として追加されます。また、データベース上に不具合があった際にも受付の混乱が予想されます。例えば、オンライン資格確認等システムの対象外の制度であったり、医療保険者等が資格情報を登録していなかったりした場合が想定されます。
患者が操作を戸惑う際の対応も必要となるでしょう。例えば、薬剤情報や特定健診情報の閲覧に関する同意について、患者が疑問に思った場合は、改めて説明を行わなければなりません。これも受付の負担となります。
また、患者が多いクリニックでは、朝の混雑時に2列で対応するケースも見受けられます。これまでは保険証を預かるだけで良かったのですが、これからはクリニックに配布される顔認証付きカードリーダーが1台だけなので、受付の列は1列にせざるを得ず、認証待ちの列ができてしまうことが予想されます。対応としては、顔認証付きかカードリーダー等の追加が必要になります。
さらに、患者がマイナンバーカードの健康保険証利用の手続きが行っていない場合も、システムでは認証ができないために、受付は利用手続きのレクチャーを行う必要があります。この作業も受付の混雑につながる可能性があります。