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オンライン服薬指導実施事例報告から見る運用のポイント①

2023.01.10

改正薬機法により2022年に日本全国で実施可能となったオンライン服薬指導。

実際に対応を始めている薬局もあれば、動向を注視している薬局関係者も多くいらっしゃるのではないでしょうか。そのような中、まさに薬局の実施するオンライン服薬指導に関する調査報告がまとめられ、公表されました。

「医薬品医療機器等法に基づくオンライン服薬指導及び新型コロナウイルス感染症を受けた時限的・特例的措置としての電話等服薬指導の実施事例の収集」

https://mhlw-grants.niph.go.jp/system/files/report_pdf/%E5%88%86%E6%8B%85%EF%BC%91.pdf

これは帝京平成大学薬学部教授の亀井美和子氏を研究代表者とする調査で、

・2021年8月~2022年1月の間にオンライン服薬指導の実績のある10薬局へ行なったヒアリング調査

・2022年3月に無作為抽出の5000薬局を対象に行なったアンケート調査

・2022年2月に20~60代の消費者(年代ごと200人・計1,000)を対象にしたアンケート調査

の3つの調査を基にしています。

調査の目的としては、「今後薬剤師が患者の服薬期間中の薬学的管理を行なっていく中で、オンライン服薬指導を効果的に行なうための実施方法や、これらのことを適正に実施できる薬剤師に求められる取組等について検討すること」としており、このようにまとまった形での報告はまさに今後のオンライン服薬指導を実践していく上での有益な情報源であると言えるでしょう。

今回はまず、「10薬局からのヒアリング調査の評価」を紹介するとともに、特にシステム環境面の問題についての回答から見えてくる課題を探ってみたいと思います。

調査対象となった10薬局はいずれもオンライン服薬指導システムを導入しており(導入システムは各薬局で異なる)、次のような内容の調査を行っています。

【オンライン服薬指導に関して】

対面との違いについて/オンラインが良いと感じた点/上手く活用できた例/難しいと感じる点/問題を感じた事例/使用機器(システム)の機能・環境について/薬剤師の研修・身に付けておくべきこと/梱包・配送の問題点・改善点/啓発・活用について

結果として調査報告では概ね「オンライン服薬指導に肯定的な意見が多い」とされ、『オンラインの良い面として「時間や移動の利便性のほかに、マスクを外した状態で対話ができること、店舗よりも落ち着いた状態で対話ができる場合があること、映像を患者からも提供できること」が上げられました。また難しいと感じた点としては、「機器等の操作が多く挙げられたほか、吸入器・注射器等の操作、認知機能が低下している患者への説明、服薬指導への関心が低い患者への対応、処方変更等の疑義が生じた場合の対応、梱包・配送の手間、店舗業務との両立」などが挙げられています。

では回答内容から、具体的にシステムの機能や環境面での問題点についての回答を抜粋してみましょう。機能の工夫やシステム選択の参考になりそうです。

■「オンラインが難しいと感じる点」から

・オンラインはスマホの操作が難しい。出来る方は大丈夫。顔色を見る加工とかされると状態の確認は難しい

・ 吸入器の使い方、レバーを上げるなど手技を一緒にできないのは、難しい。

・ 画像の粗さやピントのずれにより、薬情や吸入指導のデモ機等の現物を見せるのは難し い。写真を撮って、画像を送る方が見えやすいだろう。

・ 実際はオンライン診療→オンライン服薬指導はやりやすいが、0410 対応のように TEL 診療からのオンライン服薬指導は難しい。通信機器のやり方等が難しい

・ スマホは持っていても、ネット環境が整っていないことがある。

画面越しで薬情や薬を見せるが、スマートフォンだと小さすぎて見えていないのではな いかと疑問に思っている。

恐らくパソコンだと同じ比率で見えているのではないか。→ 予め薬情や薬を届けられると説明しやすい

・ 1 人薬剤師(事務員なし)の店舗は、オンライン服薬指導中に別の患者が来局したとき に困る

・ 服薬指導の時間は変わらないが、梱包と伝票で、追加 10~15 分かかる。(最初は 30 分 かかった

■「使用機器(システム)の機能・環境について」回答から

・アプリに登録するときにクレジットカードの登録が必要であり、クレジットカードを持

っていることが必須。高齢者や無職の方には難しい

・システム上では、処方箋の受け取りが郵送か直接取りにくるのか分からず、病院との確

認に時間がかかる。処方箋の受け取りに関する病院の対応をシステムから確認できるようにして欲しい

・副作用の有無等を患者に確認できる機能があると、服薬指導がやりやすい。

・今は 2 つパソコンを並べてやっているが、システムと薬歴のシステムが連携していると更に良い。

・薬歴との連携、郵送に関する連携、電子お薬手帳との併用、病院との検査値もシームレスに連携できるようにして欲しい。

・病院向けに作られているシステムがあり、薬局で使用しやすくするには更なる改善が必

・画面上がどの位見えているのかが心配。あらかじめ、患者さんの方で印刷できる仕組みがあれば、手元で見える方が良い

・配送情報を電子薬歴、紙とで管理しないといけない。システム上で管理が行えて、電子薬歴との連携があると良い。

・ 患者さんと繋がった状態で、初回アンケートや処方歴を同じ画面で確認できるシステム である。LINE は一度画面を閉じないと他の情報が見にくい。

(以上抜粋)

これらのコメントは、今後薬局で運用を行なう上で留意すべきポイントとして参考になるし、またシステムを選択する上での機能を検討するヒントにもなるはずです。



筆者:株式会社エニイクリエイティブ MIL編集部