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  • #薬局経営

財務⇄戦略を理解しよう!

2023.01.27

今回は、お金にまつわる話「財務⇄戦略を理解しよう!」です。

 

👆このコラム内容について

(1)薬局のコスト構造

(2)貸借対照表(PL)の見方

(3)人への投資

1)〜(3)を読むことで薬局の財務から経営戦略が立てられるようになります。

 

(1)薬局のコスト構造

始めに、薬局のコスト構造を確認しましょう。

店舗にどのくらいの売上があり、どのくらいの経費が発生し、どのくらいの利益が生み出されているのか把握してみましょう。

事例をもとに考えてみたいと思います。

 

前提)1,000/月、処方箋平均単価4,800円(内訳:技術料2,300円、薬剤料2,500円)

薬剤師2人(23枚@薬剤師一人が対応する枚数。22営業日/月)、医療事務2

項目

金額

技術料(店舗収入)

230万円

薬価差益(店舗収入)

20万円

粗利益合計

250万円

薬剤師人件費(2人)

90万円

医療事務人件費(2人)

50万円

人件費(経費)合計

140万円

賃貸料、リース代、諸経費

50万円

間接部署費用

20万円

その他経費合計

70万円

経常利益(融資返済原資、臨時費用(採用費など)余剰資金)など

40万円

 

上表は、一例でお示ししています。

店舗によって、地域支援体制加算が取れているから技術料がもっと高く取れているケース、建物や土地の場所によって、金額の増減はあると思われます。自店舗の現状を確認してみてください。

間接部署費用は、数店舗を保有している場合など統括責任者の給料、事業オーナー取り分として記載いたしました。

店舗のコスト構造が見えると、一つずつの妥当性が見えてきます。妥当性がわからないときは、弊社のようなものにお声がけください。

 

👆薬局経営のワンポイント (コスト構造を考える)

●店舗毎のコスト構造を定期的に確認

一つ一つの細かい勘定項目は不要。例示したレベルで大枠を抑えておきましょう。

確認するタイミングは、年1回では悪い状況に陥っているときは、リカバリーするのが遅くなるケースがあるため、3ヶ月に1回はチェックしておくことがおすすめです。コストは生き物です。

 

●コストの原因を突き止める

適切なところに投資はできているか、不要なところに投資していないかを数値だけで終えずに、内容を考え直す必要があります。よくお聞きするは、残業時間が伸びる原因を経営側が把握できていないケースです。残業時間を減らすところに、焦点をあてるのではなく、残業につながる原因に焦点をあてて、対策を練ることがおすすめです。店舗責任者の定期的な研修やヒアリングは非常に重要なポイントになってきます。

 

●注意点

人件費は最も大きな経費ですから、適正化は重要です。

しかし、人件費削減は以下のリスクを持ちますので、細心の注意を払ってください。

①     「社員のモチベーション」と「粗利益」は高い相関を示し、粗利益低下の恐れがあります。

②     離職率が上がり、採用コストが上がります。

 

(2)貸借対照表(PL)の見方

顧問税理士契約を結んでおられる方がほとんどだと思います。しかし、顧問税理士に財務を丸投げにすると危険です。理由は、税理士は税金のプロですが、薬局経営はわかりません。薬局のビジネスモデルを分かりませんから、経営的な的確なアドバイスはできません。この機会に損益計算書(PL(Profit and Loss statementの略))、貸借対照表(BS(Balance sheetの略))などは、税理士さんのアドバイスはいただきつつ、薬局ビジネスの数値にご自身が変換できるようにしておきましょう。

👆薬局経営のワンポイント 財務の数値を薬局ビジネスに置き換える

薬局ビジネスを加味した貸借対照表(PL)の使い方

先程の事例(処方箋1,000枚@月の店舗)の数字をもとに説明します。

 例えば、この財務状況から赤字に転落するのは処方箋枚数が何枚に減った時でしょうか?

 損益分岐点は、「経常利益がゼロ」すなわち、「粗利益=経費」という状況です。

上図のように、その時の売上高を計算すると4,032,000円となります。

そうすると、768,000円(4,800,000円―4,032,000円)の処方箋売上が下がると赤字になることがわかります。処方箋単価(4,800円)で売上減少分(768,000円)を割ると、枚数(160枚)が出てきます。

つまり、この店舗では、毎月160枚の処方箋が減少すると、赤字転落となります。

 

皆様は、正解となりましたか?

一例を取り上げましたが、必要な能力は、財務諸表を薬局ビジネスに置き換えることです。勘定項目を一つ一つ覚える必要はありませんし、難しい計算式を覚える必要もありません。置き換えができれば、目標作りや撤退基準などにも使えることになります。

(苦手な方は、財務諸表に抵抗があるところから経営スタートをしている私が、丁寧に説明いたしますので、遠慮なく仰ってくださいね。)

 

(3)人への投資

診療報酬や厚生労働省発信の情報から考えると、対人業務や在宅業務にシフトしていく流れは避けられず「薬剤師の対人能力」が求められています。つまり、今後10年程度で、薬剤師の変革が求められています。

(参考)

対人業務①〜⑤の連載コラムは下記よりご覧ください。

 

経営者は、薬局の財務を成長させつつ薬剤師の変革をどのように行えば良いのでしょうか。

参考までに大枠の流れをワンポイントでまとめます。

 

👆薬局経営のワンポイント 薬局の財務を成長させる

●ステップ1

最初に財務基盤を強固にします。

どんな取り組みにもお金が必要ですから、財務基盤を固めることは最重要です。財務基盤を作るのは難しいと思われるかもしれませんが、処方箋の技術料(主に粗利益)は、中小薬局の方が高いですから、工夫の余地があります。(例)地域支援体制加算を取得など。

薬局の支払サイトなどを考えると、財務基盤を固める目安は、売上2ヶ月分以上の現預金の保有がおすすめです。

 

●ステップ2

次に「人への投資」です。これは、給料を上げるという意味でありません。

給料の平均額は「大手薬局<中小薬局」であると思います。重要なのは、持続して売上を上げることができるような人材を育成することです。「オリジナルサービスを作る土壌ができるようにする」「トレーシングレポート、かかりつけ薬剤師指導料の件数を競い合える環境になる」など、経営者だけでなく現場と共に考えて、創意工夫をしていくことが経常利益を上げることになります。

上図にありますように、同じ人件費であっても、従業員全体で経営課題を認識し、戦略を練れれば人の価値が上がるため、図は変形し経常利益は上昇します。

従業員も、経営課題を共に乗り越えると当事者意識が育まれ、働きがいにつながりますからお勧めです。

但し、正しい方向を向いていないと、成果に繋がらないため、経営者判断は要所で行うようにしていきましょう。

 

 

著者紹介

鈴木 素邦 有限会社クラヤ代表取締役

2004年城西大学薬学部卒業。2017年グロービス経営大学院経営研究科(MBA)卒。

学校法人医学アカデミー薬学ゼミナールにて講師・商品開発・組織開発・マネジメント業務に従事。大手薬局、地域薬局、スタートアップ薬局にて薬剤師業務を経験。

現在、有限会社クラヤ代表取締役。薬局向け経営コンサルティング(クラヤコンサルティング)、人事評価システムの導入、処方箋単価向上、店舗開発、有料職業紹介業等のサービスを展開。

YouTubeチャンネル(薬剤師そほうの薬局経営塾)

https://www.youtube.com/channel/UC_c5_QbVmChYgZ3VxsCI84w/featured