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外国人人材について②

2021.11.02

外国人人材について②

株式会社スターパートナーズ 代表取締役
一般社団法人介護経営フォーラム 代表理事
脳梗塞リハビリステーション 代表
MPH(公衆衛生学修士)
齋藤 直路

 

  • 「技能実習生」受け入れのメリット

 

 厚生労働省の「外国人雇用状況の届出状況について」によると、介護分野における外国人労働者数は2021年10月末時点で、41,189名に達しています[ⅰ]。世界的な新型コロナウィルス感染症の影響により渡航困難な事例が多数発生していますが、2019年10月末時点では、22,706名であったことから、それでも新型コロナウィルス感染症蔓延以前に比べて倍近くにまで増加したことになります。

 

特にこの中心となるのが技能実習制度であり、他にも外国人人材を受け入れるための様々な制度や在留資格の整備が進められていますが、今後も、技能実習制度は外国人介護人材受け入れのための主流であり続けるでしょう。では、外国人技能実習生を受け入れることのメリットとはどのようなものでしょうか。

 

実習生の受け入れをおこなっている施設の担当者にお話しをお聞きしました。多かったのが「職員間の連携が深まる」という声がありました。日々忙しく余裕のない現場だと、日本語も介護もおぼつかない実習生の受け入れは負担になりそうなところです。それが実際は、手助け必要な人材がくることで周囲の職員が積極的に支えようと動き、ケアの質の向上にも繋がったということでした。筆者が有識者委員として参加した厚生労働省老健局の調査事業「外国人介護人材の受入れの実態等に関する調査研究事業(2019年)」の調査結果によると、技能実習生を受け入れた結果「技能実習生の働く様子を見ることで、日本人職員の仕事に対する意識が高まった」「日本人職員の異文化理解が深まった」という声が上位を占めています[ⅱ]。

 

他にも、利用者にも評判が良い、真面目で仕事を覚えようと努力する、真面目にはたらくなど様々なメリットをお聞きしています。他にも、「技能実習生である間は定められた実習施設での実習(就労)が求められるので、少なくとも3年間は辞めない」「現地教育機関との関係ができれば人材を安定して紹介されるのではないか」と安定した人材確保を期待する声も聞かれました。恐らく、これが外国人人材に期待する最も大きな理由なのではないでしょうか。 

 

これはいずれも、一部正しいかもしれませんが、誤りもあります。

 

すでに世界中で介護・看護人材のニーズが高まっており、実習生にとっては日本だけが実習・就労先ではなくなっているからです。

 

弊社は新型コロナウィルス感染症の蔓延以前は毎年、海外視察ツアーを企画し、介護医療事業の経営者・幹部と一緒に現地の養成校等での意見交換をしていました。その実感からすると、収入、言語、入国ハードル、その他環境を総合した結果、どの国でも共通して日本の人気は3~4番手だと感じています。

 

「日本であること」そのものが働く理由になる時代は終わりました。今後は国際的にも「わざわざ自国を出て、働きに行く価値がある国・施設かどうか」を見られることになると考えられます。外国人技能実習生の受け入れを成功させるためには、働き手としてのイメージを新しくする必要があります。どれだけ魅力的な施設であるかを伝えるのが、日本人と同様とても重要になります。

また、技能実習生同士は独自のネットワークを持っています。実際に働いた技能実習生が満足しているかどうかも、将来の実習生候補の獲得のために、重要なポイントになります。日本人だけでなく、実習生にとっても働きやすい職場の構築をおこなうことが重要になるとお考えいただければと思います。

 

  • 外国人技能実習生受け入れの流れ

  

 「外国人技能実習制度」を使って人材を受け入れるためには「介護」固有の条件を満たす必要があります。1つが「日本語能力要件」です。技能実習生は入国時にはN4(日本語検定4級)、入国後1年の時点でN3(日本語検定3級)を合格する必要があります。日本語能力をクリアするには、現地の教育機関の役割が大きいことは以前のコラムでお伝えした通りです。

 

もう1つは「職歴要件」です。「日本において従事しようとする業務と同種の業務に外国において従事した経験があること」が求められます。日本語教育をしながら病院等で看護補助等を実施するケースが多いです。技能実習生を受け入れる際には「監理団体」という機関との関係も非常に重要です。監理団体は外国人技能実習生を受け入れ、傘下の企業等で技能実習を実施する機関です。営利を目的としない団体で、“組合”と呼ばれることもあります。現地の「送出し機関」とのやり取りや「地方入国管理局」との調整をおこないます。このため「技能実習」 の在留資格を得る手続き上、重要な役割を担っているといえます。

 

「介護」職種の監理をおこなう監理団体は、5年以上の実務経験を有する介護福祉士等を配置する必要があります。そのため、他の職種に比べて手がかかるため「介護」は積極的に取り扱わないという監理団体も多く見られます。技能実習生を受け入れる場合に、地域に「介護」を取り扱う監理団体が見つからない、見つかっても意思疎通がうまくいかないなど、つまずく場合も多いです。監理団体は実習生の受け入れをしている限り、長期にわたってお付き合いする組織です。焦らずしっかりと意思疎通ができる団体を見つけるべきだといえます。どうしても良い団体が見つからないなど、困ったときは行政やコンサルタント等の専門家に相談してみるのも良いでしょう。

 

  • 技能実習生の来日後の支援

  

 監理団体が決定し、面接、所定の手続きを終えて技能実習生を受け入れた後も、継続して支援をおこなっていく必要があります。まず、技能実習生は、日本の文化やルール、生活に慣れていません。通勤や交通機関の使い方、買い物、ゴミの出し方、医療機関の受診など、生活指導をする上で教えなくてはいけないことが多くあります。国によっては、洗濯機や電子レンジの使用方法を知らない場合もあります。お金の国際送金の方法なども重要になります。上記は監理団体によっては支援してくれるところもあるでしょう。事前に確認しておくと安心です。

 

また、技能実習生同士のトラブルにも注意が必要です。技能実習生との意見交換の中で「帰国する先輩実習生が現金を家族に渡してくれる」「もっと稼げる仕事を紹介された」という話を聞くことがあります。金銭の授受はトラブルに発展することがありますし、別の仕事をしてしまうことは、在留資格取り消しの上、強制帰国となる可能性があります。技能実習生同士は、来日前に現地の教育機関等でつながりを持っていることが多く、来日後もSNS等を通じて連絡を取り合っている場合が多いです。そのため、気づかないうちにこのような話が進んでしまっているということも想定されます。

こういった生活上の注意点は、事前に「日本での仕事/生活マニュアル」等を作成し、わかりやすくまとめた形で繰り返し教育するとよいでしょう。また、困ったことがあったときにすぐに相談することのできる、専属の担当を設置しておくことも効果的です。

以上の2つの生活上の困りごと以外に、もう1つ実習生をサポートする必要があります。それは、「日本語学習」です。

技能実習生は、実習施設の配置直後の在留資格は「技能実習第1号」であり、日本語能力検定は少なくともN4に合格しています。しかし、「技能実習第1号」の在留期間は1年間であり、それ以上の期間の実習をおこなうためには、「技能実習第2号」の在留資格をとる必要があります。「技能実習第2号」の在留資格を取ることで、在留期間を3年まで延長することができます。

しかし、「技能実習第2号」の在留資格を得るためには、日本語能力検定のN3を取得する必要があります。もし取得できなければ帰国を余儀なくされてしまいます。技能実習生にとっては、来日までが日本語学習の大きな目標の一つとなっています。そのため、来日後も高いモチベーションを保って、さらに介護の仕事と両立しながら、独学で学習し続けるのは非常に難しいようです。日本語を教える担当を設置する、学習時間を設定する、学習目標を設定するなどの日本語学習に対する受け入れ側の積極的な介入が必要となります。

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[ⅰ] https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/gaikokujin/gaikokujin-koyou/06.html

[ⅱ] https://www.mizuho-ir.co.jp/case/research/pdf/r01mhlw_kaigo2019_06v3.pdf