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外国人人材について③

2021.11.03

外国人人材について③

株式会社スターパートナーズ 代表取締役
一般社団法人介護経営フォーラム 代表理事
脳梗塞リハビリステーション 代表
MPH(公衆衛生学修士)
齋藤 直路

 

  • 在留資格「特定技能」

前回は、日本語教育支援を継続的におこなっていくことの重要性について解説しました。今回は「技能実習第3号」に移行する時点で取得することが可能になる在留資格「特定技能」について解説します。

在留資格「特定技能」は2019年1月より新しく始まった在留資格です。14の産業分野が設定されており、そのうちの1つに「介護」があります。「特定技能1号」での在留期間は5年間です。在留資格「特定技能1号」の介護分野を取得するためには、国内外で行われる、介護技能評価試験、介護日本語評価試験の2つに合格する必要があります。2021年12月現在、これらの試験が行われている国は、日本国内に加えて、タイ・カンボジア・インドネシア・モンゴル・ネパール・フィリピンの6か国です。日本国内で「技能実習2号」を修了した実習生は、この試験を免除され「特定技能1号」の在留資格を取得することができます。「技能実習2号」を修了した実習生が「特定技能1号」を取得し継続して勤務をすることが期待されており、今後は「技能実習」から「特定技能」という流れも多くなる見込みです。

しかしながら、実習期間が終わったら母国に帰る人が大半ではないかと思われ、かつ、技能実習の時にはできなかった同業他社への“転職”も可能になるため、長期的に働き続けてもらうためには、根本的な職場の魅力アップが必要となることは間違いありません。特定技能については、2021年9月の時点では在留人数は3.953人にのぼります[ⅰ]。

なお、特定技能の在留資格には、在留期間の上限がなく、来日した本人の家族にも在留資格が付与される「特定技能2号」もありますが、現段階で介護分野での導入は決まっていません。このように、長期間にわたって外国人介護人材が活躍できる制度がだんだんと整いつつあります。

 

  • 在留資格「介護」

在留資格「介護」は2019年に始まった制度です。「介護」を取得すれば、在留期間の更新を回数に制限なくおこなえます。また、配偶者及び子が「家族滞在」の在留資格で在留することが可能です。これは、これまでに紹介した「技能実習」や「特定技能1号」とは大きく異なります。取得するための条件は「介護福祉士」の資格を取得することです。資格取得のために考えられるルートは大きく分けて2つあります。「養成施設ルート」と「実務経験ルート」です。

「養成施設ルート」は、介護福祉士の養成施設に入学し、卒業するルートです。養成施設を卒業した場合、介護福祉士の国家試験の受験は免除(令和9年度末までに卒業するものまで)されるため、確実に介護福祉士を取得することができるのがメリットです。また、卒業後5年以内に国家試験に合格するか、5年間続けて介護に従事することで、5年たった後も介護福祉士の資格を保持することが可能です。

 

しかし、「養成施設ルート」では、養成施設に通っている間は在留資格が「留学生」であり、週の労働時間が28時間に制限されてしまうことに加え、学費負担も生じるなど、金銭面でのハードルが高いといえます。学費等を施設側で貸し付けるなどの例もあるようですが、 資格を習得する前や在学中、卒業後でも、帰国や他の施設への転職を選ぶリスクは無視できません。在留資格「介護」を取得した方の働き方は、ほぼ日本人と同じと言ってよいでしょう。令和2年度は、養成施設の入学者のうち留学生の占める割合は34%となっています[ⅱ]。

 

また、弊社でおこなったヒアリング調査では、留学生が7割を占めている養成施設も存在しています。入学前に施設側から内定を得たような状態を経て入学してくる学生も一部いるようですが、養成施設の教員が自ら就職先を探すケースもあるとのことです。「養成施設ルート」に興味を持たれた場合は、近隣の養成校へ相談をしてみるのもよいかもしれません。

 

もう1つの方法は「実務経験ルート」です。「技能実習」や「特定技能」での3年以上の実務経験に加え、実務者研修を修了した上で、介護福祉士の国家試験に合格するというルートです。こちらは「新しい経済対策パッケージ」(平成29年12月8日閣議決定)において、「介護分野における技能実習や留学中の資格外活動による3年以上の実務経験に加え、実務者研修を受講し、介護福祉士の国家試験に合格した外国人に在留資格を認めること」とされて、令和2年4月1日に在留資格「介護」の上陸基準省令が改正され,介護福祉士の資格を取得したルートにかかわらず,在留資格「介護」が認められることとなりました。

「実務経験ルート」は、技能実習生として受け入れた生え抜きの外国人職員を在留期間の制限なく雇用できるということが大きな強みになります。反対に「養成施設ルート」とは違い、国家試験を受験し合格しなければならないことが最難関になります。同じく介護福祉士の取得を目指しているEPA介護福祉士候補者の試験結果を参考にするならば、第33回介護福祉士国家試験での合格率は、受験者全体が71%に対し、「実務者ルート」では46.2%と低い数字になっています[ⅲ]。EPA介護福祉士候補者の受け入れをおこない、かつ一定の合格者を輩出している施設では、いずれも法人を挙げての日本語教育および介護福祉士試験対策のバックアップをおこなっています。「実務経験ルート」を目指してもらう上では、個人の努力のみに頼るのではなく、組織的な支援体制を構築しておくことが必須となるでしょう。

 

  • 外国人人材の雇用について

本稿では、日本の介護現場における外国人人材について解説してきました。本日は、これまでの内容のまとめをおこないたいと思います。

<①外国人人材雇用のポイント>

外国人人材に実際に介護現場で働いていただくにはいくつかの課題があることをお伝えしました。最も大きな課題は「日本の介護を理解してもらう」ことの難しさです。多くの国ではまだ「お世話をする介護」や「抑制」が当たり前です。「自立支援」や「権利擁護」「認知症ケア」といった考え方をまずは理解してもらう必要があります。

日本で当たり前の「介護観」を伝えるためには、現地での教育機関中にあらかじめ伝えたり、「自施設の介護の考え方」を事前に資料としてまとめることが重要であることをお伝えしました。また、コミュニケーションが重要な職場であり、また長期滞在の要件となることから「N3」の取得ができる体制作りが重要であることをお伝えしました。来日後の業務負担を考えると「N4」ギリギリでは難しく、しっかり「N3」直前まで教育できる力のある教育機関とつながることが重要です。来日後も継続して日本語学習を支援できる社内体制を構築することも重要です。

 

<②選ばれる施設になる>

収入、言語、入国ハードル、その他環境を総合した結果、どの国でも共通して日本の人気は3~4番手だとお伝えしました。外国人人材は安価で雇用のしやすい働き手というイメージを持たれているとするとそれは間違いです。SNSの影響もあり、働き手同士のネットワークも発達しています。「日本のあの施設がとても良い」と、日本人同様、海外の候補生にも志願してもらえるような、魅力的な施設になることが重要です。

 

<③在留資格を理解する>

「技能実習生」「特定技能」「介護」という3つの在留資格について解説しました。「技能実習生」制度については、現在主流となりつつある在留資格になります。現地教育機関や監理団体選びが重要となることをお伝えしました。「特定技能」「介護」についてはまだ運用が始まったばかりの制度です。いずれも「技能実習」からの発展が見込める形態ではありますが、実態としては実習期間が終わったら母国に帰る人が大半であると思われます。

また、同業他社への“転職”も可能になるため、長期的に働き続けてもらうためには、根本的な職場の魅力アップが必要となります。

 

<④他分野の実習生の業種転換後の採用>

 新型コロナウイルス感染症の影響により、2020年に出入国管理庁より発表された、技能実習生に対して1年間の期間限定で他の業種で働くことができる特定活動の活用も視野にいれると良いでしょう。

 

外国人人材を雇用する上では、働きやすさを追求するという日本人と同様の取り組みと、学習を支援するという外国人独自の取り組みが必要になります。賃金や経費も決して安くはなく、負担も増える取り組みにはなってしまいます。しかし、今後の日本の人口動態を考慮すれば、介護現場における人材不足は危機的な状況にあります。戦略的視点を持って、早期にお取り組みいただくことが重要かと考えます。本コラムがそのためのヒントとなりましたら幸いです。

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[ⅰ] https://www.moj.go.jp/isa/policies/ssw/nyuukokukanri07_00215.html

[ⅱ] http://kaiyokyo.net/news/2020/000772/

[ⅲ] https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_17654.html

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