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診療所と薬局の連携

2023.05.01

2020年の新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)の感染拡大を受けて、政府はオンライン診療・服薬指導を解禁しました。また、その後の2022年の診療報酬改定において、オンライン診療・服薬指導の恒常化、そしてリフィル処方箋が解禁されています。これらの変更により診療所と薬局の連携のあり方も劇的に変わろうとしています。

【目次】

  1. 処方箋の診療所からのFAXが認められた
  2. 電話やオンラインでの服薬指導
  3. 2020年度改定で盛り込まれた医薬連携
  4. 2022年度改定による変更点
  5. まとめ

 


2020年4月に、新型コロナの感染拡大を受けて、政府は初診から電話や情報通信機器(以下、オンライン)での診療、処方、服薬指導を解禁することに踏み切りました。これらの変化は診療所との薬局の情報連携のあり方にも大きな変化をもたらそうとしています。

 

処方箋の診療所からのFAXが認められた

2020年410日の厚労省通知「新型コロナウイルス感染症の拡大に際しての電話や情報通信機器を用いた診療等の時限的・特例的な取扱いについて」で、「初診から電話・オンラインによる診療」が新型コロナウイルスの時期限定の解除となりました。

その際、処方箋の取り扱いについては、患者が薬局で電話やオンラインによる「情報の提供」及び「(服薬)指導」を希望する場合は、処方箋の備考欄に「0410対応」と記載し、患者の同意を得て、医療機関から患者が希望する薬局にFAX等により処方箋情報を送付することとしています。

 今回変更になった処方せんの取り扱いについては、

①医療機関から処方箋情報の送付を受けた薬局は、医療機関から処方箋原本を入手するまでの間は、ファクシミリ等により送付された処方箋を薬剤師法等における処方箋とみなして調剤等を行う。

②薬局は、可能な時期に医療機関から処方箋原本を入手し、以前にファクシミリ等で送付された処方箋情報とともに保管すること。

となっています。

 

電話やオンラインでの服薬指導

薬局において、薬剤師が、患者から服薬状況等に関する情報を得た上で、電話やオンラインで服薬指導等を適切に行うことが可能と判断した場合は、「電話や情報通信機器(オンライン)」で服薬指導を行うことが認められました。

ここでいう「服薬状況等に関する情報」としては、

① 患者のかかりつけ薬剤師・薬局として有している情報

② 薬局で過去に服薬指導等を行った際の情報

③ 患者が保有するお薬手帳に基づく情報

④ 患者の同意の下で、患者が利用した他の薬局から情報提供を受けて得られる情報

⑤ 処方箋を発行した医師の診療情報

⑥ 患者から電話等を通じて聴取した情報

以上6点を例示しています。電話やオンラインといった限られた情報での服薬指導を行うことから、十分な医療機関と薬局との情報連携が求められているのです。

また、注射薬や吸入薬など、服用に当たり手技が必要な薬剤についても、上記情報に加え、受診時の医師による指導の状況や患者の理解に応じ、薬剤師が電話や情報通信機器を用いた服薬指導等を適切に行うことが可能と判断した場合に限り可能となりました。

 2020年改定で新設された「オンライン服薬指導」は、実際の開始時期は9月からの予定となっていましたが、これを機に一気に電話並びにオンラインでの指導が可能となったのです。

 

2020年度改定で盛り込まれた医薬連携

 20204月の改定では、先に行われた薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)の改正を受けて、調剤薬局は「対物業務」から「対人業務」への変革を求める改定内容となりました。

結果として、服薬指導をはじめとした患者の管理・指導の比重を高めることが求められたのです。また、オンライン服薬指導についても、早期の実現が盛り込まれたことから「薬剤服用歴管理指導料 4 情報通信機器を用いた服薬指導を行った場合」と「在宅患者訪問薬剤管理指導料 在宅患者オンライン服薬指導料」が新設されました。

 

2022年度改定による変更点

 20224月の改定は薬局にとって、根本から仕組みを覆す大きなものとなりました。前回改定からさらに「対人業務」の重要性が増す形となったのです。

厚労省の資料によると、薬局の調剤業務は、①患者情報等の分析・評価、②処方内容の薬学的分析、③調剤設計、④薬剤の調製・取りそろえ、⑤最終監査、⑥患者への服薬指導・薬剤の交付、⑦調剤録、薬歴の作成などのステップから構成されているーとしています。このうち、①、②、③は「調剤管理料」、④、⑤は「薬剤調製料」、⑥及びその後の継続的な指導等は「服薬管理指導料」で評価すると、全体的な組み換えが行われました。

また、オンライン服薬指導についても、外来診療を受けた患者に対する情報通信機器を用いた服薬指導について、「服薬管理指導料」に位置付け、要件及び評価が見直されました。在宅患者に対する情報通信機器を用いた服薬指導についても、算定上限回数等の要件及び評価が見直されました。

 さらに、診療所と薬局の役割分担を進めるため、「リフィル処方箋」が解禁されました。リフィル処方箋は、症状が安定している患者について、医師の処方により医師及び薬剤師の適切な連携の下、一定期間内に処方箋を反復利用できる仕組みで、最大3回まで利用することができます。

 

「オンライン服薬指導」の20年改定と22年改定の比較

 

2020年改定

2022年改定

外来のオンライン服薬指導

【薬剤服用歴管理指導料】
情報通信機器を用いた服薬指導を行った場合 43

【服薬管理指導料】
情報通信機器を用いた服薬指導を行った場合
イ 原則3月以内に再度処方箋を提出した患者 45
ロ イの患者以外の患者 59

在宅のオンライン服薬指導

【在宅患者訪問薬剤管理指導料 在宅患者オンライン服薬指導料】57

【在宅患者訪問薬剤管理指導料 在宅患者オンライン薬剤管理指導料】

59点

 

まとめ

 薬局の役割が「対物業務(調剤)」から「対人業務(服薬指導中心)」に変更になり、オンラインでの服薬指導が全面解禁され、2022年からはリフィル処方箋が始まったいま、薬局と診療所の関係が重要になってきています。また、2023年1月から始まった「電子処方箋」によって、デジタルでのコミュニケーションが行われるようになり、従来型のアナログなやり方から刷新し、効率化が図られようとしています。

薬局は診療所のパートナーとして、従来型の医薬分業から医薬協業へ変化し、より密な関係構築が重要になろうとしているのです。診療所は信頼できる薬局と連携を重視し、ともに協力し合う時代が到来しているのです。